【個展】身体的な意識を研ぎ澄ます〜川内理香子「human wears human / bloom wears bloom」@鎌倉画廊

川内理香子「human wears human / bloom wears bloom」

鎌倉山にある鎌倉画廊にて開催されている川内理香子さん個展「human wears human / bloom wears bloom」にお伺いしました。

ギャラリーは歴史を感じさせないオシャレで綺麗な空間。気持ち良く鑑賞出来ました。

川内理香子「human wears human / bloom wears bloom」

川内理香子さんは、「身体」というテーマを原点とした制作活動を行っていらっしゃる作家さんです。本展のタイトル「human wears human / bloom wears bloom」にも表現されているように、人間や植物の外面から内面に迫るようなアプローチがなされています。

ステートメント

人間、動物、植物、食べ物、あらゆる事物の細かなデテイルを剥いで目を細めると、“共通の形”が見えてくる。ことがある。
アニミズム的思考では、人間や動物を差別化している身体的特徴を洋服や衣のように捉え、それを“脱衣する”と皆同じ魂になるという。
事物が纏う固有性が削ぎ落とされた、裸の姿はどのようなものだろう。
ヴェールの奥に見え隠れする、あらゆる垣根を越える、根源的な感覚や形、存在に、わたしは触れることができるのか。

2018年9月 川内理香子

出展されている作品は、ドローイングを中心に、油彩 、キャンバスに針金を留めつけてフォルムをかたどる立体作品、樹脂による彫刻など、合わせて約40点です。

1階フロア

鎌倉画廊は1階が受付や事務的な執務室機能が中心で、主な展示室機能は2階と3階になっております。
1階フロアには作品がケースに収められている形で展示されていました。

1階のショーケースに飾られた作品 《Leaf》2018年 油彩、キャンバス 170×260mm

2階フロア

スロープの階段を使って2階フロアに上がりました。ロの字のようなフロアです。

展示風景〜水彩ドローイング

奥:水彩ドローイング作品《all same brain》 右:半立体的な針金を使ったドローイング《sun and fire》

通路を半ば遮るような立体作品〜右・手前《red plamt(2)》

《dragon fruit》2016年 紙に水彩、鉛筆 257×182mm

油彩作品はキャンバスの布地を見せる仕上がり〜《foliage》2018年 油彩、キャンバス 365×265mm

 

3階フロア

3階はトークショーも開催できるほど広い展示スペースです。

トークショー風景

《Red Plant(1)》2018年 針金、FRP、ペイント H1580×W270×D400mm

使用している樹脂は固まりにくいため、硬化剤を使用しているそうです。硬化剤を調整し、色を濃淡させるように作られています。《Red Plant(1)部分》

《bloom》2018年 紙に水彩、鉛筆 410×318mm / framed 454×364mm ※2点組

展示風景

《loop》2017年 油彩、キャンバス 1620×1300mm

左より順番に《rose》《heart》《Uterys》

左:《pistil》2017年 油彩、キャンバス 1620×1300mm

アーティストトーク

個展開催初日には川内理香子のアーティストトークが開催されました。ナビゲーターは「WAITINGROOM」の芦川朋子さん。2018年に開催されたもうひとつの個展「Tiger Tiger, burning bright」を開催したギャラリーのオーナーさんです。トークショーは過去の作品を振り返りながら川内理香子さんの作品制作に関わる姿勢や考えなどを聞いていく進行です。

聴衆は老若男女幅広い客層でした

体に起こる物理的変化やどうしようもない感覚について興味があり、モチーフに採用していると言うお話しからスタートしました。幼少時から食に関心が強いというお話しでしたが、スキニージーンズから伺えるカラダの細さが映り印象的でした。

芦川朋子さんのポイントを押さえた的確な質問に対し、ふんわりとした受け答えする川内理香子さんのバランスが絶妙でした。

川内さんのアーティストトークは質問に対して自分の言葉を探しながら言語化を模索しているようでした。
針金作品の制作も完成形を意識して作るというよりも、曲げながら形状を作っていくようなアプローチであったり、過去作のネオン作品についても明確な意思によって形作るというよりも、感覚的に作られた印象を受けました。

身体的なものと、カラダを作り出す食べ物について、強く意識が向いて制作活動に繋がっているようです。
川内理香子さんご自身が抽象的な存在で、境界線と言う概念についても明確な線引きをしておらず、ファジーでユルフワな思考があって作品に繋がっているように感じました。
また、素材についての感度が敏感と言うか意識が強く、「生命体として捉えてみている」という話しを聞いて、身体的な意識と繋がっていることに納得しながら、統一されたテーマを再認識しました。

こういう作家さんの作品はジワジワと長く鑑賞出来る作品になる傾向があるので、筆者も展示作品に強く惹かれました(個人の感想です)。川内作品のエントリーをどこからはじめようか考えております。

概要

川内理香子 展
human wears human / bloom wears bloom
2018年11月10日-12月28日
休廊: 日曜・月曜・祝日
協力: WAITINGROOM
11月10日(土)14:00- アーティストトーク
川内理香子 × 芦川朋子(WAITINGROOM オーナー、ディレクター)
(サイン入りB6カード付きお席確約予約。500円。定員50名)
11月10日(土)16:00-18:00 オープンニングパーティー