なうふ現代
東京都は離れた場所、岐阜の地で行われた井田幸昌個展「Banquet」に行ってきました。
直前に開催されたイギリスでの個展は大成功に収めたそうですが、日本国内では2017年唯一の個展です。以前からグループ展で出品されていた関係があったようで、その縁が個展開催に繋がっていったそうです。
筆者が訪問したタイミングは会期の終了直前。作品リストを事前に見たかったのですが、電話口に出てお話ししたギャラリーのオーナーさんから「そういった問い合わせが多いのですが、是非直接見て欲しいのでお送りしていないのです」とのこと。思い切って行くことにしました。
井田幸昌展「Banquet」
東京から約2時間半掛けて到着した岐阜のギャラリー。オーナーの方にご挨拶をして、早速展示物を見て回ります。
掲出されているリストを見ると、既に作品の多くは購入されていました。
しかし、岐阜のギャラリーに来る来場者が少ないのか、残り3割ほどの作品はまだオーナーが決まっていないという状態です。コレクターとしては非常にラッキーでした。
作品
作品は0号サイズにも満たない小作品から100号の大作まで、ギャラリーの空間にフィットする、ほど良い数が出展されていました。
その一方で、作品の販売が非常に好調のため、個展に合わせて用意された作品も複数あり、絵具がきちんと乾いてない状態の作品が幾つかありました。濃厚な油絵の具の香りも演出的で、心地良かったです。
さて、ギャラリー「なうふ現代」の入口を入ると、いきなりカラフルで奥深い「End of Today〜Flower」というタイトルの2作品が出迎えてくれます。井田さんの特徴的なタッチのペインティングナイフが縦横無尽にキャンバスで踊っています。
奥に入ると古典のタイトルにもなっている大作「Banquet」です。
古典的なテイストなのに、井田さんらしい緑の差し色が新鮮なイメージに巻き戻してくれているようで、作品全体を引き締めています。
広いスペースには人物画が綺麗に並んでいました。
とにかく、油絵の特徴的な筆触、配色、構成力は素晴らしいですね、天才!
他にもこんな作品が・・・。肉屋さんをイメージしたようです。
人物の顔を描く表現力の引き出しは底知れずに凄いですね。
リアルだけど愛嬌のある豚さん😀
「1000の顔を描く」とされているハガキ大の小作品。
じ〜っと正面から見てたり、横から見たり、近くで見たりすると、作品が少しずつ変化していくような感覚にトリップしていきます。最も小さいこちらの作品で3万円という価格設定です。手の出やすい価格設定でした。
小作品の左の作品は「枯れた花」。近くで見ると立体的で彫刻作品のようでセクシーさが感じられました。絵肌が強烈な作品です。右手には奥様を描かれた作品《MIKO 2016》がありました。奥様は原美湖さんというアーティストです。
まとめ
非常に素晴らしい作品の数々に出会うことが出来ました。
筆触が暴力的で狂気を感じるようなタッチがあると思えば、繊細な色使いやマチエールが含まれていて、ゾクゾクします。デッサン力が高く緻密に描かれた作品もあり、作家としての腕力を随所に見ることが出来ました。芸大を3浪して入学し、今も籍を大学院に置いているそうですが、何しろ28才という若さでこのような圧倒的作品を書き上げるチカラは将来性を感じます。※既に修了されています。
「久々に油の匂いを浴びて嬉しくなりました」とギャラリーオーナーが言うように、アクリル絵の具全盛の時代に油絵の具を自在に操って創作するアプローチは、見ているこちらも楽しくなってきます。
塗り立ての絵の具がまだ固まっていない生乾きの作品は、新しい生命が呼吸をするような動きを感じるものでした。
東京から遠路足を運んで本当に良かったと、心から思える個展でした。
概要
井田幸昌個展 – Banquet –
会期 2017年10/21〜11/12
月曜火曜休廊
なうふ現代
岐阜県岐阜市なうふ坂14番
058-264-2920