牧田愛さんアトリエ訪問
牧田愛さんのアトリエに訪問する機会を頂きました。
お伺いした日は2020年を迎えたばかりの1月初頭です。東京西部の郊外にあるご自宅兼アトリエにお邪魔しました。
現在は東京とニューヨークを行き来しながら活動する牧田愛さん。アートマーケットに挑戦している作家としては、東京よりも圧倒的に欧米の空気に触れ、活動することが重要というお話をされていました。
東京では、1年少し前に立てられたご自宅兼アトリエで制作を続けていらっしゃいます。
アトリエ空間の設計デザインも牧田さんご自身で考えたそうです。天井高があって、白壁に囲まれた心地良い空間でした。
牧田愛さんの制作手法は、フォトショップなどの加工ツールを駆使し、PC上でコラージュしてデジタルイメージを構築することからはじまります。
時間をかけてデジタルイメージを構築した後、出力して支持体に転写していきます。
転写した上から油絵の具を使って描写し、絵画として表現していきます。幾重にも積み重ねられた絵の具のレイヤーによって、転写部分は完全に覆われていきます。
転写の方法も様々です。訪問時に制作されていた下写真の作品は、支持体の布に、モノクロでUVプリントされているものです。作品によっては、アルコール転写という技法も使われますし、作品に合わせて手法を変えているそうです。
もともとバイクを愛好していた牧田さんは、バイクのエンジン部分やパーツなどのメッキされた金属をモチーフに採用するなど、プラスチックや金属の無機的なマテリアルを緻密に描いていきます。
牧田さんは、2Dと3Dの中間、無機と有機、デジタルとフィジカルのあいだを表現したいとのお話でした。
虚像なのか?真実なのか?を曖昧にすることで現実と非現実の隔たりを作り、鑑賞者の視覚を揺さぶるような作品です。
9連作の≪Gradation≫シリーズでは、無機的なモチーフを採用しながらも、風景が映り込んでいる様を入れ込むほか、金属がドロッと溶けるような様子や、描いたモチーフがキャンバスから剥がれ落ちるような表現が見られます。アトリエに残っている、シリーズの一部作品を鑑賞することが出来ましたが、立体的で奥行きがあって、自分の視覚が揺さぶられるような感覚に襲われました。
≪Gradation viii≫ は、シリーズの中でも抽象的な作品で、強く印象に残りました。
牧田愛さんのお父さんは、木彫作家だったそうです。その影響もあるのでしょうか?絵を描くときに、彫刻的な意識を持って向き合っているそうです。立体的な感覚を意識して、絵の具を付け足しながら、少しずつ層を重ねていくそうです。
最近は、錯視効果に興味あるそうで、アトリエの壁面にもデジタル上で組み込んだ画像が貼り出されていました。PC上で組み込む技術に長けていて、3Dメガネで見ると浮き出る作品にも挑戦されていました。
技法は作品によって様々です。≪Backbone≫はシルクスクリーンを1層目に使い、赤と青のイメージを使い3層で構成された作品です。
有機と無機を相互に置換させるようなアプローチは支持体からも行われており、動物の皮を使った取り組みにもチャレンジしていました。
2020年も精力的に活動される牧田愛さん。
4月にニューヨークで個展、夏には関内文庫で菅原玄奨さんと2人展、9月には日本橋三越本店で個展などが予定されています。
益々の活躍が期待されるアーティストです。