京都造形芸術大学 卒業展・大学院 修了展
ギャラリストやコレクター界隈から「京都造形芸術大学の卒展が面白いよ」と聞いて行ってきました。
京都造形芸術大学は、瓜生山の斜面を活用した設計により階段が多く、キャンパスを見回るのは一苦労します。
1階「Galerie Aube / ギャルリ・オーブ」の展示空間は広く、高さもあって作品が映えます。
作品購入できる展覧会
京都造形芸術大学の芸術教育は、巣立っていく学生たちをアーティストとして自立させることに強く意識しているようです。
筆者が今回足を運んだ理由の1つが、アートフェアのように卒展・修了展の展示作品が購入出来るルールを作っていることでした。
実際に作品販売することで、鑑賞者への説明や値付けなど、様々なプロモーションやコミュニケーションを実体験させる狙いがあるそうです。
学生の値付けは優しいお値段。購入者との連絡も学生が行います。
作品受け渡しのフィニッシュまで、あくまでも教育の一環で行われています。
気になった学生
以下、展示作品で気になった学生さんをご紹介致します。
中澤ふくみ
中澤ふくみさんの作品は1枚ずつ和紙に描いた作品をアニメーション化し、全ての和紙を糊で固めて1つの作品にまとめ上げる技法です。
重ねた和紙の絵は透過して、後ろの絵の線が浮き出てきて残像のように重なります。
村井柚紀
青にこだわる村井柚紀さんは、「フタロブルー」という青色に強いこだわりを持つ作家さん。
キャンバスに下地を作り、クッツカーネという素材に絵の具を自然に流し込んで青色の模様を作る技法です。
下地にしたキャンバスの表面の質感が面白く、綺麗な青が一層輝くような処理に成功しているようです。
山本捷平
マテリアルに着目して作品制作を行っているのは山本捷平さん。
自作のローラーでキャンバスに反復する模様を付けていく手法です。
ローラーで描かれた形状の複雑な抽象的作品は、幾何学的な模様が刻まれています。
骸骨作品のように、具象へ振れると残像のイメージが色濃くなって好みでした。
森井沙季
森井沙季さんの作品は、光と影、表と裏、など相反する2つの要素をキャンヴァスに落とし込むペインター。
鑑賞者の視点は揺れ動き、作品に釘付けとなります。
石川綾子
日本画の学生たちは幅広い作品で楽しませてくれました。
石川綾子(Ryoko Ishikawa)さんは生き物へ向ける優しい眼差しを作品にしている作家さんです。
成田令真
独自の世界観を強烈に発信していたのが総合造形の成田令真さん(REMA)。
自動車を装飾して実際に街中で走行した映像や自身のマネキンなど、セルフポートレート作品を様々な形態に展開するなどこだわりが詰まった展示空間でした。
他にもご紹介したい多くの学生たちがいましたが、いずれも本格的な作家活動を目指すしていくような強いエネルギーを感じました。
東慎也さんと小谷くるみさんは別記事にまとめたので参照下さい。
学生たちの作品販売はとても好調のように映りました。
価格設定が優しいこともありますが、鑑賞者にキチンと対面して作家としての考えや作品の説明を行っている光景が印象的でした。
日本画学科の学生と話をしたときに、大学の教育プログラムについて興味深い話しを聞くことが出来ました。
筆者が感じたのは押しつけ型の教育プログラムでは無く、学生の自立を促すようなものだったことです。
最後に、学生たちがホスト役として温かい対応をしてくれたことがとても好感の持てるものだったことを記しておきます。
次回も伺いたいと思える卒展・修了展でした。
概要
2018年度 京都造形芸術大学 卒業展 大学院修了展
期間:2019年2月9日(土) 〜 2月17日(日)
時間:10:00-18:00
入退場自由 ※入場無料
会場:京都造形芸術大学 京都・瓜生山キャンパス