【個展】作品の先にあるものを探す 〜 村瀬恭子「絵と、 」Vol.3@gallery αM

「絵と、 」Vol.3

東京国立近代美術館の蔵屋美香さんがキュレーションする企画「絵と、 」の第3弾が行われていたのでお伺いしてきました。会場は武蔵野美術大学が運営する「galleryαM」です。

ひとつ前のvol.2 藤城嘘さんの模様は下記よりご覧下さい。

企画名にあるように、絵が現実と関わる方法を問うような企画。タイトルに含まれる空白スペースは作家や鑑賞者がそれぞれ埋めていくために用意された器のようなものでしょうか。

『絵と、 』

vol.1 五月女哲平:2018年4月7日(土)~6月2日(土)
vol.2 藤城嘘:2018年6月16日(土)~8月10日(金)
vol.3 村瀬恭子:2018年9月1日(土)~10月27日(土)
vol.4 千葉正也:2018年11月10日(土)~ 2019年1日12日(土)(冬休み12/23〜1/7)
vol.5 中村一美:2019年1月26日(土)~3月23日(土)

村瀬恭子 (Kyoko MURASE)

作家の村瀬恭子(むらせきょうこ)さんは1963年生まれ、90年から96年まで、国立デュッセルドルフ芸術アカデミー(ドイツ)に在籍し、国内外の多くの展覧会で活躍されています。

連続企画『絵と、 』は、2011年の東日本大震災以降の現実に対して絵画はどのように関わりうるかを考えようとするものですが、1989年から20年以上にわたって在住するドイツにいて直接震災を経験していません。ステートメントを読めば、そういった距離感を感じることが出来ます。

ステートメント〜村瀬恭子

目に見えるイメージを信じている
ホントのところ
見えてない。そもそも見ていない。
耳が聞いた。
蝉の声は何年ぶりだろう。
虫が鳴かない夏を永いあいだ過ごしていた。

圧倒的な音量で空から降ってくる、
宇宙船が降り立つ効果音みたいに。
少し身をかがめる
夕刻のヒグラシ、山の奥から押し寄せて気が遠のく
真夜中の窓を虫が叩き胸が脈打つ
私は死んだのか?

もう何処にだっていない。
触覚を伸ばすのだ、小刻みに震わして、丁寧に。
海底に沈んだナマコになって
彼方の浜音を聞かなくてはならない。

9月。
地下のあの場所に「百万年Cave」を掛けてみようと思う。

(3)感覚についての概説は次に拠った。三星宗雄「遠感覚・近感覚再考」『人文学研究所報』44号、神奈川大学、2010年、pp.73-88

「Swimmer」2016年 Oil on cotton 140x150cm

左「Sud Park」2016年、紙に顔料、色鉛筆、48x36cm 右:「アザミ」2016年、紙に顔料、色鉛筆、48x36cm

「Ruby」2010年140x120cm set of 3Oil Colorpencil on cotton

「In The Morning」2010年 Oil on cotton 53x48cm

「Lily」2010年 Oil Colorpencil on cotton 200x190cm

Sunday 2012年Oil Crayon on cotton160cm×240cm

展示風景より

勢いを感じる筆が作品をより大きく見せているようで躍動感を感じました。一方では淡い色使いで優しさを感じるトーンです。
作品の中に含まれていない「何か」を想像しようと問われるようです。作品の余白を楽しむような鑑賞を求められるような気がしました。

概要

「絵と、 」
Vol.3村瀬恭子(kyoko murase)
会場:gallery αM
2018年9月1日(土)~10月27日(土))
11:00~19:00 日月祝休 入場無料
アーアーティストトーク 9月1日(土)18時~19時
オープニングパーティー 9月1日(土)19時〜