【現代版の版画作品】美術作家 福田美蘭さんの「新聞版画」が面白い!

福田美蘭

福田美蘭さんは世界的グラフィックデザイナーとして著名な故福田繁雄氏の娘さんです。

2018年では幾つかの美術展で作品を展示しており、「モネ展 それからの100年」での作品が記憶に新しい作家さんです。
モネ展で展示された《睡蓮の池》のように、過去の名画を引用したり、デジタル加工するなどの作品や独自の解釈を展開する作家さんです。

福田美蘭《睡蓮の池》2018年

新聞版画

福田美蘭さんが制作・発表を続けている「新聞版画」は、新聞に掲載された福田美蘭さんの作品、主に展覧会出品作品の掲載部分を福田さん自らが切り取って、サインしたものを「版画」として販売するものです。

新聞紙上に掲載された作品の図版を「版画」と捉える考え方が非常に面白いアプローチですね。
版画は印刷と同義ですから、カラー印刷が当たり前になり、印刷技術の進歩した現代の版画と言ってもおかしくないでしょう。

福田美蘭 《風神雷神図》 朝日新聞 2013年9月4日掲載

さらに、この作品のユニークさを特徴付けているのは、作家のサインを入れることで価値が上がっていくという、デュシャンが便器にサインを入れて展示したのようなアプローチが含まれるということです。
サインを入れれば作品として成立する、というアートマーケットに対する皮肉めいた意味合いもあるのかも知れません。

エディション数は掲載時点での新聞印刷発行部数です。
公表数字と実売数の差はあるものの、大量印刷された新聞紙を「版画」として販売することの痛快さがあります。

福田美蘭 《モネの睡蓮》東京新聞 2018年7月11日掲載

近年の新聞印刷技術の向上は素晴らしいものがあります。
本シリーズは1996年からスタートしたそうなのですが、現代だからこそ成立するという点ではまさに現代アート作家としての役割を担っているように映ります。
筆者はこの企画に便乗してキチンと額装をしながら扱っていきたいと思います。

●福田美蘭 《風神雷神図》2013年

本作は横浜美術館のコレクション展で展示された作品で、俵屋宗達の《風神雷神図屏風》の図像が引用されています。
画面の左上、右下に対峙する形は、金箔の地にたらしこみを彷彿させる描かれ方で、元の図像の具象性が実は解体されているにもかかわらず、
見る者はそのオリジナルが宗達の風神雷神像とすぐさま判る、ぎりぎりの抽象形体に置き換えられています。

拡大していますので分かりにくいですがサインは非常に細かい字です

※朝日新聞 2013年9月4日掲載

●福田美蘭 《睡蓮の池》2018年

「モネ それからの100年」で展示された大型作品《モネの睡蓮》も新聞版画になりました。
この展覧会中には新作《睡蓮の池》も新聞版画になっております。

※東京新聞 2018年7月11日掲載

本記事を切っ掛けに、SNSで繋がりのあるコレクター様から下記の作品《折りかわり絵》をお譲り頂きました。
ありがとうございました! ※2019年5月10日更新。

福田美蘭 《折りかわり絵》日経新聞 2016年5月15日掲載

額装

福田美蘭さんの手のひらで転がされているように、新聞版画を額装してみました。
いつもお世話になっているnabis画廊さんでオーダー、なんと2,000円(税別)!
合計3000円でこのパッケージ、いかがでしょう。

額装によって引き締まった新聞版画の雄姿!

新聞版画の販売価格は「1,000円(税抜)」という安価な設定です。
今後も福田美蘭さんが展示する、どこかの美術館ミュージアムショップなどで販売されているかも知れません。
探してみてはいかがでしょうか?