ピーター・ドイグ展
東京国立近代美術館で開催されたピーター・ドイグ展に伺いました。
ピーター・ドイグは、1959年スコットランドのエジンバラ生まれ。
カリブ海の島国トリニダード・トバゴとカナダで育ち、1990年、ロンドンのチェルシー・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザインで修士号を取得。1994年、ターナー賞にノミネートされ、2002年よりポート・オブ・スペイン(トリニダード・トバゴ)に拠点を移しています。
同世代、後続世代のアーティストに多大な影響を与え、過去の巨匠になぞらえて、しばしば「画家の中の画家」と評されている作家です。
第1章 森の奥へ 1986年〜2002年
本展は、ピータードイグの貴重な初期作から最新作を含む「油彩画32点」に加え、友人と一緒に自身のスタジオで主催する映画上映会のために描かれた「直筆ポスター40点」の合計72点が3章構成で展示されていました。
1992年、イギリスの美術雑誌『フリーズ』で作品が取り上げられ、1994年にはターナー賞にノミネートされたことなどを通して、ドイグはロンドンのアートシーンで一躍注目を浴びることとなりました。
当時、ダミアン・ハーストに代表されるヤング・ブリティッシュ・アーティスト(YBAs)と称される若手の作家たちが台頭し、大型で派手なインスタレーションがアートシーンを席巻していました。
こうした状況下、すでに時代遅れのメディアのように見られることもあった絵画というジャンルにおいて、その歴史と現在の視覚文化に向き合いながら、いまだ見たことのない光景をつくりあげる彼の真摯な取り組みが、極めて新鮮なものとして評価されたのです。
2015年のクリスティーズ・オークションにて約2,600万米ドル(当時約30億円)で落札された代表作《のまれる》※原題《Swamped》も展示されていました。
第2章 海辺へ 2002年〜
ピーター・ドイグは、2002年に活動の主な拠点をロンドンからトリニダード・トバゴの首都、ポート・オブ・スペインに移します。
第2章 海辺へ
移住前後から、彼は海辺の風景を主なモチーフに選ぶようになり、さらにこれまで比較的厚塗りだった画面が、キャンバスの地の部分が透けて見えるほどの薄塗りの油絵具、または水性塗料による鮮やかな色彩のコントラストによって構成されるようになりました。
一方、デビュー当時から一貫して描かれているモチーフのひとつが「カヌー」です。
映画『13日の金曜日』のワンシーンを着想源のひとつとするこのモチーフは、あたかもカヌーをめぐる物語が進展するかのように、さまざまな場所を漂流し、私たちを想像の旅へと誘います。
第3章 スタジオのなかで〜コミュニティとしてのスタジオフィルムクラブ 2003年〜
スタジオフィルムクラブとは、ドイグがトリニダード・トバゴ出身の友人のアーティスト、チェ・ラブレスと2003年より始めた映画の上映会です。
誰でも無料で参加することが可能で、映画が終われば上映作品について話し合ったり、音楽ライブへと展開したりする企画で、一種の文化的サロンのようなコミュニティの形成を目的としたプロジェクトです。
この一連のドローイングは素早く描かれ、建物を共有している人々や近隣住人に上映会を周知するために掲出されました。
ドイグがロンドンで親しんできたいわゆる名画座やミニシアターに着想を得て、過去の名作や粒よりの映画が上映作品として選ばれています。
グッズ
本展特製グッズの販売コーナーも展開されていました。
小野正嗣さんのエッセイを含む本展図録は、デザインも良く、内容充実でオススメです。
大作が多く、充実の日本初個展です。
スタジオフィルムクラブのドローイングがとても良かったです。
概要
ピーター・ドイグ展
会場:東京国立近代美術館 1階 企画展ギャラリー
会期:2020年2月26日(水)〜6月14日(日)
開館時間:10:00〜17:00※金曜・土曜は20:00まで(入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜日(ただし3月30日、5月4日は開館)、5月7日(木) ※2月29日〜3月15日まで臨時休館
主催:東京国立近代美術館、読売新聞社、ぴあ
特別協賛:ジョージ・エコノム・コレクション、マイケル ヴェルナー ギャラリー、ニューヨーク/ロンドン
協賛:大日本印刷
協力:ヤゲオ財団コレクション、台湾、ライトアンドリヒト株式会社
公式サイト:https://peterdoig-2020.jp