額装のアクリル面・汚れや小傷のメンテナンス方法
先日のコレコレ展で額装店のnabis(蔵前)さんをお招きして、額装に関わるトークイベントを開催しました。
イベントの前に、「額装に関する悩みや疑問について、聞きたいこと知りたいことを事前に募集します」という投稿フォームを用意したところ、多くの質問を頂きました。
その中で最も集まったのが「アクリルボックスやアクリル板」の取り扱いに関するものでした。
額装する際、ガラスと比較した場合、アクリル板は多くの点で優位に立ちます。
- 軽量である
- 割れにくい
- 紫外線カットの効果がある
- 透明度が高い
- 低反射のアクリル板もあり、鑑賞に適している
一方で、デメリットとして注目されているのが、傷が付きやすいという点です。
そのため、数多くのアートコレクターはアクリル板の傷に対する悩みを抱えているようです。実際に来た質問の一部を以下にご紹介します。
- 額装のアクリル面が汚れた場合の最適な対処方法が知りたいです
- アクリルの上手な手入れ方法が知りたいです。柔らかい布で拭いても細かい傷がついちゃうので。
- アクリルの磨き傷をキレイに消す方法はあるのでしょうか?
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以前、アクリル表面の小傷が気になったのでアクリル用研磨布?的な物を通販で購入し磨いてみたところ、逆に筋状の磨き傷だらけになってしまったことがありました。
いかがでしょう?皆様も同じような疑問を持ったことあるのではないでしょうか?
アクリル板にホコリや小傷が付く原因
アクリル板は樹脂で作られており、帯電しやすく、静電気によってホコリを吸着する性質があります。そして、傷が付きやすい柔らかい素材で作られています。
ホコリが気になって雑巾やティッシュなどで拭こうとすると、付着するホコリによって樹脂面に傷が付いてしまう。こういった性質を持っています。
帯電→静電気によってホコリが吸着→雑に拭く→ホコリによって小傷が発生
何かの衝撃で大きな傷や割れが発生するよりも、一般的には上記のような流れで傷が付いてしまうことが多いのでは無いでしょうか?
アクリル板に付いた小傷、スリ傷について
本サイトの出した結論から申し上げると、アクリル板に付いた小傷は修復できません。
残念ながら、一度でも傷が付いてしまうと修復は不可能と考えた方が良さそうです。
本記事では、傷の修復や再生方法ではなく、小傷を付けないで汚れを落とすメンテナンス方法をまとめた記事になります。
汚れ落とし
エアダスター
アクリル面に摩擦が生じると傷が付くので、非接触で汚れを落とすのが無難な方法です。
多くのギャラリーでも使われている「エアダスター」の利用がオススメです。
ギャラリストに聞いたところ、ギャラリーでは額装していない美術作品に使用することも多いと聞きました。
なお、付属のノズルを付けて使用すると、ノズルが飛ぶ場合も報告されています。ご注意ください。
水洗い
水洗いは帯電防止と汚れ落としに有効です。
石鹸または中性洗剤を含んで優しく汚れを落とすのも良いでしょう。手洗いや柔らかい布と一緒に洗っても構いません。※もちろん作品は外して洗いましょう。
アクリサンデー 静電気防止ポリケア
作品を外したくなければ、水を含んだ柔らかい布で汚れを落とすのも良いでしょう。
また、アクリル専用のクリーナーも販売されています。販売店や額装店などとご相談の上、使ってみるのはいかがでしょうか。
例えば、以下の商品はアクリルに特化した会社「アクリサンデー」の製品ですので、安心感があります。
筆者も購入しました。
クロス
最も簡単な方法はクロスで拭き取る方法だと思います。眼鏡やカメラレンズなどを拭くようなクロスを使用するのが一般的でしょう。
ただし、乾いた状態でホコリを拭き取る場合には、慎重に考える必要がありそうです。
ここで特に強調したいのは、ホコリや、クロスに付着していた汚れなどでごく細かな傷ができてしまう可能性もあるので注意が必要、ということです。
馴染みの額装店さんからは以下のクロスをオススメされました。海外の商品で、帯電防止のクロスです。
筆者は、以下のようなクロスで汚れを取っております。目が細かくて、優しく汚れを落としてくれます。
これらのクロスを使用する際には、先にもご紹介したエアダスターや、水分を含んだ布で極力ホコリを落とした上で、ごくごく優しい力で拭くようにしています。
力の強さがポイントだと思います。決して強い力で拭こうとすることのないように、気をつけて頂きたいと思います。
傷が付いたら・・・
万が一傷が付いてしまった場合、以下のような商品で修復する選択肢もあります。
しかし、前述したように、アクリル板は「一度でも傷が付いてしまうと修復は不可能」と考えられます。先にご紹介した額装店の方によると「修復材の使用はオススメ出来ない」とのコメントでした。かえって傷が広がってしまうことにも繋がりそうです。使用の際には覚悟を決めて使って頂ければと思います。
アクリル面は、多少の小傷が付くのは致し方ないと割り切り、修復よりも傷を付けないようにメンテナンスする、ということで締めたいと思います。
素敵なアートライフをお過ごしください。