ムンク展―共鳴する魂の叫び
ムンクの代表作《叫び》は4枚あることをご存知でしょうか?
そのうちの1作で、オスロ市立ムンク美術館が所蔵する《叫び》が初来日を果たすことになり、「ムンク展―共鳴する魂の叫び」で公開されました。
本展は「9つの章立て」で構成されています。
順を追ってご紹介したいと思います。
1章 ムンクとは誰か
本展はオスロ市立ムンク美術館の協力で集められた油彩絵画60点、版画その他40点のあわせて「100点」の出品です。
各章ごとに緩やかに晩年に向かって組み立てられており、章立てはテーマごとに設定されています。
2章 家族―死と喪失
2章は、修業時代を含める初期の作品が展示されています。
初期の作品から分かることは、非常に素晴らしい画力の持ち主だと言うことです。
確かな技術を持ち合わせていることが良く理解出来ます。
都美術館学芸員である小林さん曰く、見どころのひとつとして「病める子」を挙げていました。
人間の内面を描く作家「エドヴァルド・ムンク」がこの作品シリーズによって人間の感情の深さをムンク独特の描き方で表現した、突破口と言えるポジションの作品と位置付けられるそうです。初期代表作のひとつです。
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3章 夏の夜―孤独と憂鬱
ノルウェーという北欧の国特有の風景から導かれる作品の数々を鑑賞することが出来ます。
人物と風景が織りなす感情表現が独特な味を引き出されていて、心を揺さぶられます。
4章 魂の叫び―不安と絶望
本展の注目作品《叫び》の展示される章です。
絵画としての《叫び》は4点存在し、テンペラ・油彩で描かれている今回の《叫び》は初来日となります。
所蔵は前述のオスロ市立ムンク美術館ですが、「厚紙」という支持体の関係上なのか、ムンク美術館でも保存の関係で、常時展示している作品ではありません。そういった意味でも今回の展示は貴重な機会と言えます。
室内は作品保護のためにこのエリアだけ暗く、不安や孤独、絶望の象徴として位置する作品をさらに演出しているようでした。
実際に見る《叫び》の印象は、そこまで陰鬱しているものではなく、数多いムンク作品の中で自然に存在しているように受け止めました。
5章 接吻、吸血鬼、マドンナ
接吻、吸血鬼、マドンナは、ムンクを形づくる重要なモチーフです。これは、生涯繰り返し描き続けたものだそうです。
人間の内面を描く
6章 男と女―愛、嫉妬、別れ
作品《嫉妬》の表現力はなんでしょう!この構図の生々しさには驚かされます。
人間の感情に密接な関係性を持つ「男女関係」を複雑に表現しようとするムンク。良く見ると怖くなりますね。
7章 肖像画
ムンクは自画像を数多く描いた作家ですが、依頼を受けた肖像画も描いております。
8章 躍動する風景
《叫び》のままのイメージで進むと驚くのがこの8章です。
ムンクの後期は鮮やかな色使いで描かれた風景画で、意外な印象を受けるはずです。
9章 画家の晩年
1944年、ムンクは80歳で生涯を閉じます。晩年まで作品制作していたようです。
まとめ
ムンクとは誰か?と言う章からスタートしましたが、章を重ねるごとに「自分は誰か?」というテーマを与えられているような錯覚に襲われました。
絵画を通して生きることを問い続けた作家、ムンク。
多くの作品に触れ、今の自分を振り返る切っ掛けを提示されているように思いました。
どこから聞こえてくるのか分かりませんが、ムンク本人の叫び声が届いたような気持ちになりました。
副題である「共鳴する魂の叫び」とはムンクと私たち自身の関係性を表現したものなのかも知れませんね。
概要
ムンク展ー共鳴する魂の叫び
会期:2018年10月27日(土)~ 2019年1月20日(日)
休室日:月曜日 (ただし、11月26日、12月10日、24日、1月14日は開室)、12月25日(火)、1月15日(火)
年末年始休館:12月31日(月)、1月1日(火・祝)
開室時間:9:30~17:30 ※金曜日、11月1日(木)、11月3日(土・祝)は午後8時まで(入室は閉室の30分前まで)
会場:東京都美術館 企画展示室
当日券 | 一般 1,600円 / 大学生・専門学校生 1,300円 / 高校生 800円 / 65歳以上 1,000円
問い合わせ:03-5777-8600(ハローダイヤル)