【超速レポート】混雑必至!?大満足の企画展「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」@東京都美術館

奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド

2019年2月9日(土)、雪の舞う東京上野、東京都美術館にて展覧会「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」が開催されました。

本展のタイトル「奇想の系譜展」は、美術史家・辻惟雄氏が、今から半世紀近く前の1970年に著した『奇想の系譜』から来ております。
1冊の本のタイトルが展覧会の名前として採用された例は、最近ですと「怖い絵展」が記憶に新しいですが、日本絵画の展覧会では初めてのことです。

『奇想の系譜』で紹介されたのは、それまでまとまって書籍や展覧会で紹介されたことがない、因襲の殻を打ち破り意表を突く、自由で斬新な発想で、非日常的な世界に誘われる絵画の数々でした。それらの作品を「奇想」という言葉でまとめ、世の中に知らしめた辻惟雄氏の功績は大きく評価されるものでしょう。

2016年の「若冲展」は最長320分待ちという大人気展となりました。

8名の活動時期を年表に落とした会場内案内図

本展は『奇想の系譜』で取り上げられた6名の画家、岩佐又兵衛、狩野山雪、伊藤若冲、曽我蕭白、長沢芦雪、歌川国芳に加え、白隠慧鶴、鈴木其一の2名を入れた、合計8名の画家による展覧会です。

左:中原淳行(担当学芸員) 中:山下裕二(本展監修者) 右:辻惟雄氏(奇想の系譜・著者)

辻惟雄氏はプレス内覧会の挨拶で「おなかいっぱいになる展示」とお話しになりました。
「豪華な顔見世興行で、皆様に満足して頂ける内容」という言葉通り、充実した内容で満足感の高い展覧会になっていると思います。

伊藤若冲

本展は8名の作品ごとに構成されています。
最初の展示室は伊藤若冲。本展監修者山下氏が言うところの「奇想三羽ガラス」〜若冲、蕭白、芦雪〜を前半に持ってきた流れとなります。
若冲は全18作品の展示です。

伊藤若冲《旭日鳳凰図》宝暦5年(1755) 宮内庁三の丸尚蔵館 【展示期間:2/9~3/10】

伊藤 若冲 《象と鯨図屛風》 紙本墨画 六曲一双 各159.4×354.0cm 寛政9年(1797) 滋賀・MIHO MUSEUM

伊藤 若冲 《鶏図押絵貼屏風》 紙本墨画 六曲一双 各167.0×348.0cm 江戸時代中期(18世紀) 個人蔵

曽我蕭白

続いての展示は曽我蕭白です。
18世紀京都画壇の鬼才たちの中でも、最も激烈な表現を指向した蕭白。20代後半には、室町時代の曽我派の直系にあたると自称して曽我姓を名乗りました。漢画を学び中国の仙人や聖人といった伝統的な故事を多く描いていますが、その表現は独創的で狂気に満ち、時に見る者の神経を逆なでし、混沌の渦へと落とし入れます。

曽我蕭白《雪山童子図》明和元年(1764)頃 三重・継松寺蔵

曽我 蕭白 《唐獅子図》 紙本墨画 双幅 各224.6×246.0cm 明和元年(1764)頃 三重・朝田寺 【展示期間】 2/9 –3/10

曽我 蕭白 《虎渓三笑図》紙本墨画 132.5×56.3cm 制作年不詳 千葉市美術館

長沢芦雪

京都・篠山の下級武士の子として生まれ、円山応挙に師事。応挙が創った写生画法を忠実にたどる弟子がほとんどを占める中で、大胆な構図と才気あふれる奔放な筆法で独自の画境を切り開き、エンターテイナー的な遊び心ある個性的な作品を多数遺しています。
3.1cm四方の小さな作品《方寸五百羅漢図》のユニークさに思わず笑みがこぼれました。

長沢 芦雪 《白象黒牛図屏風》 紙本墨画 六曲一双 各155.3×359.0cm 江戸時代中期(18世紀) 米国・エツコ&ジョー・プライスコレクション

長沢 芦雪 《牡丹孔雀図》紙本着色 二曲一双 天明二年 166.9×184.6cm 米国・エツコ&ジョー・プライスコレクション

長沢 芦雪 《猛虎図》絹本墨画淡彩 一幅 163.5×131.0cm 米国・エツコ&ジョー・プライスコレクション

長沢 芦雪 《方寸五百羅漢図》絹本墨画淡彩 一幅 寛政十年(1798年) 3.1×3.1cm

岩佐又兵衛

辻惟雄氏の修士論文としても扱われ、同氏のライフワークとも言えるのが岩佐又兵衛です。
謎の浮世絵師といわれる又兵衛に触れる作品は自画像や絵巻を含んで約20点見ることが出来ます。

