大岩オスカールさんの個展に伺ってきました。大岩さんはブラジル・サンパウロ出身でブラジル移民二世の作家さん。2009年に北京での作品発表以来、9年ぶりとなる個展なんだそうです。
ギャラリーを入ると大きなキャンバスに描かれた作品がどんと構えていますが、作品のモチーフやトーンが統一されていて一つのハコとしてまとまっているような感覚があります。
鳥瞰図というか、俯瞰的な構図が用いられていて、現代人が見慣れたGoogleMapを連想しつつも、大岩さんらしい温かみのある色彩と優しい筆のタッチが前に出てきていてどこか見た懐かしい風景のような親しみを感じます。
日本の風景も描かれているようですが、大岩さんがロサンゼルス郊外を描いた作品もあるようです(風景にプールが描かれていますね)。
本展のタイトルは「光の満ちる銀座」ということですが、銀座をモチーフに描かれた作品は無く、銀座にあるギャラリーでの開催から引用されていると思われますが、「光」については各作品共通して作品の中に含まれているようです。
田園風景と思われる作品にも光のタマのようなものが描かれていて、ファンタジーのような世界観が作られています。児童向け絵本に出てくるような雰囲気を持ちつつも、アート作品として成立している加減が独特です。
災害を連想させる作品も並んでいましたが、際どい表現を一部に留めるだけで伝える技術も素晴らしいと思いました。
作品の中で最も気になった作品が《Chalana 3》です。。
こちらは海上交通ルールに則り交差する2艘の船を描いた作品です。
人物は描かれていないけれど、ブラジルご出身というお立場での歴史的な出来事や波間を覆うような植物の緑など、「生」を問うような作品として伝わり、感銘を受けました。この作品でも小さな黄色い光が平和の象徴的なアイコンに目に映り、あたたかい気持ちになりました。
展示作品の中で一つだけ落ち着いたトーンの作品がありました《Moon Reflex》。
海に浮かぶタンカーの航路を月明かりが照らしているように見えます。航路の先よりも辿ってきたこれまでの航海を確かに切り取っているようで、一筋の線と満月の位置関係とバランスが絶妙でなんとも言えぬ安心感を与えてくれます。
他作品も、見ているうちに引き込まれるようで強い作品です。
小作品は少なく、大作を見事に描ききった展覧会となりました。
大作だけに、価格のほうもかなりの高額でしたが、画集などでは味わえない圧倒的な個展だったように思います。
温かな大岩オスカールさんの作品に触れ、豊かな感情が戻ってくるようでありがたく会場をあとにしました。
概要
大岩オスカール「光の満ちる銀座」
会場:東京画廊+BTAP
期間:2018.7.21 (sat) – 9.22 (sat)
●オープニング・レセプション
2018年7月21日(土)|16:00-18:00