【個展】小谷くるみ「砂から星へ Sand to Stardust (Cosmos)」Gallery Nomart

小谷くるみ「砂から星へ Sand to Stardust (Cosmos)」

小谷くるみさんの個展「砂から星へ Sand to Stardust (Cosmos)」に伺いました。

Gallery Nomart

これまで取り組んできた、結露した窓をイメージした「21g」と「時間・痕跡〈錆〉」という2つのシリーズの新作にとどまらず、インスタレーション作品や銅版画という新シリーズを含めた展示です。

 

一見すると、全く異なるコンセプトで作られた作品が集まったようにも見えますが、「存在の痕跡と気配」というメインテーマは共通しています。それは個展のタイトル「砂から星へ」にも表現されています。

「宇宙空間のようなマクロな時間の流れさえも、足元の一粒の砂のようなミクロな痕跡として息づいている。」そういった感覚を、多様な手法で表現するという意欲的な挑戦がなされているのです。

作家ご自身も、今回の個展を作家活動において節目となる重要なものと考えているとのことでした。

 

インスタレーション作品 < シキ > 鉄、シナモン、ストロマトライト#2

 

「時間・痕跡〈錆〉」シリーズの新作 (右)境界 1(左)境界2

画面中央にある大作は、「時間・痕跡〈錆〉」シリーズの新作 <咲かない花束>

 

インスタレーション作品は、彼女にとって重要なマテリアルである鉄に加えて、シアノバクテリアの死骸と泥粒などによって長い年月を経て作られる層状の構造をもつ岩石「ストロマトライト」を用いています。

砂と星を象徴的に表現した作品は、禅寺の石庭にも似た静かで深みのある印象をもたれるのではないでしょうか。
砂に見立てて使われているシナモンの香りがそこに神秘的な味付けを加えています。

 

インスタレーション作品 < シキ > 鉄、シナモン、ストロマトライト#3

「21g」シリーズの新作

「21g」シリーズの新作

「21g」シリーズの新作 《UFO》 ※Detail

同じく初の試みとなっている銅版画は、それをつくるもととなった銅版自体を腐食させ、銅版画とセットでユニーク作品として展示されていました。
腐食した銅版があることで、そこに時間の流れによる痕跡が表現されています。

< 匙 > スフィンクス #3 〜銅版画とそのもととなった銅版をセットにしたユニーク作品

またモチーフとなっている猫は毛のない体が特徴のスフィンクスです。

これは、人間が長い歴史の中で愛玩用として、品種改良してきたものの象徴として選ばれたもので、人が手を加えた痕跡を示すものといえます。

< 匙 > スフィンクス #4 銅版画 エディション5

 

会場で作家の方からの解説を伺う中で、悠久の中での物質の変容と生命の因果に迫ろうとする一貫した姿勢を感じることができました。

Report&Photo by Hirokazu Nara

概要

小谷 くるみ Kurumi Kotani
個展「砂から星へ Sand to Stardust (Cosmos)」

会場:Gallery Normart
会期:2021.7.17(sat) – 2021.8.21(sat)
時間:13:00 – 19:00
休み:日曜・祝日