山田 康平 / Kohei Yamada 「支える軽さ」
山田康平さんの個展「支える軽さ」に伺いました。
会場は蔵前のスペース「隙間」です。

本展覧会会場の「隙間」は、レザーブランドであるエンダースキーマ(Hender Scheme)が、「交換」をコンセプトに運営するオルタナティブ・スペース。アーティストの展示を開催するギャラリーであり、さまざまなプロジェクトを行うオープンスペースであり、新しい価値を実地調査するテンポラリーな拠点です。
作品は全て販売されていますが、1点だけは隙間が「物々交換」によってコレクションする作品となります。

隙間の「物々交換」は、スペースとエキシビターの間で貨幣を介さず展覧会を開催するための、オルタナティブなシステムです。
この価値の交換では、隙間は展覧会の開催にまつわる運営、広報、アーティストディナーをエキシビターに提供し、エキシビターは展示作品の中から作品1点を隙間に提供します。
ギャラリーの営みにおいて、スペースの使用料や作品売買のコミッションが発生しないこの「交換」は、経済合理性以外の「価値」を考える試みです。〜隙間公式サイトより


本展では、これまでに発表された作品とは異なる作品群で構成されていました。
作品は全て2025年制作の最新作です(作品名は全て「untitled」)

Artist statement
紙作品を成立させるために、どのような支えを選ぶべきか。そのような問いから今回の展示は出来上がった。私の紙の作品は既存のフレームには合わない気がする、それはなぜか。既存のフレームについて考えた時に私は作品を支えるための機能を果たしていると考えている。ぶよぶよの紙でも、何かの落書きだったとしても、フレームとしての支えと、中のボードに接着することで実際描かれたものはピンと張られ、作品として立ち上がってくる。そこに紙という素材が持つ特性(軽さ、薄さ、形、表面の質感、扱われ方)とそこに何が描かれているか(様々な向き)によって、その支えのあり方は決定される。そして、決定された支えは、その紙に描かれたものにとって最適な関係性を発見する。新たに発見された支えの形は、その紙に描かれたもののためだけに機能し、他には適用されない。だが、ひとたびそれが選択されたとき、支えは支えではなくなり、統合されたオブジェクトへと変化する。
山田 康平













山田康平さんの絵画はこれまで、物質としての絵の具、描かれた面、そして塗り重ねられた痕跡によって制作されてきたと思います。そこには常に、何層にもわたる思考と行為の積層が存在し、それ自体が作品の深度を形づくってきました。今回、隙間で開催された展覧会では、その「層構造」が、さらに素材的・構造的な「支え」と出会うことで、空間全体に拡張されるような試みがなされていたように感じます。
絵画とは、描かれたものだけで成立するのではなく、「どう支えられているか」によっても、そのあり方が変化する。山田さんはその構造に目を向け、作品そのものに支えの形を取り込むことで、フレームや支持体といった周縁の存在を、絵画の中へと引き込んでいったように感じました。
また、隙間の空間とのバランスも絶妙で、素晴らしい展覧会だったように思います。
そして最後に、小林健さんによるテキストもまた、本展の理解に欠かせない要素でした。感性と理性のあいだを往復するように構築されるその文章は、いつも私自身の、鑑賞者としての思考を静かに導いてくれます。願わくば、この展示を鑑賞した“あと”に読むテキストもあれば、と思わずにはいられませんでした・・・。
概要
山田康平
「支える軽さ」
会場:隙間
会期:2025.4.19 – 4.27
時間:12:00 – 19:00
休み:なし
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