【ジャム・セッション】鴻池朋子「ちゅうがえり」 アーティゾン美術館

【ジャム・セッション】鴻池朋子「ちゅうがえり」

「ジャム・セッション」は石橋財団コレクションと現代美術家の共演企画です。
今回はそのシリーズ第一回、鴻池朋子さんを迎えて企画された鴻池朋子「ちゅうがえり」に伺いました。会場はアーティゾン美術館です。

鴻池朋子「ちゅうがえり」 アーティゾン美術館

「ちゅうがえり」というタイトルは、意味をなるべく持たず、動物の鳴き声のようなタイトルにしたかったという鴻池さんの考えで、意味づけを極力消すためにひらがなで付けられたそうです。

展示風景

本展は地方での展示実績のある、2つの大作が披露されました。
ひとつは秋田での個展「ハンターギャザラー」で展示された《ドリーム ハンティング グラウンズ》です。

鴻池朋子《ドリーム ハンティング グラウンズ》カービング壁画 2018年

「ハンターギャザラー」での展示風景

もうひとつは、瀬戸内国際芸術祭2019で発表された《皮トンビ》です。
《皮トンビ》は国立ハンセン病療養所のある大島で、療養所裏の山道を切り開いて周回できる散策路「リングワンデルング」の中に野ざらしで展示されていた作品です。4m×12mの大きな作品ですが、現地で見たときよりもスケール感のある作品で圧倒されました。

鴻池朋子《皮トンビ》2019年

《皮トンビ》※Detail

《皮トンビ》※Detail

瀬戸内国際芸術祭2019 大島「リングワンデルング」内の《皮トンビ》展示風景

新作《襖絵》は円形に設置された大きな作品でした。また、中央に突如として現れる滑り台に視線が吸い込まれます。

鴻池朋子《襖絵》インスタレーション 2020年

滑り台は実際に鑑賞者が滑るようにしっかりと作られています。
身体を使った体験を通じて、鑑賞体験が確かなものとして刻まれました。
高い位置から滑り出しから、滑り終わったときの低い視点まで、美術作品に囲まれている中での感覚の変化が楽しめました。

鴻池朋子《襖絵》インスタレーション 2020年

鴻池朋子《見ゆ〜初雪》2012年

展示風景

鴻池朋子《Wild Things – Hachilympic》2020年 ※東京2020公式ポスター原画

《影絵灯籠》は、回転軸に備えられた車輪が回る影絵の作品です。
影絵に転換したキャラクターの動きには命が宿っているようでした。

鴻池朋子《影絵灯籠》インスタレーション 2020年

左:鴻池朋子《山ジオラマ》2013年
右:鴻池朋子《湖ジオラマ》2013年

鴻池朋子《湖ジオラマ》2013年

展示風景〜様々なプロジェクトの写真やスケッチが展示されていました

瀬戸内国際芸術祭「リングワンデルング」のスケッチ

左:カミーユ・コロー《オンフルールのトゥータン農場》1845年 ※石橋財団アーティゾン美術館 
右:鴻池朋子《見ゆ〜地球断面図》2012年

展示風景

吊された毛皮を縫うように進む展示コーナーもあり、直接的な皮膚感覚を味わうことも鴻池さんの特徴的な表現です。

毛皮(オオカミ、シカ、くま、他)

鴻池朋子《狼頭巾》2015年

展示風景

ギュスターヴ・クールベ《雪の中を駆ける鹿》1856-57年頃 ※石橋財団アーティゾン美術館

鴻池朋子《オオカミ皮絵キャンバス》2016年

《オオカミ皮絵キャンバス》※Detail

展示風景

鴻池朋子《ボードゲーム》すごろくスケッチ 2020年

石橋財団コレクションの特定の作品からインスパイアされた新作や、コレクションとアーティストの作品のセッションによって生み出される新たな視点による展覧会、というものでしたが、コレクションから出された3点は学芸員のチョイスだったそうです。

鴻池朋子さんによるスケールの大きな作品は、アーティゾン美術館の展示室で少々窮屈そうな佇まいに感じましたが、生きるということ、命を感じることについて思いを馳せる内容でした。

概要

ジャム・セッション 石橋財団コレクション × 鴻池朋子
鴻池朋子
ちゅうがえり

会場 : アーティゾン美術館 6 階展示室
会期 : 2020年6月23日[火] 〜10月25日[日] ※会期変更
時間 : 10:00 〜18:00(祝日を除く毎週金曜日は20:00まで/当面の間中止)*入館は閉館の30分前まで
休館日 : 月曜日 (8月10日、9月21日は開館)、8月11日、9月23日
入館料:一般 1,100円(予約)1,500円(窓口)大学生以下:無料(要予約)