DM ダイレクトメール
展覧会の開催告知媒体「DM」、ダイレクトメールの略称。
色んなギャラリーさんへの訪問やお付き合いを重ねると、年間に沢山のDMハガキを頂きます。個展を観に行く切っ掛けはDMからの情報がかなり大きいので、非常にありがたい存在です。
何枚も頂いたり置いてあるのを持って帰ったりすると、かなりの枚数になる訳ですが、大量のDMはひとつひとつに作家さんや作品の魂が宿っているようでなかなか捨てられず、いつのまにかDMそれ自体をコレクションするようになりました。そして、沢山のDMに触れるにつれ、単なる告知ツールを越え、それ自体が作品のように輝いているものに出会うことが増えてきました。
ということで、今回の記事は2018年に出会った素晴らしいDMをご紹介する、という企画をお送りしたいと思います。
「展覧会ベスト10」等は色んなBlogでお見かけしますが、「DMベスト10」は日本初!世界初!ではないでしょうか(?)。
弊サイトへのDM送付はこちらまでお問い合わせ下さい。
DMベスト10
ギャラリーで開催される展覧会、特に個展の開催時に制作されるDMは作家の意向が大きく反映され、それ自体が作品のように存在するものが多くあります。美術館の展覧会はA4サイズのフライヤーで画一的なものが多いのですが、個性が光るDMをまとめてみましたのでご覧下さい。
それでは2018年に開催された展覧会の中で筆者が手にした10枚の特徴的なDMを取り上げたいと思います(紹介順は任意)。
なお、本企画はDMの主目的である展覧会の模様についても評価に含んで選択いたしました。また、筆者の主観でありますのでご了承頂きたいと思います。
【1】加賀温(Maho Kubota Gallery)
しっかりとした厚紙で作られ、作品の形状に合わせた変形サイズのDMでした。
Maho Kubota Galleryさんは、この形状のDMが多いですね。
こちらのDMは、思わず額装してしまった作品。
加賀さんはグローバルで活動されていてアイルランドの著名ギャラリーに所属しているがゆえ、作品の価格がかなり高額なので、DMを作品に見立てて額装してしまうのでした。
【2】名和晃平(Scai the Bathhouse)
2018年の展覧会BEST10にも入れた名和晃平さんのDMは大御所作家の重厚感があって風格漂う素晴らしいDMでした。
厚紙・エンボス加工・大型版、と三拍子の揃ったDMでしたね。
【3】YUMA YOSHIMURA(Taku Sometani Gallery)
見て下さい、このパッケージ!
こんなに金書けてどうするの?というクオリティ高いDMを送っていただいたのが新興ギャラリー「TAKU SOMETANI」で開催されたYUMA YOSHIMURA展のDM。
通常よりやや大きめのDMをそのままビニールでパッケージ加工して封入されているものです。印刷代、梱包代、郵送代と、1枚に数百円もかけているのではないか?というこだわりのDMです。
ギャラリーのオーナーさんはこだわりが強い方で、哲学もしっかりと持っていらっしゃる方。
若手の作家さん中心に個展を組んでいるギャラリーさんです。
2019年には期待の若手作家さんの展示予定もあるようで楽しみなギャラリーさんです。
【4】吉岡俊直(Gallery Out of Place Tokio)
色校をキチンと重ねたであろう吉岡俊直さんのDMです。
作品を忠実に再現した色出しは、作家さんによっては非常に求められるポイントかも知れません。
時々頂くDMの中で明らかに色味がおかしい発色のものを見かけますが、こちらのDMは鑑賞時の作品そのままの色が再現されていてお見事な仕事ぶりです。
色校をミスって発色が微妙な感じのDMをよく見かけます。そもそも色校していないDMも少なくない数あるでしょうね。
作品の見え方が変わってしまうのはとても不幸な事象です。
しっかりとした印刷会社さんを選びたいですね。
【5】大岩オスカール
大型作品が持ち味の大岩オスカールさんは「DMも同じくデカい」です。
