Bice Lazzari「un espandersi ai margini dei labili confini selected works 1950 -1975」
イタリアのモダニズムを牽引した画家、ビーチェ・ラッツァーリ(1900–1981)の個展がkaufmann repetto(ミラノ)で開催されていました。

本展はビーチェ・ラッツァーリの1950〜1975年代表作を通じて、抽象とミニマリズムにおける彼女の作品に光を当てる企画です。

Bice Lazzari(ビーチェ・ラッツァリ、1900–1981)は、20世紀イタリアを代表する女性抽象画家の一人です。晩年に視力をほとんど失いながらも制作を続けたことで知られています。

ラッツァリの視力喪失は医学的には緑内障(glaucoma)によるものです。
緑内障は視神経が障害される病で、高齢期の彼女の視力低下の主因となりました。また、それ以前から絵画材料による中毒が視力に悪影響を及ぼしていました。実際、油彩絵具を薄める際に用いる溶剤が視力を徐々に蝕んでいることが判明し、1962年には油彩による制作を断念しています。当時の報道でも「油絵具による中毒 (intossicazione)」が原因で1959年に伝統的な油絵から離れたと伝えられており、ラッツァリは以後、テンペラやクレヨン、アクリル絵具など比較的安全な画材を用いる方向へと創作を転換しました。こうした画材の変更により、一時は視力の悪化を抑えつつ制作を続けることができたのです。

ラッツァリの視力が著しく低下し始めたのは1970年代に入ってからで、1970年代後半にほぼ失明状態に至ったそうです。本展の作品はそれまでの作品という形になります。









晩年にはフェミニズムの潮流とともに再評価が進み、視力を失いながらも創作を続けたその姿は、静謐かつ力強い芸術の精神を体現しているのではないでしょうか。
概要
ビーチェ・ラッツァーリ個展
「un espandersi ai margini dei labili confini selected works 1950 -1975」
会場:kaufmann repetto(ミラノ)
会期:2025年4月2日〜5月24日
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