【東京初個展】ベルベット布と絵具が魅せる強さ〜谷原菜摘子「まつろわぬもの」MEM

谷原菜摘子「まつろわぬもの」

谷原菜摘子さんの東京初個展「まつろわぬもの」にお伺いしました。会場は恵比寿のギャラリーMEMです。

谷原菜摘子「まつろわぬもの」MEM

本展タイトル「まつろわぬもの」について、谷原さんは「まつろわぬものとは、大和朝廷が成立しようとした頃、激しく抵抗を続けた民族のことである。従わないもの、恭順しないものという意味」であり、自分が描いているものは、まつろわぬものたちの物語であるといいます。

谷原菜摘子《まつろわぬもの》180cm×200cm 2019年

作品《まつろわぬもの》は180cm×200cmの大作です。
谷原さんの作品は、黒地のベルベット布に油彩やクリル絵具で着彩を施していますが、大作でありながらも、描き込まれた情報量が圧倒的です。

谷原菜摘子《審判》 194cm×130cm 2019年

黒地のベルベットは、どんなに綺麗な絵具が置かれても怪しさや不穏さが含まれ、独特な強さが放たれているように感じます。

展示風景

黄昏時を表現した《トワイライト》は、夕焼けで人の顔がわからなくなる時間帯で起こった出来事をイメージした作品。
顔が判別しにくい夕暮れ時、3人の女性がそれぞれの存在感を際立たせつつ、鑑賞者にその関係性を問いかけるような作品です。

谷原菜摘子《トワイライト》170cm×120cm 2019年

《贖罪》は、フランス・パリで制作された作品です。
あやとりで遊んでいるのか、編み物をしているのか、赤い糸と白いベール、ベルベットの黒地が、華やかな花や模様と交錯していきます。

谷原菜摘子《贖罪》 145.5cm×112cm 2019年

《あなたが行けるところまで》は、名画のモチーフで取り上げられるフランスの崖を背景に、血の海のように見える「マグマ」が徐々に迫ってくる様子を描いた作品です。谷原さんは実際に現地は赴いて、絵のモチーフとして取り入れているようです。
作品は、取材力と想像力によって生み出されています。

谷原菜摘子《あなたが行けるところまで》 73cm×52cm 2019年

《何も見えない》 は、実際に起こった大量殺人事件「津山三十人殺し」から着想された作品です。

谷原菜摘子《何も見えない》 45.6cm×38.3cm 2019年

谷原菜摘子《オシラサマ》 54.3cm×33.3cm 2019年

谷原さんは作品制作の過程の中で下絵を残してステップとしています。
本店はそのドローイング作品も展示販売しています。

谷原菜摘子《トワイライト》紙にパステル 79cm×55.5cm 2019年

谷原菜摘子《まつろわぬもの 3》27.2 x 32cm 紙にパステル

関西出身の谷原さん東京進出の初個展です。
作品の販売価格はかなり抑えられている印象。これは、関東地区でコレクターを増やしたい意向も含まれているようです。

黒地のベルベット布と絵具が奏でる作品の表情はどこまでも深く、私たち鑑賞者はその闇と色の世界に引き込まれて行くのです。

概要

谷原菜摘子
「まつろわぬもの」
会期:2019年10月15日(火) – 11月10日(日)
会場:MEM (東京都渋谷区恵比寿1-18-4 NADiffA/P/A/R/T 3F)
営業時間:12:00〜20:00
定休日:月曜日 [祝日または祝日の振替休日は開廊し、翌日休廊] アーティストトーク・オープニングレセプション:
10月19日(土) 18:00〜
ゲスト:中井康之 (国立国際美術館学芸課長兼副館長)
参加費:無料
※トーク終了後にオープニングレセプション開催