Atsushi Kaga「It always comes; a solace in the cat.」
カガアツシさんの個展「It always comes; a solace in the cat.」に伺いました。
会場はMAHO KUBOTA GALLERYです。
カガアツシさんの日本開催個展としては、2018年3月の個展「The Search For Languorous Magic」以来、2回目の開催となりました。前回の様子は下記記事を参照ください。
「それは必ず来る:癒しの猫」
母親の肖像画と言えば、すぐに思い浮かぶ絵が何枚か。例えばデイヴィッド・ホックニーの本を読み始めてしまった父親と一緒に描かれた真っ直ぐこちらを見る母。ホイッスラーによるグレーとブラックNo1のアレンジメントは、ポートレートとして非常に型破りな構成になっています。ルシアン・フロイドは何枚もクロースアップからの母親の肖像画を描いています。すべての絵は、それが彼らが意図したことでないにせよ、どういうわけか彼らの母親との関係を示しています。
母が生きている間、私は母の肖像画を描いたことがありません。振り返ってみると、母とのパフォーマンスは、母の肖像画に限りなく近いものでした。もしくは、それは私の母の肖像画だったかもしれません。展示場での母は、普遍的な母親の象徴として存在していたと思います。結局は、私はただ単に母をアート作品としてプレゼンテーションしたという形になりました。
パフォーマンスという、大袈裟な名前がついていますが、それはただ単に、私が子供の頃に特に作った手提げ鞄を母が縫っているだけです。そしてその手提げ鞄に私が絵を描いたりしているだけのものです。最近、私たちが一緒に行ったパフォーマンスのこれらのビデオドキュメントを編集のために観ていると、私と母との関係がはっきりと示されていることに気づきました。
母はこの個展のいくつかの絵に死んだキツネとして登場します。個展のタイトル「It always comes」は、私の好きな女優、樹木希林さんが2018年に亡くなったときに描いた自分の絵に由来しています。崖の端にあるENDと書かれた手描きの看板にうさっちが直面している様子が描かれています。つまり、Itは終わりを示しています。残念ながら終わりは常に来るものです。
しかし、それはまた、この個展の別のビデオでは生を指します。黒白猫のホワイトソックスがアイルランドのカランにある私のスタジオに繰り返しやってくる様子が映されています。この隣人の猫は、カランでの滞在の最後の6か月間、ほぼ毎日私たちの場所にやって来ました(というかうちに住んでいました)。彼女はインスピレーションと安らぎの源でした。死だけでなく、生も常にまたやってくるものです。
その時期は、母が病気になり、その後亡くなった時期と一致していました。それは私にライフサイクルと、生まれ変わりなどについて考えさせました。
私の最近の絵には猫が多く描かれています。死者が戻ってきて猫の目を使って私たちを見ることができると私の妹は言います。今この文章を英文から和訳していて気づいたのですが、猫という字は描くという字にとても似ていますね。私は猫がとても好きですし、絵を描くのも好きです。
Atsushi Kaga
バーゼル香港やクリスティーズでのオークションなど、アジアを中心に人気が高まってきており、初日に完売という加熱した状況ではじまりました。京都に居を構えてからモチーフに変化を見せ、そこから周囲の反応も変わってきたそうです。
本展と同時期で開催されたアートバーゼル(スイス)でも、ビッグコレクターにコレクションされたというカガアツシさん。
今後もニューヨークのレジデンス滞在、ロンドンでの個展など、益々大きく世界に羽ばたいていく未来が用意されています。
概要
Atsushi Kaga カガアツシ
It always comes; a solace in the cat.
会場:MAHO KUBOTA GALLERY
会期:2021年9月10日(金) – 10月9日(土)
時間:12:00〜19:00
休み:日曜・月曜・祝日