【個展】光と色彩を操る〜武田陽介「Ash without fire here」タカイシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム

武田陽介「Ash without fire here」

武田陽介さんの個展「Ash without fire here」に伺いました。会場はタカイシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムです。

会場風景

武田陽介さんは村上春樹さんの代表作「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」海外版の表紙も担当された実績のある写真家です。本展は、タカ・イシイギャラリーでは3年ぶり3度目の個展となる個展です。

村上春樹「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」海外版の表紙

武田陽介さんの撮る写真は非常にユニークで新鮮です。
デジタルカメラを使って撮影される写真は、代表作である「Digital Flare」シリーズでも分かる通り、独特な表現方法で見事に光を写し取っています。

武田陽介 「072254」2019年 ライトジェットプリント

武田さんが撮る写真は「エラー」を前提にしていて、最新のデジカメに古いレンズを組み合わせることや、逆光で撮影することで、ある種の「歪み」を誘い込むような手法をとっています。つまり、意図的にフレアやゴーストといった光学的な偶然性を狙った制作手法をとっているのです。

左:武田陽介「072353」 2019年 ライトジェットプリント
中:武田陽介「071949」 2019年 ライトジェットプリント
右:武田陽介「044725」 2019年 ライトジェットプリント

偶然性によるエラーを期待する撮影手法のため、1つのカットを撮影するために繰り返し押されるシャッター数は2,000〜3,000枚にも及ぶそうです。フィルムカメラでは成し得ない手法です。

参考までに作品名の数字は、PC上で完成した作品の時間だそうです。
「072353」は、午前7時23分53秒を差しているそうです。深夜から早朝にかけて制作することが多い作家さんのようです。

武田陽介「161234」2013年 ライトジェットプリント ※スマホで撮影・Sサイズのみ

2013年にスマートフォンで撮影した水面を写した作品「161234」の新展開となる作品も注目されました。
PC上での加工をほどんど行わない武田陽介さん。幾何学的な模様が含まれているような水面の美しさが強く印象に残る作品です。

左:武田陽介「061317」 2019年 ライトジェットプリント
右:武田陽介「061629」 2019年 ライトジェットプリント

展示風景

映像作品は水面の青に金色に光る何かが反射している様を映像化した作品です。
作品の本編尺は「誰でも15分間は有名人になれる」というアンディ・ウォーホルの名言を参照したそうです。

左:武田陽介「15min of Gold」2019年 Digital Movie

揺らめく水面の揺らぎは心地良く、画面を長い時間、ずっと見ていられました。
この輝ける煌めきは、何を写したのでしょうか・・・。※ギャラリストさんに伺うと教えてくれると思います。

映像は2作品でそれぞれのEditionは「1」です。

武田さんの作り出す、豊かな色彩の作品は、ギャラリーの白壁を背景に美しく輝いていました。

概要

武田陽介
「Ash without fire here」
会場:タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム
会期:2019年9月7日(土)〜10月26日(土)
時間:11:00〜19:00
定休日: 日・月・祝祭日
オープニング・レセプション: 9月13日(金) 18:00〜20:00