STARS展:現代美術のスターたち―日本から世界へ
森美術館で開催中の「STARS展:現代美術のスターたち―日本から世界へ」に伺いました。
STARS展は、2020年開催の東京オリンピックタイミングにあわせて企画されましたが、新型コロナウイルスの影響で、時期をずらしながら開催に至りました。
本展は、日本という枠を越えて広く国際的に活躍し、今日、多様な地域や世代から高い評価を得るアーティスト6名を選び、その活動の軌跡を初期作品と最新作をつなぐかたちで紹介するものです。
彼らの実践は世界からいかに評価されてきたのか。国境や文化を越えた普遍的な課題の追求、伝統や美学、テクノロジーやサブカルチャーなど、 日本固有の社会的、文化的、経済的背景を踏まえて探ります。
また、1950年代から今日まで、海外で開催された主要な日本現代美術展に関する資料も展示し、それぞれの時代の評価軸や系譜が検証されます。
李禹煥
本記事では、アーティスト6名の中では最高齢となる李禹煥さんの展示を取りあげます。
李禹煥さんの展示室では、「もの派」の思想を最も良く象徴する最初期作品《関係項》(1969/2020年) 、立体作品《関係項-不協和音》(2004/2020年) 、そして2点の新作大型絵画《対話》(2019、2020年 )が出展されました。
いずれの作品にも、作ることと作らないこと、描くことと描かないことを作品に取り入れてきた李禹煥さんの姿勢が時代を超えて通底しています。
李禹煥
1936年、韓国慶尚南道生まれ。1956年以降日本在住。
日本の高度経済成長期、近代への批判が国際的にも高まるなか、生産を否定し、ものや素材そのものを提示する彫刻の動向が生まれ、後に「もの派 」と呼ばれる。そのなかで李はもの相互の関係性に意識を向けた制作を行う。
また、1969年には評論「事物から存在へ」が美術出版社芸術評論賞で入選。批評活動を通して「もの派」の理論化に大きく貢献した。
1968年に東京国立近代美術館にて開催された「韓国現代絵画展」以降、日本と韓国の現代美術界の交流にも尽力。1971年には第7回パリ青年ビエンナーレに参加し、以降ドイツやフランスなど欧州を中心に継続的に作品を発表してきた。
2011年には グッゲンハイム美術館(ニューヨーク)で大規模な回顧展、2014年はヴェルサイユ宮殿で大規模個展、2019年にもポンピドゥーセンター・メス(フランス)で個展が開催されている。2010年には直島に李禹煥美術館、2015年には韓国に釜山市立美術館・李禹煥空間が開館した。
日本の戦後美術への関心の拡がりや非欧米圏のモダニズムの比較研究とともに「もの派 」が国際的にも再評価され、李禹煥の50年に亘る多様な実践にも注目が高まっている。
概要
STARS展:現代美術のスターたち―日本から世界へ
会場:森美術館
会期:2020年7月31日(金)~ 2021年1月3日(日)
時間:10:00~22:00(最終入館 21:30)※火曜日のみ17:00まで(最終入館 16:30)
※ただし9月22日(火・祝)、11月3日(火・祝)は22:00まで(最終入館 21:30)
料金:一般 2,000円、学生(高校・大学生)1,300円、子供(4歳~中学生)700円、シニア(65歳以上)1,700円
参加アーティスト ※姓のアルファベット順 草間彌生、李禹煥(リ・ウファン)、宮島達男、村上隆、奈良美智、杉本博司
※本記事で掲載した写真は「クリエイティブ・コモンズ表示 – 非営利 – 改変禁止 4.0 国際」ライセンスの下で許諾されています。
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