【大規模展】代表作《叫び》の他100点展示〜「ムンク展―共鳴する魂の叫び」@東京都美術館

ムンク展―共鳴する魂の叫び

ムンクの代表作《叫び》は4枚あることをご存知でしょうか?
そのうちの1作で、オスロ市立ムンク美術館が所蔵する《叫び》が初来日を果たすことになり、「ムンク展―共鳴する魂の叫び」で公開されました。

東京都美術館で開催:2018年10月27日~ 2019年1月20日

本展は「9つの章立て」で構成されています。
順を追ってご紹介したいと思います。

1章 ムンクとは誰か

本展はオスロ市立ムンク美術館の協力で集められた油彩絵画60点、版画その他40点のあわせて「100点」の出品です。
各章ごとに緩やかに晩年に向かって組み立てられており、章立てはテーマごとに設定されています。

エドヴァルド・ムンク《自画像》リトグラフ 1895年

エドヴァルド・ムンク《地獄の自画像》1903年 油彩、カンヴァス 82×66cm

エドヴァルド・ムンク《横顔のセルフポートレート》1907年

2章 家族―死と喪失

2章は、修業時代を含める初期の作品が展示されています。
初期の作品から分かることは、非常に素晴らしい画力の持ち主だと言うことです。

エドヴァルド・ムンク《自画像》1882年 油彩、紙(厚紙に貼付) 26×19cm

確かな技術を持ち合わせていることが良く理解出来ます。

エドヴァルド・ムンク《カーレン・ビョルスタ》1888年 油彩、カンヴァス

都美術館学芸員である小林さん曰く、見どころのひとつとして「病める子」を挙げていました。

両作ともに:エドヴァルド・ムンク《病める子Ⅰ》1896年 リトグラフ

人間の内面を描く作家「エドヴァルド・ムンク」がこの作品シリーズによって人間の感情の深さをムンク独特の描き方で表現した、突破口と言えるポジションの作品と位置付けられるそうです。初期代表作のひとつです。
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3章 夏の夜―孤独と憂鬱

ノルウェーという北欧の国特有の風景から導かれる作品の数々を鑑賞することが出来ます。
人物と風景が織りなす感情表現が独特な味を引き出されていて、心を揺さぶられます。

エドヴァルド・ムンク《海の青年たち(リンデ・フリーズ)》1904年 油彩、カンヴァス 90.5×175.0cm

エドヴァルド・ムンク《星空の下で》1900-05年 油彩、カンヴァス

4章 魂の叫び―不安と絶望

本展の注目作品《叫び》の展示される章です。
絵画としての《叫び》は4点存在し、テンペラ・油彩で描かれている今回の《叫び》は初来日となります。
所蔵は前述のオスロ市立ムンク美術館ですが、「厚紙」という支持体の関係上なのか、ムンク美術館でも保存の関係で、常時展示している作品ではありません。そういった意味でも今回の展示は貴重な機会と言えます。

エドヴァルド・ムンク《叫び》1910年? テンペラ・油彩、厚紙 83.5×66cm

室内は作品保護のためにこのエリアだけ暗く、不安や孤独、絶望の象徴として位置する作品をさらに演出しているようでした。

「《叫び》がノルウェーから海外に出ることはなかなかありません」と挨拶するのは、ムンク美術館のスタイン・オラヴ・ヘンリクセン館長。

右:エドヴァルド・ムンク《絶望》1893-94年 油彩、カンヴァス 92×72.5cm

実際に見る《叫び》の印象は、そこまで陰鬱しているものではなく、数多いムンク作品の中で自然に存在しているように受け止めました。

5章 接吻、吸血鬼、マドンナ

接吻、吸血鬼、マドンナは、ムンクを形づくる重要なモチーフです。これは、生涯繰り返し描き続けたものだそうです。

エドヴァルド・ムンク《石版(マドンナ)》1895/1902年 石灰石

人間の内面を描く

エドヴァルド・ムンク《接吻》1897年 油彩、カンヴァス 100×81.5cm

エドヴァルド・ムンク《接吻》シリーズ

エドヴァルド・ムンク《吸血鬼Ⅱ》1895年 多色刷りリトグラフ

6章 男と女―愛、嫉妬、別れ

作品《嫉妬》の表現力はなんでしょう!この構図の生々しさには驚かされます。

エドヴァルド・ムンク《嫉妬》1907年 多色刷りリトグラフ

エドヴァルド・ムンク《女の髪に埋まる男の顔》1896年 多色刷り木版

人間の感情に密接な関係性を持つ「男女関係」を複雑に表現しようとするムンク。良く見ると怖くなりますね。

7章 肖像画

ムンクは自画像を数多く描いた作家ですが、依頼を受けた肖像画も描いております。

エドヴァルド・ムンク《ダニエル・ヤコブソン》1908ー09年 油彩、カンヴァス

エドヴァルド・ムンク《フリードリヒ・ニーチェ》1906年 油彩、テンペラ、カンヴァス

8章 躍動する風景

《叫び》のままのイメージで進むと驚くのがこの8章です。
ムンクの後期は鮮やかな色使いで描かれた風景画で、意外な印象を受けるはずです。

エドヴァルド・ムンク《太陽》1910-13年 油彩、カンヴァス 162×205cm

9章 画家の晩年

1944年、ムンクは80歳で生涯を閉じます。晩年まで作品制作していたようです。

エドヴァルド・ムンク《星月夜》1922-24年 油彩、カンヴァス 120.5×100cm

エドヴァルド・ムンク《自画像、時計とベッドの間》1940-43年 油彩、カンヴァス 149.5×120.5cm

まとめ

ムンクとは誰か?と言う章からスタートしましたが、章を重ねるごとに「自分は誰か?」というテーマを与えられているような錯覚に襲われました。

館内の撮影は出来ませんが、会場出口付近にフォトスポットがあります。

絵画を通して生きることを問い続けた作家、ムンク。
多くの作品に触れ、今の自分を振り返る切っ掛けを提示されているように思いました。
どこから聞こえてくるのか分かりませんが、ムンク本人の叫び声が届いたような気持ちになりました。
副題である「共鳴する魂の叫び」とはムンクと私たち自身の関係性を表現したものなのかも知れませんね。

※所蔵及びクレジットの記載がない画像はすべてオスロ市立ムンク美術館所蔵 ©Munchmuseet
概要

ムンク展ー共鳴する魂の叫び
会期:2018年10月27日(土)~ 2019年1月20日(日)
休室日:月曜日 (ただし、11月26日、12月10日、24日、1月14日は開室)、12月25日(火)、1月15日(火)
年末年始休館:12月31日(月)、1月1日(火・祝)
開室時間:9:30~17:30 ※金曜日、11月1日(木)、11月3日(土・祝)は午後8時まで(入室は閉室の30分前まで)
会場:東京都美術館 企画展示室
当日券 | 一般 1,600円 / 大学生・専門学校生 1,300円 / 高校生 800円 / 65歳以上 1,000円
問い合わせ:03-5777-8600(ハローダイヤル)