川島優さんの個展「動力炉」にお伺いしました。会場はFUMA Contemporary Tokyoです。
川島優さんは2018年に愛知県立芸術大学の博士号の学位を修めた作家さん。その学位申請論文のタイトルは『内的感情の弁証法的表徴化としての絵画表現 —「不安」のレフォルメ—』というもの。つまり、作家川島さん自身の不安を「レフォルメ(Ré-former)」した絵画作品です。
3連作の《Re-actor》 は、《Radiant》※本展未出品と並んで論文に提出した作品。運慶の《大日如来座像》、黒田清輝の《知・感・情》から着想した作品とのことです。3作の高低差を生む展示方法が祭壇画のようで厳かな空気を演出していることに成功しているようです。
高いギャラリーの天井にそびえ立つような《Re-actor》は、荘厳で気高い女性3体が、圧倒されるようなオーラを放っているようでした。何度も見つめ、作品を感じ、時を過ごしました。
その他の作品は2018年制作の最新作です。
本個展の直前に秋田近代美術館で見た鴻池朋子さんの展覧会で、鴻池朋子さんご自身から伺った話が耳にこびりついておりました。
「作品を発表するというものは、外界との接触や摩擦によって出てくるものなんです。外界との色んな接触によって、感情が自分の中で揺れ動き、表現として作品になるのです。」
一方の川島優さんは次のように表現しています。
「現代社会を生きていくためには、自己の存在や現実を見つめ直すことが必要であり、それが筆者にとっては絵を描く行為そのものになっている。現代社会において自己の内面世界を視覚的に表現することは、目の前の事象や困難に惑わされることなく、自己の存在を模索するための手段であると考えている。」〜学位論文の要旨 より
作家としての対照的なアプローチに触れることが出来ましたが、筆者にとって興味深いのはどちらが正しいと言うことでは無く、表現者としての視座のあり方です。
私たち鑑賞者は、作家の姿勢や表現に対する考え方に向き合い、感情の変化や心の揺れ動きなど、芸術を様々な角度で味わい楽しむ事が出来るのです。
川島優さんの不安な感情を表現した作品に触れ、これからの画業を想像してしまいました。
不安のその先にある作品が、どのような変化を遂げているのでしょうか・・・。以前から拝見している川島優さんの今後をとても楽しみにしております。
概要
川島優
「動力炉」
会場:FUMA CONTEMPORARY TOKYO/BUNKYO ART
会期:11/20(火)〜12/1(土)
会期中、日・月・祝休廊/11:00-18:30