【個展】少女たちの物語を感じる〜菅野麻衣子「漂流ページ」@AL

菅野麻衣子「漂流ページ」

菅野麻衣子さんの個展「漂流ページ」にお伺いしてきました。会場は恵比寿「AL」です。地元である仙台を拠点に制作活動を行っており、約2年ぶりに東京で開催される個展です。
少女をモチーフにした菅野麻衣子さん作品は、その背後に流れる物語性も含め、人によっては様々な受け止め方や楽しみ方があるように感じます。
会場には次のように大きく3つの作品に分かれて展示されています。合計33点、グッズや雑貨類が展示されていました。

  1. アクリル画
  2. 鉛筆画
  3. アクリル+鉛筆画 ※初の試み

【1】アクリル画

本展覧会は「物語からインスピレーションを受けて制作する」という新しい試みの新作展です。
「アンデルセン童話」「グリム童話」「遠野物語」などから引用された作品が多く展示されています。「本からページが抜け落ちてどこかに漂っていくように、絵の世界を膨らませてみたい」という意気込みが「漂流ページ」というタイトルに込められているそうです。

菅野麻衣子さんのアクリル画は色使いが巧みで上手さが光ります。塗りの粒も綺麗で実際に見るとかなりの確率でグッと来るはず。

《上手な作戦(グリム童話「白雪姫」)》2018年

《半分の顔(グリム童話「シンデレラ」)》2018年

中央:《私の家かキミの家(グリム童話「ヘンゼルとグレーテル」)》2018年

【2】鉛筆画

アクリルがとは違って鉛筆画は濃淡だけで表現されたモノトーンの締まった印象を受ける作品です。モチーフは女性ですが、鉛筆で表現されると随分印象が変わります。

鉛筆画シリーズ

平成30年の遠野市「佐々木喜善賞」を受賞した菅野さんの作品は鉛筆画「スターケイザー」という4連作品でした(会場に展示・売約済)。鉛筆画を見れば菅野さんの画力を感じる事が出来るでしょう。

《輝くかけら(遠野物語「寒戸の婆」)》2018年

鉛筆画を描く際には、たくさんの鉛筆を場所によって使い分けているそうです。背景を描く際には、青みが強く奥行きを表現出来る「ステッドラー」を使うなど、1作品につき15ー20本種類の鉛筆が使用されるとのことでした。

【3】アクリル+鉛筆画

アクリル画、鉛筆画に加え、ふたつを混合させた新しいシリーズの作品も披露されていました。
制作には、相性の良くないアクリルと鉛筆を融合させるため、板の上に紙を貼り支持体を作り、下地材としてスプレーを吹きかけたり、ヤスリをかけるなど工夫して作っているそうです。また、鉛筆画のモノクロ色を生かすために配色も考えられているようで、独特の雰囲気を発しています。
下の画像《解きやすいドレス》がその処女作。完成度が高く、このシリーズの制作を広げて行くことにした切っ掛けの作品です。

《解きやすいドレス》2018年

《解きやすいドレス》は菅野さんのお名刺にも使われているようです。この作品シリーズは今後注目ですね。

《遠い街(アンデルセン童話「人魚姫」)》2018年

左:《インゲルのパン(アンデルセン童話「パンをふんだ娘」)》右:《なじみの記憶(アンデルセン童話「雪の女王」)》2018年

《わがままの中心(アンデルセン童話「パンをふんだ娘」)》

グッズ販売

女性のファンが多いのでしょう、ポストカードから、カレンダー、ブローチ、クッションなどの雑貨類も販売されていました。 会期初日に伺いましたが、人気のご様子で赤丸シールが多く目立っておりました。
意味深なポーズや明るさだけでは無い影を感じるその作品は、味わい深い作品です。作品に登場するたくさんの少女たちは、描きながら表情を作っていくそうで、少女それぞれの顔が異なっていると言うことだそうです。

筆者も作品を収蔵させて頂きました。
作品の完成度も高く、今後も人気が上昇していくような勢いを感じました。

概要

菅野麻衣子
漂流ページ
期間:2018年10月5日(金)〜 14日(日)
時間:12:00-19:00 最終日のみ18:00まで
会場:AL  東京都渋谷区恵比寿南3-7-17
・レセプションパーティー
10月5日(金)18:00-20:00
・ギャラリートーク
10月6日(土)16:00-16:30
聞き手:芦沢ムネト 作品解説:菅野麻衣子