井田幸昌「Portraits」
井田幸昌(Yukimasa Ida)さんの個展「Portraits」にお伺いしました。
会場はGINZA SIX6階フロア「銀座 蔦屋書店 GINZA ATRIUM」です。
井田さんの個展は久々でしたので楽しみにしておりました。
国内の展示としては2017年10月のなうふ現代、2018年1月の渋谷西武以来ですから久々の個展となりました。
前回の個展からこれまでの間、Forbes JAPANが選ぶ「30 UNDER 30 JAPAN」の1人にも選ばれ、海外からも注目を浴びる画家に成長しております。
注目を浴びている状況に加えて、本展の会場となる商業施設「GINZA SIX」は、東京・銀座のど真ん中にあるビルですから、過去のどの展示よりも多くの鑑賞者が見込まれ、最も注目の集まる展覧会になることは間違いないでしょう。事実、筆者が訪問した際には、日本人の若者や中国人の団体客など、様々な客層が集まっておりました。
さて、会場となったスペース「GINZA ATRIUM」ですが、フロアの中央に位置していることから、自然に人が集まってくる場所です。さらには、空間の外からも作品が見える設計になっており、大きな作品も外側から覗き見えます。書店目的の来場客も、引き込まれるように足を運んでしまう、誘引力を感じる展示です。
本展は、タイトルの通り、井田作品の中で最も象徴的な「ポートレート」中心に構成されている展示です。
井田幸昌ファンを自称する筆者としましても、ポートレートは井田作品の中核をなす作品であるという理解をしておりますので、大きく注目されるべきものだと考えております。
会場に入ってすぐに視線が行くのは、大作4点がズラリと並んだ壁面の展示です。
井田作品の醍醐味の1つは大作ほど素晴らしい!と思っておりまして、しばし鑑賞に浸ってしまいました。
大作4点では、アンディ・ウォーホルとバスキアのポートレートが2点ずつ展示されていました。
作品は、近くで見ると、目にも鮮やかな綺麗に引かれた絵具がゾクゾクするマチエールです。
絵筆の跡は、直感的な軌跡を描いているようですが、計算し尽くしているような絵具の混ざり方にも感じます。美しい芸術センスや技巧に、改めて素晴らしい才能を感じてしまいます。
アンディウォーホルの似たような作品も、見た目の色彩に大きな違いを感じるものではありませんが、筆使いが違っていて、柔と剛を織り交ぜてきた印象です。
4点ともに素晴らしい作品の仕上がりでした。
End of todayシリーズ
F4号のEnd of todayシリーズはコレクター的には手が出しやすく、定番の作品ですが、新しく風景画作品も出てきていて幅が広がってきた感じです。ポートレート作品は、海外など外に出て色んな影響を受けているのでしょうか、少し印象が変わったテイストの作品も含まれていました。
風景画が出てくるなら、Flowerも見たかったなぁ・・・。
ウェイティングリストに行列が出来ているのでしょう、大作を含めて主要な作品は事前に売約されていたようです。
コレクター的には手に入れたい作家さんの1人でしょうが、購入可能な作品でも、価格的には大きく上昇しています。約2年前からは数倍上がった印象です。
厚塗りだけではなく、《End of today -1/3/2019 woman》に見られるように、薄く塗られた作品のマチエールが非常に美しく、これまでに無い作品の表情を感じる事が出来ました。
差し込む自然光が手伝ったのか、絵具の発色が鮮やかで、伸びやかな軌跡を辿る絵筆の跡が素晴らしかったです。
また、《pope》で見せる圧倒的なマチエールは見事です。繰り返す筆が残す複雑な色彩がキャンバスを埋め尽くしており、他の展示作品にない表情をみせていました。
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