猪瀬直哉の初個展「Blue」の初日に伺ってきました。デビューして「10年」にして初の個展となります。
初の個展で過去作も含めたのは、作品数が多くないという事情もある一方、10年間の画業を整理するためという意味合いもあるそうです。
初日のオープニング時にお伺いし、伊東順二氏を迎えたアーティストトークを聞くことが出来ました。
イギリスに滞在して既に8年を経過しているそうで、海外の話を中心に、日本のアート事情を対比させるようなお話しも含めた1時間でした。作家活動の他に、マルタ島で新しいアーティストインレジデンスのプロジェクトを展開しており、精力的に活動の幅を広げていらっしゃるようです。
展示されている作品は2010年の過去作から2018年最新作までですが、比較的2018年の最新作を多く揃えておりました。以下、展示された作品のご紹介です。なお、猪瀬直哉さんの作品は実際にご覧頂くことをオススメします。写真では再現できない細密な描写と圧倒的な作品の力を兼ね備えています。
2010年に描かれた作品は、トーマス・コールのオマージュ作品《THE COURSE OF EMPIRE:Desolation-Modern(Homage to Cole)》。見事な大作でした。
「若いときは視力と体力があった」というような表現で猪瀬さんからのお話しがありましたが、緻密な描写力に圧倒されます。
ゲーム「スーパーマリオブラザーズ」のバグステージ「ステージ9」の世界を描いた作品《OVER STAGE9 OVER》。実写版マリオが登場しそうなリアリティを感じます。
「バグっぽいもの=正解がないものが一番面白い」ということで
緻密な筆の動きに応えられるように「キャンバスはテンションが強い方が良い」というお話しも、作品の細部を見て納得出来るような細やかで精緻なディテールでした。
《The beginning of the world》のような珍しい作品も展示されていました。
この作品は2日間ほどで描き上げたそうです。
このほかにも筆で線だけを描いたような作品など、「人に見せられないような作品も多数描いている」という話しが印象的でした。
絵画的な様式にもチャレンジしている作品なども揃い、幅広い絵画作品が勢揃いしているような充実した空間でした。
展示空間には《Abstract paintings》という、カラーバーを模した抽象画の小品が配置され、インスタレーションのように機能しています。
本展のメインビジュアルにも採用された《Polylith into the blue》は眩しい青色が印象的な猪瀬さんらしい作品です。作品の横に《Abstract paintings》が並びます。空間を統一させるためにインスタレーションとして展示している作品です。
支持体として今年から使用している「アルミニウム」を使用している作品で、冷たい質感があります。
作品の空間構成力が素晴らしいですね。猪瀬直哉さんの大きな特徴であるモチーフの特殊性は産みの苦しみは相当なものだそうで、沢山のスケッチから作られる構図なんだそうです。一連の青い色は夢でみた色というお話しも印象的でした。
以上が初日の展示作品でした。
2ヶ月間の会期には展示替えもありそうで、特別に新作も拝見させて頂きました。
画業10年とはいえ、まだ30歳の若手作家です。
国際的に活動されている方であり、日本で開催される次の個展が何年後になるのか分かりませんが、一度しかない貴重な「初個展」に足を運ばれることをオススメします。
作品販売の方は好調で、初日の早い段階でほぼ完売という状態の人気ぶりです。
今後がますます注目される実力派若手作家ですね!
まとめ
- 猪瀬直哉さんの初個展
- 画業10年の集大成〜過去作と新作が混在する回顧展
- 過去に発表したことのない抽象画やタブローも展示
- 大作から小品まで幅広い作品
- 入場無料で鑑賞可能
概要
猪瀬直哉 初個展「Blue」
会期 2018年12月1日~2019年1月31日 (休廊日 2019年1月1日)
時間 11:00-19:00
場所 GINZA SIX 6F THE CLUB(銀座 蔦屋書店内)
主催 THE CLUB
電話:03-3575-5605
メール:info@theclub.tokyo
URL:http://theclub.tokyo
■オープニングトーク
猪瀬直哉 ×伊東順二
日時: 12月1日(土) 11:30~12:30
会場: THE CLUB (GINZA SIX 6F 銀座 蔦屋書店内)
定員: 約30名 参加費:無料
お申し込み:info@theclub.tokyo
本展覧会に伴い、ロンドンより来日中の作家自身と、東京藝術大学特任教授、伊東順二によるオープニングトークを開催致します。制作過程や作品のコンセプト、日本とイギリスの教育機関の違いや若手アーティストの活躍の場等について対談します。
伊東順二・・・東京藝術大学特任教授。富山市ガラス美術館名誉館長。美術評論家。アート、音楽、建築、都市計画など分野を超えたプロデュースを多数手がける。1995年「ベニス・ビエンナーレ」日本館コミッショナー。前長崎県美術館館長。