【若手ペインター】山本捷平(Shohei Yamamoto)とローラー作品《Reiterate》シリーズの魅力

山本捷平 Shohei Yamamoto

画家・山本捷平さんの人気シリーズ作品はローラーを使った特殊な手法で描かれる作品です。

ローラーの回転に伴って、映し出される図像は反復するほどにかすれていきます。
デジタル的に処理されるコピー&ペーストとは対照的に、アナログ的・身体的な表現方法を使うことで、不可避の変化や偶然性を取り込み、作品化しています。

山本捷平《reiterate -master-》116.7×91cm 2019年

ローラーによって反復されるイメージは、丁寧に下地処理された支持体へと転写されていきます。
残された絵の具の跡は、とても微妙で繊細な軌跡です。
繰り返す、反復するという意味を持つ「reiterate(繰り返す、反復する)」と名付けられ、山本捷平氏の人気シリーズとして、支持されています。

京都造形芸術大学院 修了展

山本捷平さんと初めてお会いし話をしたのは、京都造形芸術大学で行われた大学院の修了展でした。
筆者のコレクションしていた小谷くるみさんの修了作品も展示されると聞いていましたが、Instagramで目にしていた彼の作品も気になっていて、私にとっては都合の良い機会となりました。

京都造形芸術大学院修了展 展示風景より〜左が山本捷平さん、右は小谷くるみさん作品

山本捷平《reiterate -laocoonte-》2019年

宮津先生の講評もありました

※アトリエを使った展示〜京都造形芸術大学・大学院の修了展

KUAD ANNUAL 2019 宇宙船地球号

修了展の後、会場を変えて東京都美術館でも展示の機会がありました。
京都造形、片岡真実教授による学部生・大学院生の選抜展「KUAD ANNUAL 2019 宇宙船地球号」(2019年02月23日〜26日開催)です。

東京都美術館で開催時の「宇宙船地球号」展示風景

制作工程

山本捷平さんはこの春に京都造形芸術大学大学院を修了したばかりの若手作家です。
現在取り組んでいる「Reiterate(繰り返す、反復する)」シリーズは、自作のローラーを使ってキャンバス上にイメージを反復して表現する作品です。

左に立てかけられているのが自作のローラー
※京都造形大学院在校時のアトリエ

作品サイズに応じたローラーを作り、絵の具を落としてからキャンバスの上を転がします。
絵の具を支持体へのせていきますが、一発勝負なので相当に心拍数の上がる時間なのだそうです。

アトリエには作品と並んで制作メモが貼り出されていました。

大阪にあるアトリエに訪問して制作風景などを拝見してきました。

ローラーの図像は頭の中やメモ、PCで綿密に計算されます。

倉庫のような空間のアトリエでは大作の制作が進んでいました。

新シリーズの制作風景を動画で撮影させてもらいました。

アートアワードトーキョー

2049年6月5日~20日に開催された「アートアワードトーキョー 丸の内 2019」では、応募作品約11,000点の中から選出された25名の作家の一人に名を連ねておりました。

行幸通り展示風景

山本捷平《reiterate -tree lines-》130×324cm 2019年

作品は、在日フランス大使館賞に選ばれ、副賞として2020年1月の個展開催が決まりました。

HANKYU アート・フェア -Neo SEED-

アートアワードトーキョーの直後に開催されたのが、2019年6月26日から7月1日まで開催された阪急うめだ本店のグループ展企画「HANKYU アート・フェア -Neo SEED-」。
数多い出展アーティストの中から、山本作品がDMのデザインにも採用されました。

アートアワードトーキョーでの勢いを買ってか、作品は全11点が初日で全て完売という盛況ぶり。勢いがありますね!

展示風景

正面の作品は《reiterate-vagueness》シリーズ。今回初公開で発泡ウレタンをローラーした制作です。

左:山本捷平《reiterate-scull(red)》2019年

コレクターにとっての山本作品

山本作品のコレクターとして、山本捷平さんの作品について感じた点をまとめてみました。

  1. 絵画的な魅力
    作品にコンセプトとオリジナリティがあって、山本捷平作品として比類なく、自立しています。
    他の作家にない制作手法もあり、作品としての強さも含めて、世界でも戦える可能性を感じています。
  2. デザイン性の高いビジュアル
    ローラー作品のイメージはラオコーン像のようなモチーフの他に、花、スカル、文字など、多様に展開しています。
    落とし込まれた図像は、デザイン的に素晴らしいクオリティです。
  3. 複雑なマチエール
    丁寧な下地の処理がとても好印象です。画家としての高いスキルを感じるクオリティです。肉眼で見て頂きたいと思います。
  4. 特注パネル
    木製のパネルを特注し、麻布をメインとした支持体を使用しています。布にもこだわりを持っていて、双糸の麻が使われています。
    ローラーの圧に負けない強度を得るために厚み(F10号で40mm)があります。
  5. 作品証明書や発送
    所属ギャラリーが無い時期に購入したため、個人で送っていただきました。平均的なギャラリーより、とても丁寧な作品の取り扱い、梱包でした。自作の作品証明書も含めて、見事な対応でした。京造の教育が大きいと感じました。
  6. 価格
    高い成長力が期待出来る若手の作家さんです。これからキャリアを積んでいく作家さんですから、価格も低く抑えられています。

また、新しい作品シリーズにも果敢にチャレンジする研究熱心な側面もあります。
マジメで熱意のある絵画に実直な性格で、コレクターとして、応援したくなる要素を持っている作家さんです。

初個展開催

以下、初めての個展が東京で開催されました。

先ほどご紹介した「アートアワードトーキョー2019」での出品2作品を含め、合計20作品以上の新作が並ぶ、山本捷平さん史上初めての大型個展です。

会期中に全作品完売という素晴らしい成果を残して会期を終えました。

概要

山本捷平 個展
What is the “entity”
会期:2019年7月15日(月・祝)〜7月21日(日)
場所:MEDEL GALLERY SHU
時間:11時00分 – 19時00分(最終日は17時まで)
入場料無料