平子雄一「Memories」
平子雄一さんの個展「Memories」にお伺いしました。会場は江戸川橋のギャラリー、WAITINGROOMです。
平子雄一さんは、植物と人間の共存について、そしてそこに浮かび上がる関係性への疑問をテーマに、ペインティングを中心としながら、ドローイングや彫刻、インスタレーション、サウンドパフォーマンスなど、メディアを横断して作品を発表しています。
ギャラリーに入ると、中央に組まれた大きな櫓(やぐら)が目を引きます。
今回の新作個展のテーマに「記憶」を選んだ平子雄一さんですが、過去3年間にスマートフォンで撮影した約13,000枚もの写真を参考にして、新シリーズ≪Perennial ≫が制作されました。
タイトルとなっている「Perennial」とは「多年生植物」を表す名称であると同時に、「長続きする」「永続する」といった意味も持ち合わせています。一時的な記憶ではなく長く続いていくような世界を表現することによって、より普遍的な人間と植物との関係性に思いを巡らしながら制作したそうです。
本展にあわせて、良質な素材でアーティストとのコラボTシャツを制作している「mm’s」が、 枚数限定Tシャツを販売していました。
また、美術館では当たり前になっている「音声ガイド」ですが、本展でも体験できるようになっています。音声ガイドコンテンツは平子雄一さんご本人による解説が中心で、ギャラリーディレクターの芦川さんが聞き役として2人で進行していきます。
音声ガイドは、非常に分かりやすく構成されていて、平子さんの世界観がさらに広がりをもって感じるようになることでしょう。鑑賞者はこのガイドによって、さらに豊かな鑑賞体験に繋がっていくことと思います。
なお、限定Tシャツ「mm’s」も、音声ガイド企画も、平子雄一さんを支持するコレクターから持ち上がった企画だという点を記しておきたいと思います。
意識の高いコレクターの視点から、ギャラリーでの展覧会に味付けされる取り組みは、時に閉鎖的と捉えられるアートマーケットを開放していく取組として、今後も注目していきたいと思います。
世界的に展開する作家活動と共に、個性的で多様性のある個展を開催した平子雄一さん。新たなシリーズ作品を発表するなど、アーティストとしての勢いを保ちつつ、さらにその可能性が広がっていくような個展でした。
概要
平子雄一 Yuichi Hirako
Memories
会期:2019年12月21日~2020年1月26日
会場:WAITINGROOM
時間:12:00〜19:00(日〜17:00)
休館日:月、火、祝日、年末年始(12月30日〜1月7日)