【個展】境界線が作る半分と全体について〜秋吉風人「We meet only to part」@TroNasu

秋吉風人「We meet only to part」

TARO NASUで開催されていた秋吉風人さんの個展「We meet only to part」にお伺いしました。

「We meet only to part : 逢うは別れ」

二枚のキャンヴァスを継ぎあわせて絵を描く。その二枚継ぎの絵が複数点完成したところで、それぞれをふたたび一枚ずつのキャンヴァスに分解し、いわば二分の一の絵にする。その二分の一の絵を、別の二分の一の絵と継ぎあわせて、新しく二枚継ぎのキャンヴァスに仕立て、完成作品とする。これが秋吉風人の新シリーズの制作過程である。秋吉が絵画や写真、ときには立体作品など様々なメディアで試みてきた絵画の可能性の模索は、今回、自作への自己言及ともいえる方法論によって獲得した新たな視野のもと、さらなる豊かさをたたえて展開される。

ルールの設定、偶発性の導入、多様な技法の混合、制作過程の可視化、物質性の強調。
遊戯性の表現とも解釈できるこれらの手法を用いて、秋吉は、絵画を絵画たらしめるものとは何かについて考察してきた。それは絵画についての絵画であるという点において、極めて純粋な、美術のための美術を模索する行為であり、美術以外の文脈をあえて排除するその徹底性は、それぞれの作品シリーズのタイトルに顕著な独特のユーモアとともに、彼の作品に特徴的な独特の個性となってきた。

しかし今回の新作においては社会における人間存在のメタファーともとれる要素が含まれており、作家本人もそれを否定しない。いったん構築されたルールのなかでの偶然と必然のバランス、即興性と計画性、邂逅と別離、規則のなかでの自由と自由のなかでの規則、といった要素は、社会的存在として一定のルールを許容しながらもなお、個人としての自由を希求し、予期せぬものとの出会いと受容を繰り返していく人間の姿と重ねることができる。社会のなかで人間が享受する自由ははたして本当の自由なのか。個人と個人、個人と社会の関係性をうつしだすかのような本シリーズは、7年間を過ごしたベルリンの多国籍社会での秋吉の個人的な体験をも暗示して、作家が創作のあらたなステージへと踏み出していることを感じさせるのである。

展示風景より

今回、秋吉風人さんが描いている作品は特徴的です。以下のような進め方で描かれた作品です。

  1. 2枚のキャンバスを継ぎあわせて1枚の絵を描く。
  2. その2枚継ぎの絵が複数点完成したところで、それぞれを1枚ずつのキャンヴァスに分解し、2分の1の絵にする。
  3. 2分の1になった「半分絵画作品」を、別の「半分絵画作品」と継ぎ合わせて、新しい2枚継ぎの「完成作品」が出来上がる。

半分に分かれば慣れになった作品を見つける楽しみや、組み合わせ方の妙を味わったり、半分違う作品をどの様に消化できるのか自分の中に問うような鑑賞方法があって面白い試みです。

私たち人間社会でも他者によって個人に色々な変化や影響を受ける場面があると思います。そういった関わり方やあり方を問うているようなところも有り、面白いアプローチだと思いました。

概要

秋吉風人
「We meet only to part」
会場」TARO NASU
会期:2018.8.31-9.29
オープニングレセプション:8/31(金) 18:00〜20:00