このゾーンの見せ方は辻氏のこだわりが詰め込まれているかのように、絵巻は上から間近に鑑賞出来て非常に見やすかったです。

岩佐 又兵衛 《山中常盤物語絵巻 第四巻(十二巻のうち)》 紙本着色 一巻 34.1×1259.0cm
江戸時代初期(17世紀前半) 静岡・MOA美術館 【展示期間】 2/9〜3/10

岩佐 又兵衛 《洛中洛外図(舟木本)》 六曲一双 紙本金地着色 各162.7×342.4cm 東京国立博物館

狩野山雪

狩野山雪は、伝統的な画題を独自の視点で再解釈し、垂直や水平、二等辺三角形を強調した理知的な幾何学構図で知られます。

狩野 山雪 《梅花遊禽図襖絵》 紙本金地着色 四面 各184.0×94.0cm 寛永8年(1631) 京都・天球院

狩野 山雪《蘭亭曲水図屏風》八曲二双 紙本金地著色 各107.5×355.2 京都・大本山 随心院

白隠慧鶴

臨済宗中興の祖と呼ばれる禅僧。駿州原宿(現在の沼津市)に生まれ、15歳のときに出家。「不立文字(言葉に頼るな)」といわれる禅宗において、白隠は夥おびただしい数の禅画や墨跡を遺しています。
職業画家ではない、仏の教えを伝える手段として描かれた一見ユーモラスで軽妙、かつ大胆な書画は、蕭白、芦雪、若冲など18世紀京都画壇・奇想の画家たちの起爆剤となりました。

展示風景より〜白隠 慧鶴

白隠 慧鶴 《半身達磨図》 紙本着色 一幅 192.0×112.0cm 江戸時代(18世紀) 大分・萬壽寺

鈴木其一

《百鳥百獣図》は、アメリカからはじめて里帰りする、其一の奇想を代表する作品です。
細密きわまりない筆致で、さまざまな鳥と獣を描き出しています。若冲から影響されたような作品ですね。

鈴木其一《百鳥百獣図》天保14年(1843年) 米国・キャサリン&トーマス・エドソンコレクション

展示風景より

 

歌川国芳

奇想6人のうち最後の1人、歌川国芳は展示の最後に見ることが出来ます。
役者絵の国貞、風景画の広重と並び、武者絵の国芳として第一人者となりました。

左:歌川 国芳《相馬の古内裏ふるだいり》大判錦絵三枚続弘化2-3年(1845-46)頃 個人蔵
右:歌川 国芳 《宮本武蔵の鯨退治》 大判錦絵三枚続 弘化4年(1847)頃 個人蔵

歌川 国芳 《一ツ家(絵馬)》 顔料・板、額 一面 228.0×372.0cm 安政2年(1855) 東京・金龍山浅草寺

歌川 国芳 《火消千組の図》一面 (天保4年・1833年)千葉 成田山霊光館

特別作品

会場の最後には、本展のために特別制作された横尾忠則氏の作品を見ることが出来ます。

これは、出品作家の中から6作家の図像部分をコラージュした上で、江戸の系譜画家に対して昭和の奇想画家として少女画の画家藤井千秋の絵を引用した横尾氏なりの「奇想画」。素晴らしい作品ですね。

横尾忠則 スペシャルヴィジュアル作品

まとめ

「奇想」というキーワードでくくられた8名の絵師による作品の数々は、どれも素晴らしくて鑑賞しがいのある作品です。
豪華な顔ぶれと素晴らしい作品が次から次へと目に飛び込んでくる展覧会。
満足感の高い展覧会になるのではないでしょうか。

本展も行列必至は間違い無し。会期の早めに行って混雑を回避するのがオススメです!

概要

奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド
会期:2019年2月9日(土)~4月7日(日)
会場:東京都美術館 企画展示室
休室日:月曜日、2月12日(火) ※ただし、2月11日(月・祝)、4月1日(月)は開室
開室時間:9:30~17:30(入室は閉室の30分前まで)
※夜間開室 金曜日、3月23日(土)、30日(土)、4月6日(土)は9:30~20:00(入室は閉室の30分前まで)
観覧料:一般 1,600(1,400)円、大学生・専門学校生 1,300(1,100)円、高校生 800(600)円、65歳以上 1,000(800)円
※()内は前売券、団体券の価格。団体割引の対象は20名以上。
※中学生以下は無料
※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳持参者とその付添い(1名まで)は無料
※2月20日(水)、3月20日(水)はシルバーデーにより、65歳以上は無料。当日は混雑が予想されます。
【問い合わせ先】
TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)