ロッカクアヤコ「魔法の手」
ロッカクアヤコ(rokkakuayako)さんの個展「魔法の手(Magic Hand)」に伺いました。会場は千葉県立美術館です。
ロッカクアヤコさんはポルトガルを拠点として活動していますが、2020年2月に帰国してからのコロナ禍では、日本で制作活動してきました。
現代アートのフィールドでは高く評価されており、オークションなどのセカンダリーマーケットでは、高値で取引されているアーティストです。個展開催と同じ日に行われたSBIアートオークションでは、1作品約2,500万円で落札されるような状況です。
マーケットが盛り上がる中、千葉県立美術館という国内の公立美術館が個展という形で展覧会を開催することに至ったことは、現代アート界にとっては非常に大きな意味を持つ企画と言えるのではないでしょうか。入場料300円という安価な入場料設定を含め、現代アート作家の展覧会が気軽に楽しめる好機会です。
展示作品と見どころ
(1)幅7m×高さ5.5mの大作、新作の数々
本展では、未発表の作品を中心に2020年に制作された最新作が中心に展示されています。
平面・立体の作品は160点が集まり、特に目を引く大作《Magic Hand》は、2020年10月に入って千葉県立美術館で滞在制作されたものです。
(2)ロッカクアヤコの宇宙戦争
壁面にズラリと並んだ《宇宙戦争》シリーズは注目の作品でした。
下書きされたドローイングが特注のシェイプド・キャンバスに描かれ、モクモクと雲のような形、コロコロ丸みを帯びた形、とがった形、少女たちはさまざまな形の宇宙船に乗り、宇宙空間を浮遊します。作品約30点で構成されたシリーズ作品です。
(3)フラワーベース
さまざまな形で作られたタモ材の一輪挿しは、伝統工芸〈静岡挽物(ひきもの)〉ブランドSeeSeeによるもので、伝統的な技術を生かしながら、新鮮で現代的な発想が融合した作品です。大小さまざまな約60点が会場中央に集められました。
(4)木版画作品
アダチ版画研究所とのコラボレーションによる木版画作品も見どころの一つです。
アダチ版画研究所は、江戸時代の浮世絵の技術を継承しながら、草間彌生や加藤泉をはじめとする多くの現代アーティストとコラボし、「現代の浮世絵」を追求しています。展示方式は制作の過程を見せるわかりやすい見せ方でした。何度も刷り重ねた工程により、奥行きを感じる発色が印象的でした。
オリジナルグッズ
初日の開館前にはたくさんの行列が出来た本展。
1000部限定ポスターをはじめとするオリジナルグッズに人気が集まりました。
まとめ
大きな展示室を2室使って開催された「魔法の手」展。
大きな美術館空間を存分に活用し、木版画や変形キャンバス、フラワーベース、巨大な作品・・・など、新しい取り組みを織り交ぜながら見事な空間に仕上がっていました。
初日の開館タイミングでインタビューに応じて頂いたロッカクアヤコさんのメッセージは、今後のさらなる飛躍を感じるものでした。
ロッカクアヤコ:
「オランダの美術館では10年間の作品展という形式だったので、自分の中ではそことは違う形にしたかったです。自分が今やってみたいことをやらせてもらう機会を頂き、新しいことをたくさん詰め込んでしまいました(笑)。今、出来ることをやったつもりですが、ここを出発点に今後も色んなことが出来るかなと思いました」
マーケットの動きに惑わされない、強くて頼もしい制作姿勢を感じるメッセージでした。
概要
ロッカクアヤコ
魔法の手 ロッカクアヤコ作品展
会場:千葉県立美術館
会期:2020年10月31日〜2021年1月11日
時間:9:00〜16:30
休館日:月(祝日の場合は翌日)
料金:一般 300円 / 大学生・高校生 150円
主催:千葉県立美術館
特別協力:GALLERY TARGET
協力:ペリエ千葉