アートコレクター訪問
本記事はアートコレクターのお宅に訪問してコレクションを拝見する企画です。
第5回目となる今回は、コレクター歴わずか1年にして約40点ものコレクション作品に到達した熊野さんのお宅にお邪魔しました。これまでのコレクター訪問企画はこちらをご覧下さい。
熊野さんは、エンターテイメント企業から不動産業、eスポーツ関連会社、WEB業界と渡り歩きながらキャリアを積んでいる30代の会社員です。また、くまのアートbotの名義でアート情報の発信をされています。
筆者とは、コレコレ展の会場でご縁が繋がり、2回目のコレコレ展にコレクター側として関わって頂くことになりました。
コレクターインタビュー

お住まいは神奈川県の金沢八景、ヨットハーバーを臨む景色の良いマンションです。
熊野さんがアートコレクションをはじめたきっかけは、今住んでいる自宅の購入がきっかけだったようです。訪問したご自宅は、中古のマンションを大がかりにリノベーションしたメゾネットタイプの1室でした。アートを取り入れることについては物件検討時から頭の中にあったようで、ご自身でリノベーションプランや内装デザインを考えた物件でした。大学で芸術領域を専攻していたこともあり、「居住空間に絵画を飾りたい」というのも自然な流れでした。
- コレクター歴は?
購入を目的にギャラリーを回りだして1年半、最初の購入から1年です。
Twitterを始めたのも、最初の購入あたりからです。 - 最初に購入したアート作品は?
川内理香子さんのドローイングです。初めてのコレクション作品〜川内理香子さん(WAITING ROOM) ※OIL美術手帳さんとのコラボ企画で購入
- コレクションを始めたきっかけは?
今住んでいる自宅の購入がきっかけです。
古いマンションをリノベーションしたので、この空間に絵を飾りたいと思いました。元々大学で芸術領域を専攻しており、アート鑑賞は好きだったので、自然な流れではありました。メゾネットタイプのお部屋で、たくさんの白い壁にアート作品が掛けられていました。
左上段:名もなき実昌(作家から直接購入) 左下段:川上喜朗(shuuue※立川)
右:山本捷平(MEDEL GALLERY SHU)※前回のコレコレ展で購入 - コレクションのポリシーやこだわりを教えてください
ポリシーがないことがポリシーです(笑)。
最近、ポリシーのようなものを考えようと思っているのですが、いいと思ったものを直感で選ぶ買い方から抜け出せていません・・・。 - 最もお気に入りのアート作品は?
自分のコレクションの中での優劣はつけていません。
その縛りがないならば、現存作家ではパッと思いつかないですが、ポール・デルヴォーの《森》という作品が好きです。あとはタマラ・ド・レンピッカやギュスターヴ・モローが好きですね。大学の時に象徴主義~世紀末芸術を卒論のテーマにしたので、19世紀末以降の時代の女性性が強く表れている作家が好きです。「ホワイトキューブ的なスペースがお気に入り」〜上階の廊下風景
水戸部春菜(下北沢B&B)※水戸部さんが学生時代お世話になっていたインターン先の本屋。店舗移転のタイミングで行われた展示にて購入。本屋ということで、本のページをめくる所作を客体として描いており、作家のルーツに触れられる作品。
- 最も高額なアート作品は?
初めて海外の作家をコレクションした作品です。
マキファインアーツさんで購入しましたが、分割で支払い中の作品になり、まだ自宅に来ておりません。こんな支払い方で申し訳なく思っているところです。支払いを終えたタイミングでお迎えします・・・。現在自宅にある作品ですと、田口由花さんの作品でしょうか。
金沢八景というところに住んでいるのですが、歌川広重の浮世絵などでも有名な風光明媚な場所でした。浮世絵を玄関に飾りたい、という想いからスタートし、詳しく調べるうちに「日本画→はやりの美人画」、という考えにたどり着きました。この家に住み始めて1ヵ月くらいしたころ、田口さんの展示があると知って、この作品と出会いました。田口由花(日本橋三越)
- 思い出深いコレクションエピソードを教えて下さい
コレコレ展にもご参加頂きますが、京都芸大(旧京造)を卒業された東慎也さんをコレクションしたときのエピソードでしょうか。
思いつきで京都まで「日帰り弾丸旅行」に行った際、ギャラリー「COHJU contemporary art」さんで50号の作品をで見せてもらい「このサイズを買える!」と思った時、大変興奮したのを思い出します。
リビングに飾っていますが、部屋に飾ることで空間がパッと明るくなり、絵の空間における影響力の強さを実感した作品でもあります。左有ともに:東慎也(COHJU contemporary art) ※左は50号
- 現在最も気になる、欲しい作家はいますか?
これも答えづらいのですが、松川朋奈さんと熊谷亜梨沙さんのお二人の作品は、女性の美しさというか、生き様のようなものがそこに現れていると思えるほど、強さと静謐さを感じており、いつか欲しいなと思っています。ユカ・ツルノ・ギャラリー
