【読書評】現代アートへの第一歩〜宮津大輔「現代アートを買おう!」

アートって難しい

CDやDVDを購入するように、気軽に所有することが難しいアート作品。
芸術や美術といった、一段高いステージにあるようなイメージとともに、一般の生活者にとって縁遠い存在になっているようです。特に日本では、世界的に見てもアート作品の流通額は驚くほど低い数字に留まっています。

一方では、入場までに「5時間半待ち!」という歴史的なヒットとなった2016年の「生誕300年記念 若冲展(東京都美術館)」や2017年の「草間彌生展」「怖い絵展」、2019年の「塩田千春展」など、ブロックバスター展を中心に美術館への来場者は好調に推移しています。

アートに興味関心はあるものの、作品購入へのハードルが立ちはだかっている現状。このミスマッチはどういった現象として捉えたら良いのでしょうか?今回ご紹介する「現代アートを買おう!」 を読んで、その仕組みが分かったような気がします。

「現代アートを買おう!」 宮津 大輔

著者の宮津大輔さんは、一般的なサラリーマンとして会社で働きながら、15年間で300点の現代美術品を買ったアートコレクターです。

アート好きが高じて、自宅をフランス人アーティストに依頼するまでに登り詰めた宮津さん。現代アートを買う醍醐味を「作家との交流」と言います。

同時代を生きるアーティスト本人と話せることは、作品を楽しむ上で大切なエッセンスだと本著を読み進めて感じました。作品を買うことで作家本人たちの活動も支援できますし、アートを楽しむ幅が世界がグンと広がっていくことを感じます。

また、本書では、宮津大輔さんの代名詞でもある草間彌生さんの歴史的な作品をコレクションしたエピソードが克明に記述されていて、その臨場感にハラハラさせられます。バスキアを123億で競り落とした前澤友作さんのような大富豪ではなく、一般のサラリーマンであることの親近感が実録記としての面白さを演出しています。

コレクション作品を美術館に貸し出しした事例〜展示キャプションに「宮津大輔」とクレジットされています。

草間彌生《無限の網》1965年 宮津大輔氏所蔵 〜STARS展・展示風景(森美術館・2020年開催)

現代アートを買ってみよう

SNS全盛の現代ですから、展覧会やギャラリーでの触れ合いだけでなく、ネット上での交流も可能な時代です。アート作品の世界でも、インターネット通販という手段も機能しはじめているようです。

閉鎖的で入りづらいギャラリーよりも、気軽に作家や作品と触れ合う機会や購入出来る場所が増えていくことは、とても良いことだと思います。

本著の意義は現代アートを買ってみよう!というきっかけが生まれる良著です。
アートの世界を少しでも覗いて見たい方にとってもオススメ出来る本です。
是非ご一読してみてはいかがでしょう?