【回顧展】 ミラクル エッシャー展〜奇想版画家の謎を解く8つの鍵@上野の森美術館

ミラクル エッシャー展

だまし絵やトリックアートとして日本人にも有名な「エッシャー」。生誕120年を記念して開催する本展では、世界最大級のエッシャーコレクションを誇るイスラエル博物館から選りすぐりの約150点を日本初公開する大規模展です。

実際にありそうで、現実的にはない風景である《滝》、ぐるぐると歩いているかのようでつながっていない《相対性》など、教科書で一度は見たことのあるエッシャーの不思議な世界は唯一無二の独特な世界観といっても過言ではないでしょう。今なお、世界中の人々を魅了する版画家エッシャーは、2018年に生誕120周年を迎えます。この記念すべき年に、日本で大規模な回顧展を行うことが決定しました。今回の展覧会は、イスラエル博物館が所蔵する貴重なコレクションであり、作品はすべて日本初公開となります。

本展は、代表的なだまし絵の作品に加え、初期に制作された作品、さらにその版画制作に使用された板や直筆のドローイングが加わった約150点で構成されます。

会場は上野駅すぐ「上野の森美術館」です。

 

奇想の版画家・エッシャー

エッシャーが版画を中心に作品を制作していたことに意識が及ぶ方はあまり多くないのかも知れません。今回の展示は実際の木版も展示されていますが、さまざまな版画技法に取り組み、それらの技法を高度に発展させ、時に複数の技法を統合させながら制作していった一流の「版画家」です。

本展覧会では思う存分版画作品を間近で見ることが出来ます。エッシャー作品を見る楽しさと同時に、様々なタイプの版画作品に触れることの魅力もあるでしょう。

「描く手」〜図録より

8つの構成

展示は8つのゾーンに分かれています。作品のキャプションに制作した当時の年齢が記載されていたのが良かったです。

1.エッシャーと『科学』

エッシャーの版画では、特定のモティーフが反復しながら循環したり、ときにタイル状に埋め尽されるなど、幾何学的な独自の表現が用いられています。エッシャーはこれらの表現を生み出すために、同時代の「科学」から着想を受け、独自の数学的な理論を発展させました。
この章では、エッシャー版画に現れるさまざまな幾何学的表現を紹介します。

2.エッシャーと『聖書』

この章では、若い頃エッシャーが描いたキリスト教主題の版画を取り上げます。旧約聖書創世記を扱った連作には、19世紀後半から20世紀初頭にヨーロッパで流行したアール・デコ様式からの影響を見ることができます。

3.エッシャーと『風景』

エッシャー独特の、写実的かつ不可思議な印象を与えるイメージの源泉となったのは、彼の風景体験でした。1920年代からイタリア、スペイン旅行、特にアルハンブラ宮殿での幾何学な装飾模様との出会いは、後のパターン化されたモティーフ表現の原点となりました。そして地中海を描いたピクチャレスクな風景版画は、後に登場する視覚的な実験を先取りしたものとなっています。

4.エッシャーと『人物』

エッシャー版画に登場する人物像は、しばしば反復されるパターンのモティーフの一つとして画面に登場しますが、初期のエッシャーは、単身の人物表現にも取り組んでいます。この章で紹介する人物像の多くは、家族や近しい人々を扱っていますが、同時に自分自身の姿もさまざまな方法でモティーフとしていました。

5.エッシャーと『広告』

エッシャーの造形は商業デザインにも登場します。この章では、商用として利用されたイメージとともに、エッシャーらしさが凝縮された小さなグリーティングカードもご紹介します。

6.エッシャーと『技法』

自らを「芸術家」ではなく「版画家」と考えていたエッシャーは、木版、木口木版、リトグラフ、そしてメゾティントなどさまざまな版画技法に取り組み、それらの技法を高度に発展させ、時に複数の技法を統合させながら、不可思議な世界を繊細な彫りと印刷で実現し、不可思議な版画空間を作り出しました。この章では、多種多様な作例、マテリアルとともにエッシャーの版画技法を紹介します。

7.エッシャーと『反射』(鏡面イメージ)

エッシャーの作り出す不可思議な世界の特徴の一つが、「鏡面」のイメージです。鏡像を用いた絵画は、ヨーロッパでは近代以前から数多く描かれました。エッシャーもまた、現実世界にあるモティーフ/人物像と、仮想世界としての鏡像の共存するイメージを描くことに夢中になっていたのです。

8.エッシャーと『錯視』

エッシャー芸術を代表する要素が、実現不可能な建築表現や、永遠に変化し続けるパターンを描いたイメージなどの「ありえない世界」です。この独創的な表現は、当時の数学者が発表した不可能な図形に着想を得たものもあり、正則分割を用いた循環する表現とともに、エッシャーが長年にわたり独自発展させた理論が形になったものです。

Epilogue.循環する世界

エッシャーが1939-40年に生み出した大作《メタモルフォーゼⅡ》。文字から始まり、様々な形態が変容しながら循環し続け、やがて最初の文字へと戻るこの表現は、エッシャー芸術の極点を示しています。

ミラクルデジタルフージョン

隣接しているコーナーで参加型コンテンツも展開されていました。

楽しい企画ですが、こちらの参加も行列必至です。時間に余裕を持って参加したいですね。

公式図録

展示されているエッシャー作品は大作「メタモルフォーゼⅡ」を除いて、版画作品のために大きなサイズの作品はありませんでした。混雑している美術館で遠目に作品を見るよりも、図録を買ってゆっくりと鑑賞するのがオススメです。

 

公式図録の記事は下記より参照下さい。

まとめ

エッシャー作品を目の前で鑑賞出来る貴重な展覧会でした。

作品の緻密な線や独特なモチーフには狂気を感じる面もありました。所々に展示されているドローイングの温かみに少し癒される場面もありました。

客層を見ると若い人も多く来場し、美術や芸術に触れ合う機会が少ない人も多く来場している印象です。次の時代に確実に継承されていて、異端の版画家エッシャーの功績は確かで大きいと感じました。

エッシャーがこの世に生きていたら蔵書票を作ってもらいたかった・・・、そう思いながら会場を後にしました。

概要

生誕120年 イスラエル博物館所蔵
「ミラクル エッシャー展〜奇想版画家の謎を解く8つの鍵」
The Miracle of M.C. Escher: Prints from The Israel Museum, Jerusalem
会場:上野の森美術館 本館1F 本館2F ギャラリー
2018年6月6日 (水) 〜 7月29日 (日) *会期中無休
開館時間:午前10時~午後5時 *最終入場閉館30分前まで
*毎週金曜日は午後8時閉館

当日券(前売券、または20名以上の団体割引)
一般 1,600(1,400)円
大学生・高校生 1,200(1,000)円
中学生・小学生  600(500)円
*価格はすべて税込です。

主催:イスラエル博物館、産経新聞社、フジテレビジョン、上野の森美術館
特別協賛:弁護士法人 東京ミネルヴァ法律事務所
協賛:野崎印刷紙業
協力:Blue Dragon Art Company、日本通運

お問い合わせ:03-5777-8600 全日8~22時(ハローダイヤル)
主催:イスラエル博物館、産経新聞社、フジテレビジョン、上野の森美術館

※大阪、福岡、愛媛にも巡回します。