耳に迫る 蛙の声に 其の覚醒を 促されて
赤木美奈さんが音頭を取って企画した3人展「耳に迫る 蛙の声に 其の覚醒を 促されて」にお伺いしてきました。会場は「アートスペース銀座ワン」です。
会場を入るとまずは展覧会名となる作品「耳に迫る 蛙の声に 其の覚醒を 促されて」。複雑な形状と深い色合いが見事な立体作品です。動きもあって不安定に見えるけどバランスが取れていますね。
比較的暗いトーンの色が多い中で、入口の反対側には明るい色と円形のキャンバスを採用した作品がありました。個展ギリギリまで粘って作成した作品だそうです。
3人展
今回は赤木美奈さんの呼びかけで集まった3人による企画でした。Twitterによる繋がりで実現したようですが、それぞれの世界観が重なって濃厚な空気が漂っているよう。次々に来るゲストの熱気も手伝って熱気が立ちこめるようなギャラリーでした。
赤木美奈
作家の赤木美奈さんにお話を伺ってみました。
赤木さんは愛媛県出身で大阪に在住の現在24歳の若手作家。美大などには通わず、独学で作品制作を続けてきているようです。作家活動は約5年ほどですが、独学とはいえ3歳から絵を描き続けているキャリアと、旺盛な好奇心で多くの作品に触れインプット量を重ねてきたようです。
作品の中心を構成するのはいわゆる細密画のカテゴリに入るとは思いますが、原画をよく見るとマチエールの特殊な質感が印象に深く刻まれるでしょう。
キャンバスの場所によって変化する絵具の厚みや、光に反応して変化する色彩は奥行きを感じることでしょう。
作品
最も印象に残った作品は「押し入れの中から行けぬ海」です。
子供の頃に押し入れの中で遊ぶことが好きで、近くに海があってもおしいろの中で想像していたそうです。見方によって変わる海の変化を表現し、1回で描いている場所もあれば、4層5層に積層させる部分をつくるなど、光の加減で大きく表情を変えるところも魅力の1つです。
支持体を越えていく
赤木美奈さんの作品制作はキャンパスだけに留まりません。
世界観を表現出来る場所を支持体に限定せず、作品の範囲内にあれば可能な限り作品の世界観を繋げて表現していくアプローチです。
キャプション
特徴的なアプローチの1つは作品のキャプション。ギャラリー側で作品のタイトルや制作年、使用画材などが記載することが一般的かと思いますが、赤木美奈さんの場合はご覧の通り自作しています。それ自体が作品として成立するようなインパクトですね。
キャプションには「蝶」と「蛾」の2タイプあります。
「朝に見て頂きたい作品には蝶のキャプション、夜に観て頂きたい作品は蛾のキャプションを作っています」ということを表現されたようです。
作品の裏面
また、キャンバスの裏側についても画面を埋め尽くすように文字で埋め尽くされています。
作品の裏側は「表を見るだけでは解らない所を、裏を見たい人へ向けて、実は…裏も描いている」というメッセージだそうです。作品に込める想いを伝える力を持つ作家さんですね。写真で掲載する事は出来ませんので、作品を譲り受けたコレクターの特権になりそうです。
まとめ
精神的に浮き沈みが激しくなる時が有るようですが、右脳と左脳〜芸術脳と言語脳〜を交錯させて向き合う制作活動は大きなエネルギーを総動員させているようで、真摯な作家魂を感じる機会となりました。
言葉を紡ぎながら作品やご自身の話をすることの滑らかさと、作品に対する説明責任を果たすような姿勢はとても心地良いもので、鑑賞者として対面する機会があれば、自然に応援したくなる作家さんとなることでしょう。
引き続き、今後にも期待していきたいと思います。
概要
展覧会名:3人展 「耳に迫る 蛙の声に 其の覚醒を 促されて」
会場:アートスペース銀座ワン
会期:2018 5/20(sun)~26(sat)
時間:13:00~20:00(last day~17:00迄)
Opening Party◎5/20(sun)17:00~
主催 アートスペース銀座ワン
企画 TEAM-TAN
キュレーター 赤木美奈