富田菜摘
先日の「ブレイク前夜展」でも展示されていた富田菜摘さん。
面白い切り口の個展を開催と聞いて伺ってきました。場所は京橋のギャラリー「ギャルリー東京ユマニテ」です。
中吊りの日々
ギャラリーに一歩入ると完全な異空間に包まれます。そう、立体作品の全てがつり革にぶら下がっている状態なのです。かなり異様な雰囲気です。
作品もモノクロで、ギャラリーの壁面も白色ということで、カラーで撮影してもモノクロの世界です。視覚がモノクロに染まるので、別世界にトリップしている感覚しかありません。
〈作家コメント〉
電車の中は、他人同士が同じ空間に詰め込まれ、それぞれが自分の世界に入りお互いを意識しない不思議な空間だと感じ、以前から度々作品のテーマとしてきました。電車の座席に座りながら目の前に来た人を眺め、服装や持ち物、表情などからこんな人なのではないかと想像を膨らめてみる。そんな自分もその他人の集団の一部なのだと思い、面白く感じます。
新聞記事を用いた人物作品は以前から発表していましたが、今回は初めてのモノクロ作品。ギャラリー内に浮遊する人物たちから、電車の中の独特で不思議な雰囲気を感じていただけたら嬉しいです。
会場の壁面には下記のような人物リストならぬ「作品リスト」が掲出されています。
各キャラクター作品に設定された個人の名前が付いているようです。
宙づりでは無く中吊りとした個展のタイトルは社内の中吊り広告を含んでいるのでしょうか。個性的なキャラが17体吊革に掴まったままそれぞれの姿勢で吊られております。
良く見ると、それぞれのキャラにはキャラと関連性のある記事が貼り付けられています。そう、新聞紙ですね!
表情もリアルで、特徴的でコミカルです。
私たちが電車の車内で見掛ける人種のほとんどが網羅されている17体です。ご老人は座席に座っているという解釈なのか、吊革に掴まっている作品はありませんでした。
綺麗系のOLさんらしき「細川麗美」もルックスは微妙な表現で可笑しいですね。
疲れや疲労をイメージさせる「塚田裕男(ツカダヒロオ)」。サライーマンであれば、身につまされる作品です。
今時の女子高校生はスマホを片手にしっかりと握りしめています。
金属作品
廃材を生かした動物のオブジェは人気のシリーズです。作品の販売状況については、こちらの作品の方が売れておりました。もっとも吊革作品の展示はなかなか難しそうですからね。
まとめ
今回の展示は立体作品ばかりでしたが、富田菜摘さんのキャリアは多摩美の油画卒業ということ。中吊り作品の表情を作る表現力を見ると、平面作品にも興味が及んでいきます。
今回の個展は、脳のスイッチを異次元にスイッチさせてくれる内容でした。まんまと罠にはまったような体験が出来ました。素晴らしい内容!
概要
富田菜摘展「中吊りの日々」
日程:2018年2月13日(火)〜2018年3月3日(土)日曜日休廊
作家在廊日:火・金・土曜日(その他の日はお問い合わせください)
時間:10:30~18:30
オープニングパーティー:2月13日(火)17:00~19:00
場所:ギャルリー東京ユマニテ
東京都中央区京橋3-5-3 京栄ビル1F tel.03-3562-1305