【News】 17年ぶりの美術館大規模展〜「岡﨑乾二郎 ― 視覚のカイソウ」 豊田市美術館

岡﨑乾二郎 ― 視覚のカイソウ

造形作家、岡﨑乾二郎さんの個展が豊田市美術館で開催されます。

豊田市美術館では、2017年に、岡﨑乾二郎の企画監修による展覧会「抽象の力」が開催されました。
展覧会「抽象の力」は、抽象芸術が本来もっていた現実的で具体的な力を明らかにし、一元的なモダニ ズムの美術史観を軽やかに翻すものとして、多くの刺激と新たな知見を私たちにもたらしました。 その次なる試みとして、岡﨑乾二郎さんの作品とその活動の全貌をご紹介する個展です。

「岡﨑乾二郎 ― 視覚のカイソウ」見どころ

本展の見どころを以下にまとめました。

・2002年のセゾン現代美術館以来17年ぶりとなる、美術館での大規模な個展。
豊田市美術館の ほぼ全館を使用し、大小様々な部屋ごとに次々と展開する展示を体感していただきます。

・絵画、彫刻に加え、レリーフ、テキスタイル作品、タイル、ドローイング、ポンチ絵など、多岐にわたる作品を展示
岡﨑乾二郎の多面的活動を余すところなく紹介します。

・初期代表作〈あかさかみつけ〉に先立つ、原点的作品〈かただみのかたち〉を展示。1979 年のBゼミ展以来、初の展示となります。

・新作絵画、新作彫刻に加え、新たなタイル作品やドローイングも展示します。

・岡﨑乾二郎が、主著『ルネサンス-経験の条件』で明晰な分析を行った「ブランカッチ礼拝堂壁画」を再現
AR(拡張現実)の技術を用い、各壁画の登場人物たちの複雑な重なり合いを体験していただきます。
それにより、岡﨑乾二郎の絵画やレリーフ自体が、同じく、様々な色や形の交換・交通によって構成されていることが実感されます。

岡崎乾二郎《あかさかみつけ》1981年 アクリル、ポリエチレン 高松市美術館蔵

岡崎乾二郎《まだ早いが遅くなる》 1986年 綿布、絹 大原美術館蔵

左:岡崎乾二郎《「きみにはわからないわね。こどもだもの」こどもはもじもじしながら、しばらく顔をうごかしていたけれども、ふいに視界からこどもの姿が消えて、ちらりとお尻が水面をよこぎり、もう次の瞬間、水中には白っぽい影があって底に向かって沈んでいった。澄んだ水面に、ひとつぶ雨が落ちたように、幾重にも同心円がひろがっていく。今気づいたのだが、奇妙なことは何ひとつなかった。たぶん真夜中でも眼は見えるのだろう。昼と夜は分かちがたく繋がっていたのだし、涙でガラスが曇ってしまっても眼鏡に瞼はないのだから。「涙でぜんぜん見えないや。だから手を伸ばし、なるべく近くの物を掴んでみるよ」
右:岡崎乾二郎《「あなたなら聞こえるでしょう。おばさん」婦人はもの思いにふけるかのようにおし黙っていたけれど、ついに彼女は壁に向かって大きなあくびをしてしまう。その口を瞬く間に彼女自身の手が蓋をする。壁には月光をあびた窓の形がくっきりと浮きでている。葉を落とした木々の裸の枝組みがかすかに揺れながら、その上に影を落とす。遠くで電話が鳴り、壁一枚隔てた隣室から誰かの声が聞こえた。同時に同じ場所のふたつの相反する悩みに心が奪われているだろう。自分の顔が見えたなら、すべては理解できるはずなのに。「自分の名前まで忘れちゃった。でも、この部屋に誰が住んでるのかは知ってるわ」》 1997年 アクリル、カンヴァス(2枚組) 豊田市美術館蔵

岡﨑乾二郎《「手出しをするな。ということこそ、私たちにとって唯一の言葉である」ぐんぐん近づいてきたのよ。でもこなかった。音もしなかったし、まだ明るかった。そんなにあんまり呼ばないで。いま自分から行こうとしているのだから。なんであんなことを彼が言っていたのかわかったわ。 然るにその日の午後になって、わたしたちの住んでいる住宅地のすぐ近くに、落ちたのです。ええ、私のしっている人は一人だけです。熱エネルギーの移動。これだけは自然のなりゆきにまかせるよりほかはない。いや、やはりそれは自然のしわざではない、化学者のしわざです。 「手の下しようもなく、お行儀がいい。だからどうかわたしを日陰におかないで。」あんなことを、なんで彼がいっていたのか分かるでしょう?》1990-91年 鋼、木 大阪中之島美術館蔵

岡﨑乾二郎《テウミンとたみをとむらって バツサイとつみをきりしは》 2000年 セラミック 東京国立近代美術館蔵

岡﨑乾二郎 左から《出来/ルーテルの食卓》、《河内(ハノイ)/地球上ではじめての聲》、《瑠璃/西方の溌剌》、《戸口/雑巾と棕櫚の靴拭い》

岡﨑乾二郎《ポンチ絵》2014年 色鉛筆、紙 個人蔵

岡﨑乾二郎《タメになるってどういう意味?/狐の才気》2018年 アクリル、カンヴァス BBar collection

岡﨑乾二郎《Physiognomy  2016年 インク、紙 株式会社タグチプロジェクツ蔵

左:岡﨑乾二郎 《あなたはこの水を乾かし、あるいは飲み干すだろう。けれど決して水は滅びない。水は姿を変え移動しただけである。水は乾くことなく、水がのどの渇きを癒すのだ。と似て、わたしの指一本いや手足を切り落とそうと、わたしは切り落せない。姿を変える勝手気ままが水ではなく、わたし(の赤い水、血)ではない。水の中に水の姿に関わらぬ何か、として水の霊が宿っている(水が弾きだす波と早合点しないように。波は音楽のようにあちこち拡がり増えたり減ったりするが、水の霊は増減せず分割もされない)。わたしは水の中にあり、泳ぎ、まどろみ、そして目覚める。》
右:岡﨑乾二郎 《宙空の箒/アウフヘーベン》2016年 アクリル、カンヴァス 個人蔵

造形作家、岡﨑乾二郎さんの活動を網羅的に鑑賞出来る貴重な美術展になりそうです。期待したいと思います。

概要

岡﨑乾二郎 ― 視覚のカイソウ

会場:豊田市美術館
会期:2019年11月23 日(土)~2020年2月24日(月・祝)
休館日:月曜日、12月28 日(土)〜1月4日(土)
*ただし 1月13日(月・祝)、2月24日(月・祝)は開館
開館時間:10:00〜17:30(入場は午後5時まで)
観覧料:一般:1,300 円(1,100 円)/高大生 900 円(800 円)/中学生以下無料 ※( )内は前売り及び20名以上の団体料金
主催:豊田市美術館
協力:株式会社 LIXIL、株式会社中川ケミカル