カタストロフと美術のちから展
来たる2018年10月6日、六本木ヒルズ・森美術館15周年記念展として「カタストロフと美術のちから展」が森美術館(六本木・東京)で開催されます。
先行き不透明な混沌とした時代のいま、カタストロフ(社会の大変動)に対して、アートはどうやってその中に存在意義を反映させていくことが出来るのか、正面から考える機会になりそうな展覧会です。メインビジュアルにもあるオノ・ヨーコさん作品「難民船」のインスタレーションが非常に楽しみですね。
東日本大震災やアメリカ同時多発テロ、リーマンショックなど世界各地で絶えず発生するカタストロフ。多くのアーティストがこのような悲劇的な災禍を主題に、惨事を世に知らしめ、後世に語り継ごうと作品を制作しています。その私的な視点による記録は、マスメディアの客観性を重んじる記録とは異なり、多勢の世論の影に隠れて見えにくくなったもう1つの事実を私たちに提示します。そこにはまた、社会の矛盾や隠蔽された問題の可視化を意図するものや、個人的な喪失や悼みを表現するものもあります。
カタストロフは私たちを絶望に追い込みますが、そこから再起しようとする力は想像力を刺激し、創造の契機となることもまた、事実なのではないでしょうか。東日本大震災以降、国内外の数多くのアーティストが復興・再生への願いを込めて理想や希望を描き、より良い社会のために新しいヴィジョンを提示しようと試みています。
戦争やテロ、難民問題や環境破壊など、危機的な問題が山積する今日において、美術が社会を襲う大惨事や個人的な悲劇とどのように向き合い、私たちが再生を遂げるためにどのような役割を果たすことができるのか。本展は、負を正に転ずる力学としての「美術のちから」について注目し、その可能性を問いかけます。〜森美術館「カタストロフと美術のちから」公式サイトより
2部構成
本展覧会は大きく2つのブロックに分けられています。ひとつは「記録」することについて、もうひとつは「創造的なアプローチについて。過去から未来へと繋がるような前向きさを感じます。
セクション 1
セクション1では、地震、津波などの天災や事故や戦争といった人災から、個人的な悲劇を表現した作品までを幅広く紹介しながら、「美術が惨事をどのように描いてきたのか」に焦点を当てます。
惨事を扱った作品と一言で言ってもその手法はさまざまで、写実、フィクション、極端な抽象化など多岐に渡ります。
セクション 2
セクション2では、破壊から創造を生みだす「美術のちから」を紹介します。
大惨事や悲劇は私たちを絶望へと突き落としますが、その一方で惨状が作家の作品制作の契機となることも事実でしょう。
アーティストの豊かなイマジネーションによって制作された、再生、復興、より良い社会が表現された作品は、私たちに理想の未来について考える想像力を与えます。
アートというカタカナ言葉を使用することではなく「美術のちから」と表記しているところに、マジメに向き合うようなニュアンスが含まれている印象です。多くの作品を通じて現代社会を改めて確認することで、何らかの気付きや行動に繋がるような事になるのか?展示の内容がとても興味深いですね。2018年10月の開催日まで楽しみに待ちたいと思います。
概要
展覧会名:カタストロフと美術のちから展
会場:森美術館(東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階)
企画:近藤健一( 森美術館キュレーター)
会期:2018年10月6日(土)―2019年1月20日(日)
開館時間:10:00-22:00|火 10:00-17:00
*いずれも入館は閉館時間の30分前まで *会期中無休
入館料:一般 1,800 円、学生( 高校・大学生 )1,200 円、子供(4 歳―中学生 )600 円、シニア(65 歳以上 )1,500 円
出展アーティスト・プロジェクト
シヴァ・アフマディ
ミロスワフ・バウカ
坂 茂
Chim↑Pom
トーマス・デマンド
クリストフ・ドレーガー
藤井光
畠山直哉
モナ・ハトゥム
平川恒太
トーマス・ヒルシュホーン
堀尾貞治
ハレド・ホウラニ
ホァン・ハイシン
HYOGO AID ’95 by ART
池田 学
アイザック・ジュリアン
ヒワ・K
加藤翼
オリバー・ラリック
エヴァ&フランコ・マッテス
宮島達男
宮本隆司
オノ・ヨーコ
ジョルジュ・ルース
カテジナ・シェダー
ヴォルフガング・シュテーレ
ヘルムット・スタラーツ
スウーン
武田慎平
田中功起
ジリアン・ウェアリング
米田知子
他
※画像提供:森美術館