平子雄一「Project N 71」
五木田智央さんの展覧会が開催されているオペラシティで、もう一つの見逃せない展覧会がありました。
同時開催の「平子雄一」さんの展覧会「Project N 71」です。
大作の5作品を並べた展示は圧巻でした。
大作や立体作品など、植物を中心にカラフルな世界が展開されていました。
彫刻作品が素敵でした。
ホンモノの木材などを利用した作品で、平子雄一さんの世界観がそのまま表現されているようです。
五木田智央さんの展覧会と同時開催ということで、モノクロの作品も展示されていました。
洒落が効いていて面白い作家さんだなぁ、と思いました。
良いなぁ、と思いながら鑑賞していました。
同時期に江戸川橋の「WAITINGROOM」ギャラリーさんでも同時開催されているようです。
平子雄一 未知の森のなかで
平子雄一は、空想上の植物たちが繁茂する想像力豊かな絵画シリーズを制作しています。そこでは植物に代表される自然と、人間の営みや人工物が同列に描かれ、ときに自然と人工の境目が判別しがたくなっています。頭部が植物になった人物や、特徴ある様々な象徴的モチーフが巧みに配されて、画面はときに禍々しい力を帯びて黙示録的な様相を呈し、同時に滑稽な雰囲気を醸し出します。それは物語性の強い表現といえますが、しかし平子の一貫した関心は、具体的な物語の叙述にあるのではなく、あまりに身近な存在であるためか人々の意識のなかでつねに「曖昧」なまま見過ごされている「植物」と人間との関わりについて、自然と人間との関わりについて、あらためて独自に考察することにあります。
その出発点は、留学先の英国で、人工的に選別され管理された植物や緑地を人々が「自然」として愛好していることに、疑問と滑稽さを感じ、自らが自明としていた自然観との差異を自覚したことだといいます。岡山に生まれ育ち、自然豊かな環境のなか、森や田畑に触れながら成長したという平子にとって、野放図に繁茂する生命力こそが自然であり、相手を完全にコントロールしながらそれを「自然」として愛でるという発想自体が、まさに想定外のものでした。当時の平子は、英国の都市生活者たちは生の自然に触れてはおらず、そもそもどうして人々は膨大なコストをかけて人工的な「自然」をつくりだしているのか、素朴な疑問を覚えたといいます。
こうした経緯からすれば、平子が描く繁茂する植物たちを、自然を対象化し支配しようとする西洋的な自然観とは異なる、たとえば日本の歴史、風土に根ざした「アニミズム的」な自然観と結びつけて捉えるのは誤りではありませんし、そのことを平子自身も意識はしているでしょう。とはいえ、平子が総体としてやろうとしていることは、単なる自然の生命力の礼賛や、一面的な自然崇拝の表現というわけではありません。ましてや植物や緑、森が好きだから、あるいは自然が好きだからそれを描く、というのとはまったく異なります。平子自身、いわゆる植物愛好家でも、自然愛好家というわけでもないといいます。平子は、あくまで自然と人工、人為と自然との関係に、その結びつきの深さに、またその結びつきの曖昧さそのものに、焦点を当てようとしているのです。
概要
平子雄一
Project N 71
会場:東京オペラシティ アートギャラリー 4Fコリドール
期間:2018年4月14日(土)〜6月24日(日)
開館時間:11:00 ─ 19:00(金・土は11:00 ─ 20:00/いずれも最終入場は閉館30分前まで)休館日:月曜日(ただし4月30日は開館)
入場料:企画展「五木田智央 PEEKABOO」、収蔵品展062「日常生活|相笠昌義のまなざし」の入場料に含まれます。
主催:公益財団法人 東京オペラシティ文化財団