塔尾栞莉「fragments of memory」
尾道を制作の拠点とする美術作家、塔尾栞莉(Shiori Tono)さんの個展「fragments of memory」にお伺いしました。会場は表参道MASAHIRO MAKI GALLERYです。
塔尾栞莉さんの制作スタイルは、モチーフの写真を用意するところからはじまります。
拡大した写真の上から、交互にマスキングテープを貼ります。その後、マスキングテープを剥がしますが、それによって写真の
態を受け入れ、別に用意したキャンバスにそのまま移し描いていきます。
それらはブロックごとに分解して行われ、それぞれのブロックごと、油絵の具で丁寧に描かれます。隣合うブロックでも、絵具の色合いが微妙に変化しています。
モチーフとなる写真は、日常の風景や塔尾さん自身に関連したものです。塔尾栞莉さんがこういった制作手法をとるのは、私たちがそれぞれ持つ、記憶への眼差しです。
劣化し、欠損することを免れない「記憶」のもつ特性、システムに興味を持ち、絵画に落とし込んでいます。図像が剥がれた特徴的な絵肌は、デジタル画像の劣化によっておこるブロックノイズをも思い起こさせます。
曖昧で儚い私たちの「記憶」を客観的にとらえ、欠落することも、連続しないことも冷静に見つめながら作品化している塔尾栞莉さん。コレクターからの支持も厚く作品の販売は好調で、今後が期待される若手アーティストです。
概要
塔尾栞莉
fragments of memory
会場:MASAHIRO MAKI GALLERY・3F
会期:2020年1月24日-2020年2月15日
時間:11:30 〜19:00