【インタビュー】品川亮さんに聞く〜個展「Nature’s first green is gold,」銀座 蔦屋書店

品川亮「Nature’s first green is gold,」

品川亮さんの個展「Nature’s first green is gold,」に伺いました。
会場はGINZA SIX6階、銀座 蔦屋書店 アートウォールギャラリー(スターバックス前展示スペース)です。

展示風景

品川亮さんは、高校卒業後アルバイトでに2年間過ごした後、イタリア1年間滞在されました。帰国後も1年間働き、4年遅れで京都造形芸術大学の日本画コースに入学します。

品川亮さんインタビュー

会期初日のタイミングで品川亮さんとお話しする機会を頂きました。

Q:プロフィールについてご紹介いただけますか?
イタリアに行くまでは油絵をずっと描いていたのですが、イタリアに行って真剣に日本画について考えるようになりました。大学は日本画コースに入りましたが、在学途中に半年間ジュネーブへ交換留学に行った際、それまで描いていた院展を目指すような作品厳しく批評され、今の作風に至りました。
在学中、ヴェネツィア・ビエンナーレの際に束芋さんの制作を手伝ったこともありまして、色々アドバイス頂きました。今も一番尊敬している作家さんです。

Q:作品について解説いただけますか?
墨のシリーズと金箔のシリーズの2つを発表しています。
墨の作品は、僕がどうして絵を描くか?ということを考えていて、矢印でいうと内向きの作品です。
金箔の作品は、日本絵画や日本の文化について考えていて、矢印でいうと外向きの作品です。
両方のシリーズを含め、現在の品川亮を表した個展が銀座で同時開催している個展です。
ここ銀座の蔦屋書店では、たくさんの方に見ていただける機会だと考えて、代表的なシリーズである箔を使った作品を展示することにしました。

インタビューに答えて頂いた品川亮さん

Q:日本絵画というと、どのあたりの時代を意識していらっしゃいますか?

僕が思うところではあるのですが、日本人としての絵画が顕著に出てきたのが、室町時代から戦国時代の頃だと考えています。戦国時代に焼け野原になって、立て直そうとなって城が出来て、広いスペースが出来て大きなものを掛けるとなりました。その時代に、金碧障壁画が出てきたり中国から水墨画が出てきたりして、日本人の核となる絵画が「金箔」と「墨」を使ったものだと考えています。ですので、日本の絵画と考えると室町時代から江戸、明治頃までと思っています。僕はそれらを現代にアップデートしたいと思って作品を描いています。

Q:モチーフに植物が多いのはどうしてですか?
植物は、東洋人が特権的に無条件で描けるモチーフだと思って描いています。

Q:価格がお安くて、すぐに完売となっていますが、ご自身としてはどうお考えですか?

私自身、何があっても絵を描き続けていきたいですし、一生画家でありたいと思っています。それを考えたときに、今すぐに価格を上げるよりも、ある程度求めやい価格で皆さんにコレクションして頂いて、「誰がどう見ても品川亮だ」という存在感を作っていきたいと考えています。それが絵を描く原動力に繋がっています。
小学校の1年生の作文に「将来は画家になります」と書いてあって、いつか「情熱大陸」で紹介したいと思っています(笑。

Q:品川さんにコミッション(注文制作)をお願いすると「3年待ち」という噂を聞いたのですが、本当ですか?

すみません、今は4年ほど待っていただいている状況です。
たくさんのオーダーを頂いていて、大変感謝しています。

展示作品

本展の展示作品についてもお話をして頂きました。

単純化

品川亮さん;
「漢字からひらがな、禅からわび・さびなど、日本人は大陸文化から取り入れて独自の文化にするときに『単純化』という方法をとってきました。このシリーズは、そういったところから着想を得て制作している作品です。」

品川亮《白椿》 2020年 750×750×50mm 顔料、墨、銀箔、膠、和紙、木製パネル
画面に描かれた植物の花の部分のみを単純化した作品は、 日本独特の「型」に置き換える行為を基に描かれた制作方法です。

品川亮《松に流水図》2020年 625×1375×40mm 顔料、墨、銀箔、膠、アクリル、和紙、木製パネル ※展示外作品

品川亮《藤》2020年 750×1000×50mm 顔料、墨、金箔、膠、和紙、木製パネル ※展示外作品

ブラシストローク

品川亮さん;
「最近はブラシストロークを取り入れた作品を作っていて、《菊図》などのシリーズは、今一番見てもらいたい作品です。
僕が作っている絵画というのは、どこまで行ってもローカルな絵画なのだと思っています。民芸などがその例として挙げられますが、一昔前のローカルというと、自分たちのローカルを使ってローカルをアップデートしていったんだなと思います。」

品川亮《菊図》 2020年 1250×875×40mm顔料、墨、銀箔、膠、和紙、木製パネル 
大胆な筆跡で描かれた花は、水墨画や書に見られる筆致を引用しつつ、抽象表現主義以降、現代絵画に多く見られるブラシストロークを取り入れることで、日本の絵画のアップデートを試みています。

品川亮さん;
「今現代でローカルを考えると、グローバルもサンプリングの対象として引用して、それらを使ってローカルをアップデートしていくものなのではなかろうかと考えます。グローバルの中のひとつとして、印象派以降、画家の息づかいやブラシストロークを書道のような形で引用することで、日本の絵画をアップデートできるのではないかと思い、こういった実験をしています。」

品川亮《牡丹図》2020年 500×750×40mm 顔料、墨、金箔、膠、アクリル、和紙、木製パネル

品川亮さん;
「僕は欧米の絵画に憧れがあって、ゲルハルト・リヒターが大好きなんです。ローラ・オーウェンスも好きだし、ミヒャエル・ボレマンスも好きだし、純粋に追うことは出来無いんですが、ペインタリーが大好きなんです。隣で展示中の井田幸昌さんもめちゃ好きです。」

品川亮《秋草図》2020年 625×1375×40mm 顔料、墨、金箔、膠、アクリル、 和紙、木製パネル ※展示外作品

品川亮さん;
「作品はモチーフの組み合わせや構図など、過去の作品を引用することもありますし、自分で考えたモチーフもあります。また、今回は展覧会用に全体の空間を考えて各作品のサイズを考えました。箔を使ったパネル作品は全て125mmの倍数です。また、支持体の仕上げについても、作品の1つとして見てもらうように丁寧に作っています。」

品川亮《牡丹》2020年 375×500×40mm 顔料、墨、金箔、膠、アクリル、和紙、木製パネル ※展示外作品

品川亮さん;
「大きいサイズは身体を使って描いているのでとても楽しいです。大きい作品は動きながら描いているので、それがめちゃ楽しいです。油絵の具をずっと使ってきた作家のマチエール(絵肌)は見ていてドキドキしますが、自分はまだまだ絵具を使うことが得意じゃなくて・・・。でも、質感や息づかいのところで絵画のロマンがある気がしますね!」

展示風景

まとめ

ビジュアルの美しさ、計算された構図、西洋的なブラシストロークの躍動感ある筆致、ポップで現代的な要素、工芸的な仕上げの美しさなど、特徴的な作品の数々を制作する品川亮さん。
確かなコンセプトに基づき、多くのコレクター、鑑賞者を魅了するその作品は、今後も進化しながらアップデートを繰り返していくことでしょう。

概要

品川亮
「Nature’s first green is gold,」

会場:銀座 蔦屋書店 アートウォールギャラリー
会期:2020年6月1日(月)〜2020年6月24日(水)
時間:11:30~19:30
※営業日、営業時間などの詳細は店舗HPをご参照ください。