【個展】不完全なメッセージを問う〜エキソニモ(exonemo)「LO」@WAITINGROOM

エキソニモ(exonemo)「LO」

千房けん輔と赤岩やえ、2名によるアートユニット「エキソニモ(exonemo)」。
ニューヨークに在住している彼らの個展が久々に日本で開催されました。会場は江戸川橋のWAITINGROOMギャラリーです。

展示風景

本展はデジタル社会と現実社会を接続した作品表現によって鑑賞者に問いかけるような作品が多く展示されていました。

アーティスト・ステイトメント
“本展のタイトル『LO』は、1969年(今から50年前)にインターネットの原型となるARPANETの最初の通信実験で送信されたメッセージです。
「LOGIN」と入力しようとしたところ、「LO」を送信した後にシステムがクラッシュ。続く「G」は送信されず、この2文字がインターネットの世界を切り開いた言葉になりました。
エキソニモは、世界が分岐したとも言えるこの「LO」に続く言葉が「G」でなかったら、それは「VE」だったかもしれない(LOVE)、「L」だったかもしれない(LOL)と、想像を巡らせました。
「不完全なメッセージ」が現在をこのように形作ったということは、ある意味示唆的です。メッセージが不完全であるからこそ、逆に伝わるものがあり、そこから異形の何かが生み出されることがある。
この展覧会は、エキソニモの新作と旧作(リミックス含む)を構成し、そこから不完全なメッセージを立ち上げ、それに続くものを鑑賞者に問いかけるものになるでしょう。” エキソニモ

Shotgun text

会場に入ってまず目に付いたのがPCのキーボード。いずれもキーの部分が欠託していて壊れています。
《Shotgun text》シリーズです。

Shotgun textシリーズ 展示風景

《Shotgun text》シリーズは、アクティブな状態のキーボードをガンで撃ち壊す作品です。

ライフル使いのおじさんから教えてもらって訓練する様子〜映像より

ちょっと意味が分かりませんが、下記の映像のように破壊する行為です。

弾がキーボードに命中した衝撃時に打たれたキーボードの‘入力信号’はそのままタイトルになっています。

「/////////////////////////」と連打されたものがクレジットされた作品キャプション。

破壊されてもバックライトが生きていたキーボード。そのまま電源につながれて展示されていました

Click and Hold

《Click and Hold》シリーズは、なかなかユニークな作品です。
白いキャンバスに表現されているのはマウスのポインタ(矢印)。
キャンバスの大きさによって矢印のサイズが変化していることに気がつきます。

《Click and Hold》シリーズ展示風景

作品を良く見ると、pixelやdpi表記が残されています。
この作品は、キャンバスの角を座標軸の起点とし、そこからX軸とY軸をpixelの数値だけキャンバス内で移動し、ポイントマウスを釘で打ち付けている作品です。

キャンバスの隅にクレジットされた座標と解像度の表記。サイン付

キャンバスの大きさは同じ作品で3タイプ大・中・小と展示されていました。
面白かったのはその作品価格。なんと、全ての作品が200,000円(税別)という均一価格なのです。
アート作品は一般的に作品サイズが大きくなればなるほどに価格が上昇していく者ですが、デジタル上のデータを作品に転換しているため、「解像度の違いだけで、全て同一のデジタル作品」という建て付けで作品の値付けを行っているとのことでした。

釘で打ち付けられた矢印

モニターの中でひたすら餌を食べる猫。そのさらには電源の入ったマウスが置かれています。
モニターの中央を見るとマウスポインタが表示されていますが、餌を食べる猫の動きは巧妙で、皿の中にあるマウスに触れることはありません。
モニターの中で動かないマウスポインタと小気味良く餌を食べ続ける猫の動きが対照的で面白い作品です。

《Cat and Mouse(断末魔ウスからの抜粋)》

2つの縦型モニターで映し出される作品《I randomly love you / hate you 》。
love youとhate youの前にランダムなワードが入り、全く噛み合わない会話が続いていくコンテンツです。

《I randomly love you / hate you 》2018年

モニター1台で作られた作品《I randomly love you 》は、1人がひたすら愛を呟く作品。
ありとあらゆるlove表現に満たされた世界です。

《I randomly love you 》2019年

デジタルをキーワードに作品を展示しているものの、作品の見せ方は至ってフィジカル重視でアナログ的です。
デジタルが一般社会に許容され根付いていく過程の中で、私たちが無意識に過ごしているようなユニークな視点があって興味深く作品を見ることが出来ました。

概要

エキソニモ 「LO」
会場:WAITINGROOM
会期:2019年2月23日(土)- 3月24日(日)
時間:水・木・金・土 12〜19時、日 12〜17時 ※定休日:月・火・祝
オープニングレセプション:2月23日(土)18:00-20:00