【個展】世界へ歩む、20代最後の挑戦〜 井田幸昌「King of limbs」Kaikai Kiki Gallery

井田幸昌「King of limbs」

井田幸昌さんの20代最後の個展「King of limbs」にお伺いしました。会場はカイカイキキギャラリーです。

Kaikai Kiki Gallery

村上隆さんが運営するギャラリーで井田幸昌さんの個展が開催することになるとは思いませんでした。井田ファンとしては待望の展示です。

井田幸昌“King of limbs”

井田幸昌さんは、「一期一会」をメインテーマに、「end of today」シリーズを中心に自然や肖像画をモチーフに制作を続けてきました。

日本での個展は2019年6月、銀座蔦屋書店のGINZA ATRIUMで行われた「Portraits」でした。それから約8ヶ月後の日本開催個展です。

ステイトメント

私はこれまで「一期一会」をメインテーマに、自然や、肖像画をモチーフとした絵画制作をしてきました。「一期一会」とは、一生涯にただ一度会うかどうかわからぬほどの縁や、出会いを大切にすることを意味します。これは日本の古典的な概念です。
今回、新たなシリーズとして風景をモチーフとした抽象画に挑んでいます。自然から感じ得た音、色彩、リズム、構成、光。刻一刻と移りゆくそれらを刻むようにして描いています。

絵具をもって自然を刻む。作品をもって世界を創る。今この時、この世界に対峙し、今しかつくれないものを残していきます。

先日私はSavernake Forestとストーンヘンジに行きました。自然がつくり出す無限と、その宇宙感に圧倒されました。それらを表現したかった私はいざ画面に向かう際に、いつも私が描く際に構築していこうとする「形・シルエット」を使う必要性を感じなかった。
それは色彩と線のみになっていったのでした。
無限の色彩と、腺的構成、そして絵具の持つ物質としての質量はまさに宇宙であり、極端に現実的です。そしてそれは私をどこまででも羽ばたかせてくれる。其れが今回の抽象画シリーズに集中した理由です。

絵を描く時、私の存在を許容してくれる場なら私はどこへでもいけます。
絵画はまさに絵画であるのだから、それを認め、表現者としてのさらなる高みへと向かいたいのです。対峙するものと、私との間に発生する破綻と構築。存在としての拮抗。

それは現在に限らず、過去あるいは未来であれ限り無く、自由なのです。

ギャラリー入口

地下1階のギャラリー入り口を入ると、右手にブロンズの彫刻が展示されていました。
来場者を厳かに出迎えるような視線と佇まいです。

《Study for the Pope》 440×250×440mm bronze 2020年

前室

カイカイキキギャラリーの前室に入ると、2.4m×4mの巨大な作品が視線に飛び込んで来ます。美術館に収蔵されるような作品だなぁ・・・というのが直感的に感じた第一印象でした。

井田幸昌《Symphony No.1》2020年 2400mm×4000mm @1000

すぐ横の壁にはこれまた巨大な作品が2作品並んでしました。

左《Nagano》2020年 Oil on canvas(panel)@870

さらに隣の壁には3つの作品が並んでいました。
いずれの作品も、ギャラリーの壁を正確に測ったようなサイズ感です。
満を持して計画的に作り上げた作品という印象です。

展示風景

展示風景

これらの抽象絵画は、本展で初めて大きく発表されたシリーズです。大舞台でありながらも、こうした作品で攻めてくるあたりの度胸と腕力にはただただ脱帽です・・・。作品の圧倒的な力強さを感じると同時に、豪快でありながらも丁寧で緻密な準備が行われてきたことを感じました。

展示風景

和室前

畳が敷かれた和室に入る前のスペースにはおなじみF4サイズの《end of today》シリーズと珍しい円形の抽象作品です。

展示風景

「一期一会」をテーマとし、ライフワークのように描き続けるこのシリーズが大好きです。
比較的短い時間で描かれた小作品ですが、ひとつひとつの細かなタッチや絵具の痕跡に井田さんの粋が詰め込まれていて、狂おしくなるほどエモーショナルな鑑賞体験に繋がっていきます。

《end of today》シリーズ

最終日に再訪したところ、展示替えがありました。

井田幸昌《end of today》F4

和室

和室コーナーには、別の抽象画シリーズなどが展示されていました。

展示風景

展示風景

展示風景

井田幸昌《Sunset view of Karakida》2020年 270mm×360mm

井田幸昌《King of limbs》2019年 270mm×360mm

井田幸昌《Monkey Puzzle》2019年 300mm×360mm

井田幸昌《Ground》2019年 270mm×360mm

展示風景

井田幸昌《Savemake forest》2019年 940mm×1200mm

《Savemake forest》※Detail

《Savemake forest》※Detail

展示風景

彫刻

展示風景

《Pope》 W85×D145×H125cm bronze 2020年

《Pope》※Detail

展示風景

展示風景

《Study for the Pope》 390×210×220mm bronze 2019年

《Study for the Pope》

《Study for the Pope》後方下より撮影

まとめ

直近のオークションでは高額な落札価格を残し、本展もオープニング時にほぼ完売状態という人気作家です。
周囲の喧噪と距離を取るように、本展の作品にはこれまでのスタイルを振りほどくように、挑戦的な作品が並びました。熱を帯びたそれらの作品は、スケールの大きな大作の絵画や見応えのある彫刻をはじめ、日本でこれ以上の個展を開催するのは、美術館くらいしか残されていないようなインパクトでした。

会期中に30歳を迎えた井田幸昌さん、まだまだこれから沢山の作品を私たちに見せてくれると思います。世界に向けて、歩みは強く、確実になって来たように感じました。

概要

King of limbs
井田幸昌
会場:Kaikai Kiki Gallery
会期:2020年2月13日ー2020年3月3日
時間 :11:00〜19:00
閉廊日:日曜・月曜・祝日
レセプション:2020年2月13日(木)18:00〜20:00