【News】展示作家陣がスゴい!〜「終わりのむこうへ : 廃墟の美術史」@渋谷区立松濤美術館

廃墟をテーマにした作品の展覧会「終わりのむこうへ : 廃墟の美術史」が2018年12月8日から渋谷区立松濤美術館で開催されます。
この展覧会の作家陣が素晴らしく、出品画像が届きましたのでご紹介したいと思います。

終わりのむこうへ : 廃墟の美術史

 

栄華や文明の痕跡を残しながら崩れ落ちようとする建造物や遺跡。
「廃墟」は西洋美術のなかで、風景画の一角にくりかえし描かれていました。18世紀から19世紀にかけて、興味深いことにいわゆる廃墟趣味が流行すると、「廃墟」は絵画の主役の地位を確立していきます。
「廃墟」を愛でること、描くこと-この美学は、近代に日本の美術のなかにも伝播しました。廃墟の画家として名を馳せた18世紀のユベール・ロベール、版画家ピラネージから、19世紀のコンスタブル、20世紀のアンリ・ルソー、マグリット、デルヴォー、そして日本の江戸時代から近現代の画家たち、亜欧堂田善、藤島武二、岡鹿之助、元田久治、大岩オスカール、野又穫まで、廃墟の主題は描き継がれているのです。
なぜ人々は、流れる時間のなかで滅びた、またはいつか滅びてしまう、遠い昔のあるいは遠い未来の光景に、惹きつけられるのでしょう。
この展覧会では、西洋古典から現代日本までの廃墟・遺跡・都市をテーマとした作品を集め、これら「廃墟の美術史」をたどります。

廃墟ブームは400年前から?

本展で一番古い作品は、なんと 17 世紀のもの。
当時から、 廃墟の絵で名を馳せていたオランダのシャルル・コルネリス・ ド・ホーホなどの希少な作品も出展されます。

シャルル・コルネリス・ド・ホーホ《廃墟の風景と人物》 17 世紀 油彩、板 東京富士美術館 ©東京富士美術館イメージアーカイブ/DNPartcom

「廃墟の画家」たちの登場

18世紀には「廃墟」の 主題を生涯をかけて追い 求める画家たちも登場します。

ユベール・ロベール《ローマのパンテオンのある建築的奇想画》 1763 年 ペン・水彩、紙 ヤマザキマザック美術館

「廃墟のロベール」といわれたフランスのユベール・ロベール、イタリアの版画家ピラネージらによる、現実と空想の入り 混じるその雄大な風景をご覧ください。

ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージ《古代アッピア街道とアルデアティーナ街道の交差点》『ローマの古代遺跡』より 1756 年刊 町田市立国際版画美術館

「廃墟」の美学、 日本にも伝わる?

一方で日本の美術史のなかでは、あえて「廃墟」を描いたり、愛でる、といった習慣はほとんどありませんでした。
ところが、江戸時代から西洋美術に接触するなかで、「廃墟の美学」は、ひそやかに日本の美術のなかに忍び込んでくるのです。 例えば、西洋では 18 世紀から19 世紀に廃墟趣味が興隆しますが、その同時代の輸入銅版画に基づいて 制作されたために、ローマの古代遺跡が数多く登場する江戸時代後期の浮世絵、銅版画など、珍妙な世界が展開されます。
また、明治時代以降、海外に出た日本人画家たちは、 廃墟というものが「絵になる」ことに気づきます。
そして、自身の目で見た廃墟、遺跡、古城などを主 題として選びとり、洋画や日本画で描いていくことになります。

藤島武二《ポンペイの廃墟》 1908 年頃 油彩、板 茨城県近代美術館

シュールな「廃墟」たち

20世紀前半のシュールレアリスム(超現実主義)を経て、絵画は現実ばかりではなく人間の内的世界をも描き出すようになっていきます。
このなかで登場する廃墟は、かつての「昔日のもの」という時間性や場所性を失い、何時とも何処ともわからぬ空間へ鑑賞者たちをいざなうようになります。

榑松正利《夢》 1940 年 油彩、カンヴァス 練馬区立美術館

遠い未来の「廃墟」を描き出す画家たち

そして現代、作家たちは未来の「廃墟」をも描き出すようになりました。
「今」はかならず「過去」になる、その先を見据える彼らの目を通して、どんな光景が見えてくるでしょう。
本展が開催される渋谷に、想像上の廃墟を重ねあわせる元田久治、また展覧会にあわせ「終わりのむこう」を描き出す野又穫の新作などに、ぜひご注目ください。

野又 穫《交差点で待つ間に -Listen to the Tales-》 2013 年 アクリル、カンヴァス ©Minoru Nomata

元田久治《Indication: Shibuya Center Town》 2005 年 リトグラフ

ほかにも、大岩オスカールさんなど錚々たる作家さん達がラインアップされている本展、廃墟マニアだけでなく注目の展覧会になりそうです!

大岩オスカール 《動物園》 1997年 油彩、カンヴァス 東京都現代美術館寄託

 

概要

「終わりのむこうへ : 廃墟の美術史」
会場:渋谷区立松濤美術館
会期:2018年12月8日(土)~2019年1月31日(木)
入館料 一般500(400)円、大学生400(320)円、
高校生・60歳以上250(200)円、小中学生100(80)円
※( )内は団体10名以上及び渋谷区民の入館料
※土・日曜日、祝休日及び夏休み期間は小中学生無料
※毎週金曜日は渋谷区民無料
※障がい者及び付添の方1名は無料
休館日 12月10日(月)、17日(月)、25日(火)、12月29日(土)~1月3日(木)、1月7日(月)、15日(火)、21日(月)、28日(月)
(会期中一部展示替えあり)
主催 渋谷区立松濤美術館、読売新聞社、美術館連絡協議会
協賛 ライオン、大日本印刷、損保ジャパン日本興亜

●出品作家:
シャルル・コルネリス・ド・ホーホ
ヨハネス・ライシャー
リチャード・ウィルソン
ジョヴァンニ ・バッティスタ・ピラネージ
ユベール・ロベール
歌川豊春
亜欧堂田善
トマス・ガーティン
ジョン・コンスタブル
ジョン・セル・コットマン
ジョン・リネル
アシル = エトナ・ミシャロン
ウジェーヌ・イザベイ
アントニオ・フォンタネージ
工部美術学校生徒
百武兼行
アンリ・ルソー
松岡寿
藤島武二
澤部清五郎
ジョルジオ・デ・キリコ (工房)
小野竹喬
不染鉄
ポール・デルヴォー
ルネ・マグリット
岡鹿之助
北脇昇
大沢昌助
中尾彰
矢橋六郎
難波田龍起
伊藤久三郎
今井憲一
山口薫
浜田浜雄
槫松正利
池田龍雄
麻田浩
野又 穫
大岩オスカール
元田久治