受け手にどれだけ世界観をイメージさせるか?と言う点では、サイズ感も大きな要素であると言えます。
【6】やましたあつこ&林もえ(Makii Masaru Fine Arts)
浅草橋のギャラリー「Makii Masaru Fine Arts」で同時開催されたお2人の個展。それぞれの個展が1階と2階で開催されていました。
世界観を共に共有しているかのようなトーン&マナーが存在するDMです。「行きたくなるDM」として機能しているのでは無いでしょうか。
独立したお2人の作家さんが協力しあって完成させたDMです。
【7】山口藍(Mizuma Art Gallery)
「これポストカードじゃん!」というDMが山口藍さんの個展のものです。
デザイン面に何の文字も印刷されていないので、すぐさま保護フィルムに収納し、室内に飾りました。販売しておかしくないような仕上がりです。
【8】只野彩佳(Tokyo University of the Arts)
キラキラとしたコーティングで印刷されていたのが東京藝大の卒展用に作られた只野彩佳さんのDM。
学生なのにこだわりの印刷。こだわりの美的感覚で印象が良く映ります。お金も結構掛かっただろうに・・・。敬意を表してランクインです。
【9】松枝悠希(新生堂)
エンボス加工のDMは、立体作家の松枝悠希さんらしい仕上がりでした。
赤系の色味や下絵のようなデザインが配置されていて、おしゃれ感もあります。
個性の光るこだわりのDMですね、素晴らしいと思います。
【10】細川成美(奥野ビル306号室)
最後は細川成美さん。こちらは厳密にはDMではありませんで年賀状です。発送主は細川成美さん、住所は奥野ビル306号室です。
ご本人の直筆サインとメッセージが添えられていますが、新年にこういった年賀状をいただけるのはとても嬉しいですね。作家さんに対するモチベーションが間違いなく変化していくと思います。
ギャラリーさんとの関係性も良いのでしょうね。
若手の女性作家さんはご自宅の個人情報を晒したくないでしょうから、ギャラリーの住所を上手に使っていけば良いと思います。
おまけ)番外編
先日伺った内田すずめさんの個展は大盛況でした。
混雑する中で、鑑賞後にギャラリーを退室しようとしたところ、1枚のポストカードを頂きました。
なにやら、1人1枚頂ける内田すずめさんからのギフトのようで、しっかりとした紙と印刷のポストカードでした。
素晴らしい作品を見させて頂いたにもかかわらず、おまけにカードまで頂けるなんて鑑賞者としては嬉しさ2倍ではあったのですが、こちらからお返しすることも出来ず、ただ受け取るばかりで失礼致しました。
こう言った作家さんからの心配りはしっかりとファンの心を掴みます。また来ようと思いますし、いつか作品をコレクションしたいと思うはずです。筆者も抽選には外れましたが、今後もしっかりと応援していきたいと思いました。
DMをコレクションする
以上、BEST10と番外編のご紹介でした。
さて、本記事の重要部分はここからです。
せっかくのDMですから、しっかりと保管し、場合によっては室内に飾ってみるのも良いでしょう。頂いたDMはすぐにフィルムでカバーをしておきたいです。長期保存して、いつかまたその当時の記憶に戻りたいときに確認することもアートの楽しみ方だと思います。
おわりに〜作家さんへのアドバイス
DMは単なる告知媒体ですが、鑑賞者やコレクターとの重要なコミュニケーションツールです。
今回ご紹介したのような珍しい凝ったDMやお金をかけたもので無くても全く構いませんが、それぞれの作品や考え方に合ったDMで上手に見せられれば、個展への集客や作家本人のブランディングとして機能するはずです。
今回取り上げたのは筆者が受け取った数からすればほんの一部ですが、色んな種類のDMがもっとたくさん出てくれれば嬉しく思います。
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お気軽にご相談頂けましたら幸いです。
2019年版は以下のリンクより参照ください。