WHAT

美術品保管を主軸に、幅広い分野でアート関連事業を展開している寺田倉庫がコレクターズミュージアム「WHAT」をオープンさせました。

倉庫に眠る作品を開放し、日本を代表するコレクターが自らの価値基準で収集した作品との出会いを創出することを目的としています。

WHAT(天王洲)

正式名称は「WHAT(WAREHOUSE OF ART)」。
「倉庫を開放、普段見られないアートを覗き見する」 というコンセプトのもと、現代アートシーンで活躍する作家の作品が展示されます。オープニングに選ばれたコレクターは、高橋コレクションで知られる高橋龍太郎氏と匿名のA氏

高橋龍太郎コレクション

高橋コレクションは、珍しく若手作家の作品をたくさん出展していました。

展示風景

水戸部七絵 “DEPTH”

土取郁香 “I and You (knock knock knock)”

近藤亜紀 “ウータン山”

高橋龍太郎さんの初コレクションアートは、とても小さなサイズで、しかも分割払いだったなんて・・・。一般コレクターと同じようなコレクションスタートだったようで、親近感が沸きました。

高橋龍太郎氏〜実のところ絵画を購入した最初というのはもっと前のことで、1979年に医者になったばかりの頃、飯倉の画廊で合田佐和子の「グレタ・ガルボ」の小さな肖像画を購入しました。素晴らしい作品でした。が、金が無いので代金を毎月1万円ずつ支払いした記憶があります。もうその頃から、支払いの苦労が始まっていたのですね。それに懲りてか、その後20年近く絵は購入しようと思いませんでした。

合田佐和子 “グレタ・ガルボ”

高橋龍太郎氏〜1997年制作の岡﨑乾二郎の小さいドローイングを購入した時には、本当におっかなびっくりで、こういう抽象作品を評価する力が自分にはあるのだろうかと自問自答したものです。
一般的に具象的な作品を購入するときには、コレクターは好きか嫌いかなどと勝手に決めて偉そうにしていられるのですが、抽象作品になると自分の美意識の極限を試されているような気になってしまうのです。

名画のエッセンスに加えて、古今の文学、音楽、建築等あらゆる表現媒体のエッセンスをえぐりだして作品にするのが岡﨑乾二郎。ありあまる表現衝動がこの長いタイトルにあらわれています。日本のアートシーンをどこよりも私が信じているのは岡﨑乾二郎が存在しているからだと言っても過言ではありません。

岡﨑乾二郎 “「誰だ。何をしにきた」。苔むした岩の間にさらさら音を立てる谷川の水はいつも冷たく澄んで、そのまま王の心でした。王が王なのは誰も来ないから。来ないかぎり王は王としてミズナラの洞に座り続ける。何千年も生きたろう巨木が立ち並び、その葉の茂みが空を覆う。足元は絨毯でなく茨や葛ら、朽ち葉や枯れ枝。白い薄明りが道を示し王子をここに連れてきた「あなたへ伝える」、何を伝えるのか。私が口を開いた途端、あなたはもう王ではない。静かだった森がごうと唸り声をあげる。”

高橋龍太郎氏〜2018年の清春芸術村で開かれた「高橋コレクション|顔と抽象」展で会田誠と対談したときも、作家は誰でも画帳に気に入った線と色を描きためていて、ある種の抽象絵画を描いていると聞いて納得しました。会田誠のランチボックスに描かれたこの作品は会田誠の美意識の結晶ともいえる作品です。古今の名画からそのエッセンスだけを抜き取って抽象画としてあらわす。これがこのシリーズです。

会田誠 “かび, さあ, した, すか, ちび, よひ (「ランチボックス・ペインティング」シリーズ)”

梅沢和木 “ジェノサイドの筆跡” 2009

高橋龍太郎氏について
精神科医、現代アートコレクター。1946 年山形県に生まれ、小学校から高校卒業までを名古屋で過ごす。東邦大学医学部を卒業後、慶應義塾大学精神神経科入局。国際協力事業団の医療専門家としてのペルー派遣などを経て、1990 年東京・蒲田にタカハシクリニックを開設、院長となる。1997年より本格的に現代美術のコレクションを開始し、所蔵作品は現在2000点以上に及ぶ。これまでに国内外21館の美術館等で高橋コレクション展が開催された。代表的なものに、2015年「高橋コレクション展 ミラー・ニューロン」(東京オペラシティアートギャラリー)、2015−2016年「Cosmos/Intime- Collection Takahashi~内なる宇宙-高橋コレクション展」(パリ日本文化会館)等がある。著書「現代美術コレクター」(講談社現代新書)他多数。

A氏コレクション

匿名のA氏は、現在50代前半の男性コレクター。
奈良美智さんの作品だけを展示していました。ひとりの作家を集中的にコレクションする形が展示によって表現されていました。

展示風景

奈良美智作品との出会いは2001年に開催された横浜美術館での個展「I DON’T MIND, IF YOU FORGET ME.」だったそうです。作品に魅了され、直後にコレクションがスタートしたそうです。

A氏が初めてコレクションした作品① 奈良美智“Slash with a Knife”, 1998

A氏が初めてコレクションした奈良美智さん作品②

基本的に、全ての作品は額操されており、ご自宅で展示の掛け替えをしながら、生活とアートが密接に関わっているようなエピソードが語られていました。

オークションで購入されたというペイントされたMINIも、ときおり乗って楽しんでおられるそうです。

奈良美智“Rock and Roll” 塗装仕上げ 2004

貴重な木彫作品もコレクション〜奈良美智 “悲しみの炎・波の泉 I” 1989

展示風景

展示風景

展示風景

展示風景

展示風景

A氏について
日本の実業家、投資家。1969年生まれ千葉県出身。大学卒業後、投資会社に就職しベンチャー企業への投資・育成業務を担当。その後複数の企業を上場させ、現在も上場企業の代表を務める傍ら、様々なベンチャー企業のエンジェル投資家としても活躍。2001年に奈良美智の作品を美術館で鑑賞したことをきっかけに、コレクションをスタート。奈良美智作品を中心にコレクションしながらも、現代アートにこだわらずコレクションを続けている。

お二人共に、こだわりの強いコレクションを披露しておりました。

コレクターのコレクションを素晴らしい空間で披露する取組や、多数の貴重な作品が一気に見られる機会を創出していただいたことに拍手を送りたいと思いました。

概要

会場:WHAT MUSEUM
会期:2020年12月12日〜2021年5月30日
住所:東京都品川区東品川2-6-10
開館時間:11:00〜19:00(最終入場は18:00まで)
料金:一般 1200円 / 大学生・専門学校生 700円 / 高校生以下 500円
※建築模型倉庫見学(オプション):500円
出展アーティスト(五十音順)会田誠、今津景、梅沢和木、大山エンリコイサム、岡﨑乾二郎、川内理香子、草間彌生、合田佐和子、近藤亜樹、鈴木ヒラク、土取郁香、佃弘樹、DIEGO、奈良美智、野澤聖、BIEN、水戸部七絵、村山悟郎、毛利悠子
主催・企画:寺田倉庫株式会社
協力:高橋龍太郎、A氏
グラフィック:株式会社TETE BRANDING

※A氏コレクションは展示替えの予定有。

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