カルティエ、時の結晶
国立新美術館で開催中の「カルティエ、時の結晶」にお伺いしました。
カルティエの展覧会は、「カルティエ コレクション」の歴史的な作品を対象として、過去にも1995年、2004年、2009年と複数開催されてきていますが、本展覧会では、世界でも初めての試みとして1970年代以降の現代作品に焦点を当てて展示構成されています。
また、総数約300点に及ぶ作品のうち、およそ半数の「個人蔵」作品が展示されていることも特徴的でした。
数多くの個人コレクション作品が集まる貴重な機会となっています。
そして、会場構成を手がけるのは新素材研究所 / 杉本博司+榊田倫之。
木や石などの天然素材、ミニマルで上品な照明デザインも含め、洗練された展示空間でカルティエ作品の鑑賞体験もひときわ上質な体験となりました。
序章「時の間」
入り口を抜けると杉本博司さんの《逆行時計》が目の前にそびえ立つように展示されていました。
ガラス玉の重さで時計が逆に刻まれるもので、タイミングによっては音も鳴る作品です。
会場構成を手がけた<新素材研究所>の素晴らしい空間デザインに息を飲みます。
「時の間」は、「時計製造の奇跡」と称されるミステリークロックとプリズムクロックが、鎮座する展示です。
ミステリークロックは、2本の時計の針はあたかも機械とは全く繋がりがないかのように宙に浮かんで見えます。ムーヴメントは台座や装飾彫刻の中に隠されているのです。注意深く見ても巧妙な作りで、その仕掛けを明らかにすることは出来ませんでした。制作には時計師のほか、金銀細工師、エナメル職人、研磨師など、多くの専門家が携わり、完成までに最低でも数ヶ月を要するそうです。
第1章「色と素材のトランスフォーメーション」
「時の間」を抜けると第1章「色と素材のトランスフォーメーション」に移ります。
様々な素材と色が組み合わされたカルティエの作品を素材づかいや色彩の観点から見ることで、独創的な視点と表現手法を検証します。
ここでも落ち着いた空間デザインや木や石などの天然素材を使った展示方法など、作品の美しさを一層引き立てるような見せ方に心が躍りました。
珪化木(土に埋もれた樹木が化石化したもの)が使われた《ネックレス》は、パンテールの頭が彫られています。特殊な素材と宝飾品の融合は見事でした。
第2章「フォルムとデザイン」
カルティエ作品の「フォルムとデザイン」を中心に構成されたのが次の第2章です。
宝石を組み合わせたり、さまざまなカットを用いたりすることでデザインが構築され、リズムが生まれ、構成における抽象性に宿るパワーが解き放たれます。
この章は、最も展示数の多い122点の作品が展示されています。
次々と目に飛び込んでくる「カルティエコレクション」は、それぞれの作品ごとに個性的な輝きを放っていて、圧巻の展示空間でした。
第3章の「ユニヴァーサルな好奇心」
最後の展示空間は、日本を含めた世界各国のデザインを取り込んだ作品で構成されていました。
新素材研究所 〜 杉本博司+榊田倫之による展示構成が素晴らしく、気品のある空間と作品の数々とが、見事に融合していました。
落ち着きのあるライティングが約300点の作品それぞれに注がれ、華やかで煌びやかな「カルティエコレクション」を演出し、見応えのある展覧会となりました。
ミュージアムショップ
出口を抜けた場所に位置する特設のミュージアムショップもこだわりの空間デザインでした。
概要
カルティエ、時の結晶
会場:国立新美術館 企画展示室 2E
会期:2019年10月2日(水)~12月16日(月)
休館日:毎週火曜日休館 ※ただし、10月22日は開館、10月23日は休館
開館時間:10:00~18:00 ※毎週金・土曜日は20:00まで
※入場は閉館の30分前まで
主催:国立新美術館、日本経済新聞社
特別協力:カルティエ
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
協賛:大成建設、山元
協力:川島織物セルコン、宇都宮市/大谷石材協同組合、ジオネクサス、SALIOT、ザ・ユージーン・スタジオ
会場構成:新素材研究所/ 杉本博司+榊田倫之