アートコレクター訪問
本記事はアートコレクターのお宅に訪問してコレクションを拝見する企画です。
第1回目は、12月に開催するコレコレ展に関連して、HIROさんのお宅に訪問しました。下記の記事よりご覧ください。
2回目の本記事はコレコレ展に参加するコレクター3名のうちのひとり、柵木頼人(@sander_inazuma )さんです。
コレクターインタビュー
柵木頼人(@sander_inazuma )
柵木頼人さんは、デザイナーが作成したデザイン画をもとに型紙(パターン)を作るパタンナーというお仕事をされています。
※取材は2019年12月です。
- コレクター歴は?
最初に購入した作品が2016年3月なので3~4年になります。 - コレクションを始めたきっかけは?
2015年頃に自宅と作業場を分けたのですが、オシャレな雰囲気にしたいと思い、ネットでアトリエ風景を検索していました。その中で、格好良さに惹かれたのがNIGOさんのアトリエ風景です。Andy Warholのキャンベルスープが20セット飾られていたのですが、僕もそれが欲しいと思いました。
いざ問い合わせしてみると、値段がとても高くて・・・。そこで、自分でも買えるAndy Waholのオフセットのポスター作品を探して購入しました。
振り返れば、自分にも買える価格の作品を探す事が僕にとって始めてアートと価格が結びついた瞬間でした。購入した作品を壁に掛けた時の感動は今でも忘れていません。 - コレクションのポリシーやこだわりを教えてください
一番の大きなこだわりは、平面作品しか買わないというスタンスです。
単純に絵画が好きというのもありますが、予算としての限界や、自宅の広さにも制約があるので、まずは絵画の文脈のみを自分の中で掘り下げるようにしています。
また、自宅に飾ることを前提にしているので、妻と息子を幸せな気持ちに出来るような明るい作品を買うように努めています。 - 最もお気に入りのアートピースは?
中園孔ニさんの作品です。
中園さんの作品は、購入出来るチャンスがあれば予算など関係なく買うつもりです。 - 思い出深いコレクションエピソードを教えて下さい
山本雄基さんの作品を購入した時のことです。
山本さんの作品は以前から欲しかったのですが、常に完売している作家さんで縁が無く、2018年8月に「板室温泉 大黒屋」で行われた個展の初日に伺い、ようやく購入することができました。その日は、早朝に車で横須賀美術館での中園孔二展に行き、滞在30分程でまず中園さんの作品購入を決めました。
そのまま那須塩原の大黒屋という温泉宿に足を運び、山本さんの作品を拝見しました。トークショウに参加したのですが、宿泊客でもない僕にお風呂を提供してくれたり、ご飯を用意してくれたりと、そのおもてなしに大変感動いたしました。宿泊している他のお客さんも交えて、夜空に広がる星を見る時間もありました。夜遅くまで滞在したあと、ひとり帰路に着きましたが、それらの旅の思い出とともに大切にしている作品です。 - 現在最も気になるアーティストは?
Chim↑Pomです。
数ヶ月前から彼らの作品、活動を掘り下げて学んでいます。同じ世代、同じ時代、同じ国に生きるアーティストである彼等が、作品を通じてどうやって現代を切り取るかを興味深く見ています。近々、新作を含めたプライベートビューイングを設定して貰っています。 - 期待の若手アーティストは?
やましたあつこさんと谷口正造さんです。やましたあつこさんは、ご本人の学生時代から注目していて、個展のたびに毎回見ていました。2019年11月(先月)、TAKU SOMETANI GALLERY所属の初個展では、彼女のアーティストとしての成長と、ひとつの完成を見る事ができました。
谷口正造さんの作品は、どこか自分の青春時代や幼い頃の記憶を呼び起こさせてくれます。彼は、僕がコレクションしている作家で唯一ギャラリーに属しておらず、個展も吉祥寺のカフェで行われています。そういった谷口さん独自の活動方法にも共感しています。
年末に行われるコレクション展に参加して頂けるようにお声掛けさせて頂いた、田岡智美さん佐藤絵莉香さんも学園祭などで作品に触れており、その作品に注目しています。
- リスペクトする(or気になる)アートコレクターは?
コレクター全てをリスペクトしています。
美術作品を”見る”と”買う”では、とても大きな隔たりと言うか一線があります。その一線を越えた者にしか解らない苦悩や喜びがあり、どんな作品であろうとコレクション作品を見せてもらう機会には純粋に凄いな、と尊敬しています。 - お気に入り(行きつけ)のギャラリーは?
ANOMALYと小山登美夫ギャラリーです。
ANOMALYは元々好きだった山本現代とURANOが合併した結果、このギャラリーでコレクションした作品が僕のコレクションでは一番多いです。
小山登美夫ギャラリーはまだ中園孔二さんしか買えていませんが、将来的にコレクションしたいと思っている作家が一番多く、個展のたびに足を運んでいます。また、WAITINGROOMも大好きなギャラリーです。大久保紗也、平子雄一、川内理香子、三宅砂織など、これからの日本のアートを盛り上げていくであろう作家さんが多く所属しており、とても期待しています。
コレクション紹介
拝見したコレクションをご紹介したいと思います。
1階、2階室内だけでなく、階段や廊下、キッチン、玄関など、たくさんのアートに包まれたご自宅でした。
mm’s
柵木さんがご自身のキャリアを生かし、現在取り組んでいる企画が「mm’s」というアートブランドです。
先ごろ開催された、やましたあつこさんの個展「HER」でお披露目されたその企画は、上質な生地に、何層もの版を重ねたシルクスクリーンプリントで制作されたエディション入りのTシャツブランドです。
訪問を終えて
柵木さん宅の訪問を終えて印象的だったのは、「絵画作品に絞る」というコレクションのスジが一本明確に通っていたことです。写真が何点か含まれてはいましたが、それらも絵画の文脈に乗るような作品であり、ご自宅の空間が統一されているような違和感のないものでした。また、生活を共にするご家族を意識したコレクションも印象的でした。
ご自身の職業であるアパレル分野でアートに関わりたいという想い、アーティストやアートの業界にに貢献していきたい、という願いをカタチにした新ブランド「mm’s」にも注目していきたいと思います。第一段は先ごろやましたあつこさんの個展で披露され注目を集めていました。
柵木さんはご自身のTwitterアカウントから定期的にアート情報を発信されています。ご興味ある方はフォローしてみてください。