exhibition
MahiroKobayashi
【個展】回顧から展望へ〜岡﨑乾二郎「A Decade or So Ago・As Tears Go By」Takuro Someya Contemporary Art
岡﨑乾二郎「A Decade or So Ago・As Tears Go By」
岡﨑乾二郎さんの個展「A Decade or So Ago・As Tears Go By」にお伺いしました。
本展は、2010年までに制作された作品の中から岡﨑乾二郎さんが特別な意味を感じ、大切に保存してきた作品群が10数年ぶりに展示される貴重な機会です。
10年という区切りを付けることによって、これからの10年への眼差しを誘うような展覧会です。
Takuro Someya Contemporary Art(天王洲)
展示風景
本展はラージペインティング、彫刻、タイル、ゼロ・サムネイルの各シリーズ作品が展示されていますが、これまで「作家蔵」とされてきた作品が披露されています。
「良い作品は作家の手元に置く」という岡﨑さんのスタイルからしてみれば、コレクターにとってはコレクションの好機となる展示でもあるでしょう。
岡﨑乾二郎《聖ベルナルドゥスは最小限の睡眠時間しかとらなかった。眠っている時間ほど無駄はない。眠りはひとつの死である(けれど神からすれば死人こそ眠っているだけかも知れない)。大きな鼾。だらしのない格好。ただ肉が眠っているだけである。だから食欲や悦びから食べることもなかった。彼は水ほどおいしいものはない、水を飲むと喉がさわやかになると言った。森や野に出て瞑想する。森のミズナラの木。ブナの木が彼の先生であった(ブナの葉は、また彼の唯一の食糧だった)。(黄金伝説より「聖ベルナルドゥス」)》 2009, アクリル、カンヴァス, 195×288×7cm
ラージペインティングシリーズ作品、通常はボードにキャンバスが貼られていますが、本作品は木枠にキャンバスという支持体です。今から10年以上前の作品とは思えない、綺麗な絵具の色が印象的です。参考までに岡﨑さんが使う絵具は海外製のものを独自に調合して使用しているのだそうです。
※Detail
※Detail
上記《聖ベルナルドゥスは〜》の組作品〜《湖を巡っても湖がどこにあるのか気にも留めない、雨に濡れず雨の中で手紙を書き終える(背中がちょっと赤い)子犬。(黄金伝説より「聖ベルナルドゥス」) 》2009, アクリル、カンヴァス, 91×58.5×5.5cm
岡﨑乾二郎《どれもこれもたったひとつのざいりょうでできている/ゆきをとかしこおったじょうきのきずなをふんさいし》2014年 Hand Painted Ceramic Tile
展示風景
岡﨑乾二郎《ハンバウとそむきにぐるものを ホクワクととらへえたり》2000-2001, ブロンズ, 26.5×77×51.5cm
左:岡﨑乾二郎《同じ名をもつ堅さと重量(頭陀袋)》2005, アクリル、カンヴァス,
右:岡﨑乾二郎《軟膏に気づかず(万一に備え)》2005, アクリル、カンヴァス
岡﨑乾二郎《運も命をもつなら天の指図か「はるすぎてな つくるらし」。決められた季節の向うへ行く には向 うに生まれるほかない。風が吹きこ み物いわぬスカーフ。鳩尾あたりマントの綻 び。燦々と光が 差し込む。》2020年 アクリル、カンヴァス
ゼロ・サムネイルシリーズ
ご存じゼロ・サムネイルシリーズの作品も何点か出品されていました。
展示風景
《先見の明(冷えると固まる)》 2007年 アクリル、カンヴァス 15×18×2.9cm ※作家蔵
《木陰ができるまで畑で待つ(樹木の育ちは遅い)》 2010年 アクリル、カンヴァス 14.5×20.3×3.5cm
《来世の予定(壁のむこうの目覚まし) 》 2007年 アクリル、カンヴァス 15×18×2.9cm
《ソノオリの蓬(ムラタチの糸杉) 》 2009年 アクリル、カンヴァス 14×20.5×2.9cm
《メロピスか、その母(フクロウの影)》 2010年 アクリル、カンヴァス 24×16.6×3.5cm
《根も葉もない(涼しいめはなだち)》 2007年 アクリル、カンヴァス 24×16×2.9cm
展示風景 ※展示替えをして頂きました。
《 野外にて彼に出くわす(荷車の上の法的秩序) 》2007年 アクリル、カンヴァス 16×23×3.5cm
《示準化石(整頓された運動の痕跡) 》 2010年 アクリル、カンヴァス 18.5×24.1×3.4cm
《知り合いなのに言葉を知らない(裏庭にねている犬と軒下のつばめ)》 2007年 アクリル、カンヴァス 17×23×2.9cm
《知り合いなのに言葉を知らない(裏庭にねている犬と軒下のつばめ)》
《一つの太陽は無数の太陽よりなぜ明るい?(ケプラーの問い)》 2010年 アクリル、カンヴァス 17.5×24×3.1cm
現在、私たちが置かれている困難な状況の意味を改めて考え直す、という趣旨で開催された個展でした。
10数年前の岡﨑さんの作品や最新作を通して、回顧から展望へ思考を巡らせるような企画でしたが、過去作でも新作でも、普遍的である存在について思考が行き交う鑑賞体験がありました。
概要
岡﨑乾二郎
A Decade or So Ago・As Tears Go By
会場:Takuro Someya Contemporary Art
会期:2020年8月4日(火)~8月29日(土)※夏季休廊:8月9日〜17日
休廊:日曜・月曜・祝日
時間:12:00 – 18:00 ※短縮営業
備考:事前予約制 ※前日18:00までに連絡
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