【KUAD ANNUAL 2019 宇宙船地球号】線描から映像、立体へ〜中澤ふくみ《ある町 A町》@東京都美術館

中澤ふくみ(京都造形芸術大学)

2019年の2月は藝大や五美大展、京都造形大学など、多くの卒業制作展に足を運びました。
技術の巧拙や発想力、作品に込められたメッセージなど、今の学生たちがどのようなスタンスで自分たちのアートに向き合っているのか,沢山の才能に触れる機会となりました。
その中で、最も心に残った作品のひとつが、京都造形芸術大学を卒業する中澤ふくみさんの作品《ある町 A町》を含めた作品です。

KUAD ANNUAL 2019 宇宙船地球号〜東京都美術館

京都造形大学での卒展でも鑑賞しましたが、東京都美術館で開催された「宇宙船地球号」の展示の方が素晴らしかったので、本記事ではこちらをご紹介させて頂きます。

中澤ふくみさんの出品3作品は《ある町 A町》《ある町 B町》《ただ蚊が飛んでいる》

企画展「KUAD ANNUAL 2019 宇宙船地球号」は、京都造形芸術大学教授である片岡真実さんが同大学の卒制作品をキュレーションする企画展です。中澤ふくみさんは、展示された24組32名の作家の中に選ばれました。

中澤ふくみ《ある町 A町》 展示風景より

中澤さんは和紙に描いた大量のドローイングをアニメーション作品として映像化します。
映像化が完成すると、用いた和紙ドローイング全てを糊で貼り合わせ、1つの塊とした立体作品として最終的にパッケージングされます。
和紙の平面作品が動き、時間や厚み、重量を伴うことで、生き物としての確かな存在を表現しています。

吊り下げられた和紙に後ろから映写

アニメーション化された作品の中のキャラクターは非常に不可思議な形状やモーションで、こちらの予測を超えた生物として動き回ります。意外性を含んだ登場モデルのアイディアも中澤作品の魅力の1つです。

和紙の質感が作品と相性が良く綺麗な映像でした

自身の体を変形させて、様々な用途の道具のようなものに成り変わった人々を描いています。
モチーフとなるキャラクターなどの発想が面白くて引き込まれていきます。

《ある町 A町》立体作品

最も大きな作品《ある町 A町》の立体作品は70kgを超える重量になるそうです。
映像作品と立体作品が一体となって1つの作品として存在します。映像作品のエディション出しはしないそうです。

左:《ただ蚊が飛んでいる》右:《ある町 B町》

中澤さんのドローイングブックを拝見すると、生き生きとした線描のドローイングが様々な形態を作っていてとても興味深く見ることが出来ました。
線描にはとても自信を持っているようで、どの絵も生き生きとした線が踊っていました。

デスクに並べられた作品制作における関連資料等

線描の習作が所狭しと描かれていました

上手いなぁ・・・と感心しました

鳩2羽が喧嘩する写真撮影〜形態の美について

卒業後は海外に渡たり、作家活動としての可能性をさらに追求していくそうです。
今後、どんな作品が登場するのか、とても楽しみな作家さんです。

中澤ふくみ公式サイト
※映像作品も見ることが出来ます。

概要

KUAD ANNUAL 2019 宇宙船地球号
会場:東京都美術館1階 第2展示室・第3展示室
期間:2019年2月23日(土)~26日(火)
時間:9:30~17:30(最終入場時間 17:00)
出展作家:伊地知七絵/猪花茉衣/内田恵利/大田真由/岡田千裕/桑原ひな乃/髙坂彩乃/小谷くるみ/小西健太朗/近藤岳/斉藤七海/志村茉那美/下寺孝典/塚本淳/津和沙奈/中川明衣/中澤ふくみ/丹羽優太/延彩花/長谷川拓海/村片信亮/山本捷平/米村優人/涌田千尋/Hattori Studio(有松歩美、木下萌、渕田詩織、宮城巧、毛利優花、森井美衣、森田州一、吉田瑞紀)