【個展】驚嘆の最新現代アート〜名和晃平「Biomatrix」@SCAI THE BATHHOUSE

海外でのオークション会場で1週間ほど前に起こったバンクシーの出来事を「現代アートの転換期」と位置付ける方がいるそうですが、目の前で起こっている「かつて見たことのない作品への衝撃」には、リアリティを持って「アートの見方が変わる体験」を感じました。
今回レポートする展覧会は、圧倒的に「今期No1!」と断言できる、未来を切り開くような作品と出会うことが出来ました。

名和晃平

彫刻家、名和晃平さんの個展会場は、銭湯を改修して作られたギャラリー「SCAI THE BATHHOUSE(スカイザバスハウス)」です。
東京国立博物館から東京藝大方面へ進み、藝大を越えた谷中エリアにあります(最寄り駅は日暮里か根津駅)。

古き銭湯の風情を残す建物〜SCAI THE BATHHOUSE 外観

名和晃平さんは世界を「CELL(細胞・粒)」という概念で捉え、その単位の連続として造形を作っていると言うことです。人間や物質の世界を構成する「CELL」だからこそ、私たちの感覚や身体との親和性が高くなり、接続されやすいと言うことで展開を進めているそうです。
PictureとCellを組み合わせた「PixCell(ピクセル)」というシリーズは代表作として広く知られています。

DOUBLE DEER#7 2013 COURTESY: SCAI THE BATHHOUSE 〜PixCellシリーズより

「Biomatrix」

今回お伺いしたのは個展開催数日後の開催直後タイミング。それでも筆者の周りはザワザワとこの展覧会の作品を巡る感想が飛び交い、ワクワクして伺いました。

銭湯を改修した名残を残しています。土足で入場出来ます。

入場すると「VELVET」と呼ばれる素材感ある作品シリーズと「Particle」という人型の彫刻が2点ずつ展示されていました。

Velvet#1(Magma) 2018年

Particle-AJMMNN#1 2018年

Velvet#2(Moss)2018年

Particle-AJMMNN#2 2018年 ※ダミアン・ジャレ氏とコラボ

作品「BIOMATRIX」

今回の個展タイトル「Biomatrix」にも繋がっている作品「BIOMATRIX」は会場の奥の部屋に展示されていました。

「BIOMATRIX」2018年

「Biomatrix」とは、生命の枠組みと理解したら良いのでしょうか。
作品は、「LIQUIDシリーズ」にカテゴリされるものです。シリコーンオイルをベースに作られた高粘度の液体がポンプから送られる空気に押し出されます。それによって作られる気泡が連続、不連続的に破裂する作品です。

赤オレンジ色のような素材の色は、破裂する気泡を重ねてみるとマグマのように見え、生命が作られる根源的なエネルギーを感じます。

その一方で、見つめ続けるとマトリックスで分断されている様子から、名和さんのベースに流れる「CELL(細胞)」を強くイメージできますし、それらがうごめいている様子は作品に生命が宿っている用にも感じられます。

画像では作品の本質を表現出来ませんので、動画をご覧下さい。特に印象的なのが「音」です。
プログラミングを行いコントロールしている装置は、気泡の大きさと比例して大きくなっていく音もエモーショナルです。

さらに銭湯の高さにある天井を見上げると、作品から反射した光が2次創作を行っているようで、神秘的です。

天井にも作品の反射光が写っていました。

まとめ

生成されたシリコーンオイルに空気を送り込んで行くというのが基本構造。ポンプから送られる空気の出口は「333」。つまり333のマトリックスで構成されています。
それぞれのCELLはカタチを残しながらうごめき、営みを続け、周りとの均衡を保ちながら進んでいるようです。それらは、私たちの根源的な生命を表現しているようで、鑑賞者に問いかけるようです。

‘リアルとバーチャル、ミクロとマクロ、自然と人工などのあらゆる対立が皮膜の上で消え去る’というステートメントの表現も含めて、

名和晃平さんはクリエイティブ・プラットフォームなる「SANDWICH」と言う組織を作り、組織化された工房で製作活動を続けています。開発に関する研究を重ねた結果が結実しているのでしょうか、いまだかつて見たことのない、感じたことのない作品との出会いの場となりました。

本展の鑑賞後には間違いなく私たちの感性がアップデートされる展示です。

概要

名和晃平個展「Biomatrix」
期間:2018年10月10日(水)~12月8日(土)
会場:東京都 谷中 SCAI THE BATHHOUSE
時間:12:00~18:00
休廊日:日、月曜、祝日