@monkpictures
Instagramのアカウント@monkpicturesをご存知でしょうか?
@monkpicturesは飲食店でのレシートを使って、その表面にドローイングを施した作品《レシート・ドローイング》を制作、発表しているインスタのアカウントです。
アカウントのプロフィールには何も記載されていませんが、その正体は、既に「Restaurant Drawings」という作品集を出版しているイギリスの作家「ジョナサン・モンク」です。
ドローイングのモチーフは、河原温やクリストファーウール、ソル・ルウィット、アンディ・ウォーホル、アリギエロ・ボエッティなど、現代アート作家として名高いアーティストの作品です。
作品が並んでいる様は、Instagramをギャラリーとして機能させているようで、鑑賞者はスマートフォンの中で古き著名なアーティストを重ねながら、これまで発表された作品を鑑賞することが出来ます。
販売企画
作品画像の投稿と同時に記載されているコメントには、レシートの金額と同じ数字がユーロ表示で記載されています。つまり、レシートと同額の金額で《レシート・ドローイング》作品を購入する事が出来るのです。購入者は単純なアート作品を購入するということに加え、作家が体験した飲食を、《レシート・ドローイング》の購入を通じて共有する事になります。
気に入った作品があれば、フォロワーはコメント欄で意思表示し、購入することが出来る企画ですが、コメントは@monkpicturesが投稿した瞬間に殺到し、秒で埋まっていきます。
先着順という競争に勝つためには、出来るだけ短いメッセージを打ち込む必要があり、「Me!」「Mi」「🙏🏻」「😍」などの短いメッセージが並びます。
Instagramの通知機能を使ってもなかなか厳しい戦いが繰り広げられている状況です。
争奪戦
筆者は通知機能を使いながら、いつも意識してInstagramのアカウントをチェックしているのですが、なかなかタイミング良く投稿のタイミングに出会うことが出来ません。2018年11月現在、5700人を超えるフォロワーがいますが、その瞬間を狙って沢山のフォロワーがたった1つの席を奪い合う椅子取りゲーム的な展開です。
そしてなんと、2018年10月29日の深夜、遂に激戦の先着競争に勝つことが出来ました。
そのタイミングは、深夜の1時28分頃、突如やって来たのです。
掲載されたインスタの写真はかの有名なクリストファー・ウールの作品です。
作品の画像は一瞥したくらいで満足に確認をする事も出来ず、すかさず「Me!」とテキスト入力。
少しして、コメント欄の投稿をを確認するため、再読み込みしてみると、自分のスマホ画面では1秒差で上から2番目に表示されているようでした。「惜しかった、2着か・・・!?」と悔やむ間もなく、しばらくしてDMが届きました。メッセージは下記です。
The Wool is yours – please follow up via ○○○○○○○(メールアドレス)
「The Wool is yours」・・・、やった!!
that was quick… just forward your mailing address and we go from there – until then jm
レシートのお店はドイツのベルリンにお店を構えるVan Hoaというカフェです。
10月12日の昼間に使用されたレシートと確認することが出来ます。
お店の公式サイトを見ると「カフェ」のようで、ベトナム料理のフォーや、コーラやライムソーダが注文されていることも分かりました。
アーティストの日常が切り取られる「レシート」を国を跨いで、日本にいる筆者が代わりに代金負担し作品を受け取る・・・非常に不思議な感覚ですが、とにかく争奪戦に勝てたことがとても嬉しくて満足感が高い時間を過ごしました。
作品受取までの流れ
実際に投稿から受取までの流れを時系列でまとめておきました。
- Instagramの@monkpicturesが投稿:2018年10月29日の深夜1時28分
- すぐさま「me!」と投稿:投稿直後
- DMが来て当選確定(英語):投稿後3〜4分後
- 指定のメールアドレスにこちらから英語で連絡:同日深夜1時36分
- 返信メール到着。:同日深夜1時41分
- 作品の送付先を連絡:同日深夜1時45分頃
(この間の連絡は無し) - (2018年10月31日にベルリンより作品発送)
- 国際郵便書留にて到着(不在により受取出来ず):2018年11月10日
- 自宅にて受取:2018年11月11日
- メールにて御礼及び支払い方法確認:2018年11月11日
- 入金手続き・・・
作品到着
無事到着した作品は次のような状態で受け取ることになります。
レシートは日本で受け取るモノと同じように「感熱紙」のような薄い紙でした。
ヤケ、酸化、経年変化による黄変・茶変が考えられそうですので、保管に気をつけなければなりません。
まとめ
通常とは異なる、なかなか不思議で貴重な体験を得ることが出来ました。
一連の購入スキームも含めて、作品に関わる全ての事象が「体験」というフィジカルなアクションを含んでいて、印象深く自分の中に刻まれました。
モンクの日本における取り扱いギャラリー「Taro Nasu」では、以前にも「レストラン」をテーマにダグラス・ゴードン&ジョナサン・モンク展 「PARIS BAR」開催しています。
そこでのテーマは「食」を通じた体験の共有であり、時間軸が大きな要素として取り入れられていました。時間と言う概念を限りなく鑑賞者と共有する事で成立するアートです。
今回のレシートドローイングも、モンクの食体験をレシートの金額を支払うことで追体験するというもの。
それは、Instagramというプラットフォームを通じて世界に繋がっており、作品を預かったユーザーは体験を共有する参加者となるのです。
こうした動きは他の作家にも広がっていくような流れに繋がっていくように感じますが、モンクが切り開いた取組の意義は先人者として大きく、作品に関わるユーザーへ深く刻まれることになるでしょう。