磯村暖
磯村暖は個性的なファッションが印象的な若手美術作家。学生時代にタイへ渡って滞在制作の経験をしているからなのか、国際的な社会問題にも関心があるようです。
【磯村暖プロフィール】
磯村 暖 Dan Isomura
1992年東京生まれ、東京在住。2016年東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。
2017年ゲンロン カオス*ラウンジ 新芸術校第2期卒業(卒業時 金賞受賞)。
主な活動に、ロンドンと東京でのレジデンスプログラム参加中に行なった個展「Two glasses of water / 2000000000000000000000000 water molecules」(The Vitrine, Central Saint Martins, ロンドン, 2017)、「A glass of water / 1000000000000000000000000 water molecules」(遊工房, 東京, 2017)や、KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭プレ企画「藝大子アートプロジェクト」への参加などがある。また2016年より自宅でパーティーを度々主催し、2017年にネパール人移民と共に行なったパーティー「HOME PARTY#1」をギャラリー空間内で再構築、再解釈したインスタレーション「HOME PARTY#2」(カオス*ラウンジ五反田アトリエ, 東京, 2017)を発表した。
現在磯村はグローバリズムの転換期の景色を見つめ、訪れた土地や日本で出会う移民たちの故郷のヴァナキュラーな文化や宗教美術、物理学、SNS上の美学等を参照してインスタレーションや絵画を制作している。
個展「Good Neighbors」
磯村暖の個展「Good Neighbors」はゲンロンカオスラウンジ新芸術校第二期最優秀デビュー展という位置付け。今回は欧州の問題やトランプ政権で注目を集めている「移民」をテーマに展示されていました。
今回の中心的な展示は水を使ったインスタレーション。カラフルな5つの箱を中心として、ホースを通して流れる水が下から上まで巡る仕掛けです。
伺った際には水は止められていたのですが、気になってスタッフの方にお聞きすると機械の調子が良くないようで、常時電源を入れていないそうでした。スイッチを入れて頂き、鑑賞することが出来ました。
流れる水は私たちが住む地球を支配している大きな存在。国同士を結びつける潤滑材として担ってくれますし、移民の際には貴重な移動ルートになる重要なキーワードですね。動画を少し撮影してみました。
それぞれの箱はアジア系の移民、夢を持って日本にやって来た若者、国外で多くの時間を過ごした日本人と共同製作されたようです。
アメリカの現代アート作家「ジョゼフ・コーネル」や昭和時代後期の美術家「工藤哲巳」が遺してきた箱を使った表現方法、砂絵の万国旗を蟻が壊して行く作品で有名な「柳幸典」を彷彿させるような表現、とはスタッフの方のコメントでした。
テーマに沿った箱庭の小作品も展示されていました。モコモコっとした彫刻作品は「Leakage」。密閉されたウレタンが膨張し、隙間から出てくる仕組みを利用した作品。予測不能でバランスが取れない様が表現されているようですね。
移民を象徴するようなライフガード(救命着)。
小作品は10,000円(税別)という価格もあって、売約済みの印も多かったです。
まとめ
社会的に重たいテーマにもかかわらず、明るくて触り心地の良い表現方法で柔らかくメッセージしている、アーティストとしての巧みさを感じました。
優しい心の持ち主なのかも知れませんが、若い世代がこういったコミュニケーションを推進してくれれば、きっと未来は明るいものになると思います。
概要
会期:2017年10月31日(火)~11月26日(日)
時間:11:00~20:00(水曜のみ21:00まで)
会場:オン・サンデーズ地下書店 ※Watarium地下
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前3-7-6
主催:合同会社カオスラ/協力:株式会社ゲンロン
会期後に「Leakage11」として、オンサンデーズさんで磯村暖さんの作品販売されていました。シリーズ化しているようですね。※2018/02/18更新