松川朋奈/山谷佑介 二人展「OBJECTS IN MIRROR ARE CLOSER THAN THEY APPEAR」正直松川さん目当てで行ったところがあるが、大変良かった
生で見て頂きたい
本当に迷っているがそもそもお金が…ない…
最近女性の生き様や心境、歴史を丁寧に紐解く作家さんに注目している pic.twitter.com/ZvziOpZzcP— くまのアートbot (@kumaaaart) June 20, 2020
あとは憧れの作家という意味で、伊庭靖子さんと工藤真紀子さん、大岩オスカールさんは学生のころからずっと好きです。(コレクターとしては遠い存在なのですが・・・) - 特に集めている作家はいますか?
今のところ、特定の作家を集めるということはやっていませんが、東慎也さんの作品は長い目で見て、可能な限りコレクションしたいと考えています。
若い作家さんが今後どうなっていくのかを初個展から追いかけられるのは現在進行形のコレクター冥利に尽きると思います。左:澤あも愛紅(児玉画廊)右:MAD DOG JONES(DIESEL ART GALLERY)
- 期待の若手アーティストは?
超若手、ということで東京藝大学部2年生の山本和真さんにひそかに注目しています。コレコレ展に推薦させて頂きました5名の作家さまも同じく注目しています。 - リスペクトする(or気になる)アートコレクターは?
今回コレコレ展でご一緒するお二人(KurosawaさんとKameiさん)は、アーティストコレクションの観点から、めちゃくちゃ先見の明がある方々だなあと思って勝手にリスペクトしています(笑)。 - おすすめしたいギャラリー、ギャラリストなどありますでしょうか?
WAITING ROOMですね。
購入経験のないコレクターにも丁寧に作品について解説いただき、アートコレクターへの入り口となったギャラリーです。美術手帳のOILとの取り組み『WORKS ON PAPER』なども初心者へ向けた企画だったので、非常に開けており、人におすすめしやすいギャラリーです。ギャラリストの芦川さんご自身のスタンスが反映されたギャラリーだなと感じています。豊田涼華(WAITING ROOM)
あとはMaki Fine Artsの牧さんも、分割払いでちまちま支払いしている僕を無下に扱うことなく、アーティストの情報をいつも丁寧に教えていただけるので、勝手に親近感を覚えております(笑)。
他には、コレクションをはじめて間もない方におすすめしたいギャラリーとしてTAKU SOMETANI GALLERY、EUKARYOTEをプッシュします。新人作家のチョイスが素敵で、若手作家が多いので、買いやすい価格帯が多いです。左:西原彩香(児玉画廊)
右:大久保紗也(WAITING ROOM ) - 額装についてのお考えを聞かせてください
こだわりは正直あまりありません。ドローイングは、世界堂で売っている「桜三角」という額縁のヘビーユーザーで、キャンバスの額装は基本行わないスタンスです。
色は木地と黒色があり、作品に合わせて選んでいます。「桜三角」はとても安く仕上がるので、非常に重宝しています。桜三角の額装
上:小西景子(TAKU SOMETANI GALLERY)
下:内田ユイ(RED AND BLUE gallery)三角形のフレーム:主に世界堂で購入されているそうです。
キャンバス作品は家具用のフックで直に掛けてありました。
左右共に多田恋一朗さんの作品(TAKU SOMETANI GALLERY) - 保有作品の保管場所についてお聞かせください。
まだ家でこと足りますが、いずれ足りなくなるときのことを考えています。
[twenty20 img1=”31853″ img2=”31854″ offset=”0.5″ before=”作品の箱が徐々に増えて行っているようです。” after=”何カ所かに分けて保管されていました。”] - 倉庫はお持ちですか?或いは検討していますか?コレクターのネットワークを駆使した共同倉庫や企業への貸し出しなど、うまく仕組化できないかな・・・とか考えています。
1年で40作品を収集した熊野さん。
以下にそのコレクション作品の一部をご紹介したいと思います。※順不同

BIEN(オン・サンデーズ)

品川はるな(EUKARYOTE)

網代幸介(新宿眼科画廊)

山元彩香(タカ・イシイギャラリー)

コミッション作品〜内田ユイ

コミッション作品の下絵

右上:城蛍(TRiCERA Museum)
右下:オートモアイ(GALLERY X | 渋谷PARCO)

さいあくななちゃん(オンサンデーズ)

アンジュ・ミケーレ(シュウゴアーツ)

石井海音(芝田町画廊)

左:村田啓(児玉画廊)右:谷原菜摘子(MEM)
現在は、本職の会社員生活とのパラレルワークの選択肢として、ギャラリーの立ち上げを視野に計画を立てている熊野さん。コレクションしてまだ日が浅いながらも、若手作家とアートに縁遠い方々との橋渡しができるようなスペースの運営を考えているそうです。
※筆者注( )は購入場所です。
熊野さんが参加するコレクター展の情報はこちらより参照下さい。