豊島美術館
瀬戸内海に浮かぶ島の1つ豊島、唐櫃港から小高い丘に登った場所に作られたのが「豊島美術館」です。
豊島美術館は、「水滴」をイメージさせるような形状の白い建築物です。
建築家・西沢立衛氏によって制作された、およそ40m×60m、高さ4.3mのシェル型コンクリート建築の美術館で、建物内部には芸術家・内藤礼氏による《母型》という作品が展示されています。
館内の床には直径2mmほどの小さな孔が186ヵ所に穿たれており、地下水が不規則に湧き出るようになっています。
瞬間的に湧き出た水は、押し出されるように小さな粒状に変化し、微風とわずかな起伏に導かれて漂い、微妙な傾斜角度で設計された床面をコロコロと小気味よく動いていきます。
鑑賞者は、あちこちでうごめく水滴の数々に視線を奪われ、あちこちで起こるその動きを追いかけながら、しばし床面に座わった状態で時を過ごしていきます。
湧き出る水滴が流れ、小さな水たまりを形成し、小さな水たまりが流れて別の水たまりと合流し、さらに大きな水たまりを作っていくような様子があちこちで繰り広げられていきます。
同時に、2つの開口部から届く風や、内部に注がれる光、周囲に生い茂る緑など、視覚や触覚、聴覚などを通じて自然と共生するような体験があります。
豊島美術館は、美術作品が複数展示されている通常の美術館ではありません。
この場所では、周囲の環境や時間の経過により変化していく状態を受け止める空間です。
静謐な場で刻まれる時の流れに、心が穏やかに整っていくようです。
豊島美術館は、神経を研ぎ澄まし、思考を鋭敏にするような場所ではありませんが、注意していないと見えない「隠れアイテム」が存在することはあまり知られていないようです。
事実、筆者も初めて訪れた時には全く気がつきませんでしたが、2度目に訪問した際、突如として明らかに視認出来た際、その事実に少なからず心の中の変化を感じました。
【1】3本の糸
隠された素材は、内藤礼さんの《母型》に関する作品クレジットを見ると、明らかになるでしょう。以下のクレジットを見ると、空間では気がつかなかった素材に気がつきます。
そのひとつが「糸」です。
2つの開口部には、誰の目にも明らかに映る「リボン」が揺らめいていますが、「糸」を簡単に見つけられる人はほとんどいないでしょう。広い空間の中ですから、いわゆる普通の糸を見つけるのは至難の業です。
しかし、湧き出る水や水たまりに気をつけながら美術館内を注意しながら彷徨い歩くうち、遂に見つけました!天井からぶら下がり浮遊する間違いなく糸を見つけた!!のです。
発見した糸は、赤、白(銀)、黄(金)、3本の糸でした。
光の加減によって、白は銀色に、黄色は金色に、色の見え方が変わるかも知れません。
本当に細い糸なので、注意して探さないと、赤色の糸でも見つけにくいと思います。
なお、筆者が発見した際、3本の糸は1〜2mの等間隔で一端を天井に固定され、もう一端を鑑賞者の視点に来るような長さでぶら下がっていました。
風に揺らめきながら浮遊するような3本の糸は、内藤礼さんからのメッセージが含まれているようで、心が動かされました。
【2】ビーズ
そして、作品クレジットに記載のある、もう一つの隠れアイテムが「ビーズ」です。
内藤礼さんの作品にしばしば登場する「ビーズ」ですが、隠れアイテムと認識しながら探しても、筆者は見つけることが出来ませんでした。
なかなか見つけづらい場所にあるようですので、気になる方は頑張って見つけて頂きたいと思います。
まとめ
豊島美術館に隠された隠された2つの隠しアイテム〜3本の糸とビーズ。
皆様は気になりましたでしょうか?そして、見つけられましたでしょうか?
いずれも、なぜその素材が使われたのか?という意味について、制作者である内藤礼さんからは明らかにされていません。
私たち鑑賞者は、現地でその小さな発見に触れたときの感情を、どのように受け止めて、消化していくか・・・?自身の心の変化に寄り添いながら、意味を紐解いていく楽しみもありそうです。
なお、館内にいるスタッフに聞いても、どこに何があるか?などについては一切教えてくれません・・・。
概要
豊島美術館
2020年7月11日(土)より、事前予約制(オンラインチケット制)を導入。
開館時間:
3月1日〜10月末日:10:00 〜 17:00(最終入館16:30)
11月1日〜2月末日:10:00 〜 16:00(最終入館15:30)
休館日: 火曜日(3月1日〜11月30日)火曜日から木曜日(12月1日〜2月末日)
※ただし祝日の場合は開館、翌日休館
※ただし月曜日が祝日の場合は、火曜日開館、翌水曜日休館
鑑賞料金: 1,570円 ※15歳以下無料
電話番号: 0879-68-3555
住所:〒761-4662 香川県小豆郡土庄町豊島唐櫃607